企業事例 ヤマト運輸株式会社

左記はヤマトホールディングス株式会社の登録商標です。

 会社概要

創業   1919年

従業員数 17万7430名(フルタイマー8万8917名、パートタイマー8万8513名)(2024年3月期実績)

本社   東京都中央区銀座2-16-10(本店所在地)

事業内容 エクスプレス事業(宅急便を中心とした国内輸送サービスの提供)。コントラクト・ロジスティクス事業(国内の顧客企業の事業成長を支援するロジスティクスソリューションの提供)。グローバル事業(日本および海外現地法人によるフォワーディング・国際エクスプレス等のソリューションの提供)。モビリティ事業(車両整備事業を基盤に環境投資やノウハウを活用した商用EVの導入・運用支援等、新たなビジネスモデルの創出)



職務定義による評価制度が資格取得の動機づけに
―求めるポジションに必要な資格としてビジキャリを推奨―

 グループ全体で宅急便営業所は約3000拠点、年間宅配便取扱量は約23,3億個。今や宅配便サービス国内シェアNo.1を誇るヤマト運輸。2021年には、グループ主要8社を1社にまとめ、「Oneヤマト体制」に。それ以降、法人営業の領域においては、宅配便事業や、顧客の物流管理・運営だけでなく、ロジスティクスの戦略・企画まで関与する「LLP(リードロジスティクスパートナー)」を整える体制となる。人材育成にも注力し、国内外の法人営業人材を対象に、経験やスキルに合わせて受講できるプログラムを設計。そこにビジネス・キャリア検定試験も組み込んでいただいており、多数の社員の方が取得している。合格率が高い理由も含め、ビジネス・キャリア検定試験の活用の仕方について人材開発部HRBP課(営業・グローバル人材担当)担当課長の小坂隆弘氏に話を聞いた。

網羅的かつ包含的な資格として魅力を感じたビジキャリ

御社の概要と事業内容について教えてください。
小坂 当社は1919年に創業し、日本で初めての路線事業として定期積み合わせ輸送を開始しました。以後、宅急便をはじめ、それまでになかった多くのサービスを創出し続けてきました。ただ、時代の変化とともに物流も今、CtoCより、BtoC、BtoBが主流となってきています。実際、当社の約9割は法人発の物流です。
 こうした業界の変化を受け、当社は2019年に創業100周年を迎えたタイミングで、中長期の経営グランドデザインを策定し、次の3つの事業構造改革を掲げました。①宅急便のデジタルトランスフォーメーション(宅急便を新たにブラッシュアップしていく取り組み)②ECのエコシステムの確立③法人向けの物流事業の強化、です。特に③の法人向けの物流事業においては、国内だけでなくグローバルに広がる顧客のサプライチェーンの「End to End」に対する総合的な価値提供にも取り組んでいます。当社として今、成長領域と位置付けて特に力を入れているところです。

ビジネス・キャリア検定(以下、ビジキャリ)導入の背景を教えていただけますでしょうか。
小坂 2021年、当社は大幅な組織改革を開始しました。その際、最も重視したのが先ほどの③でお伝えした、国内外の法人向けの物流事業をしっかり担える人材の育成です。  この事業における営業の役割は、消費者向けの物流に特化したサービスの提供でもなければ、単なる宅急便の見積もりでもありません。サプライチェーンやロジスティクスの全体像をしっかりつかんだ上で、国内外に広がる顧客企業がそれぞれに抱える経営課題を受けとめ、解決・提案することです。
 2021年以降、そうした国内外の法人向け物流の提案営業ができる人材採用にも力を入れてきました。ただ、それだけは不十分で、社員一人ひとりのスキルや経験に頼るのではなく、社内にロジスティクスなどの基本スキルを習得できる環境を整備することが重要だという考えに至りました。そのため、当社に今、最も必要な人材に持っていてほしい知識・スキルを習得する手段としてビジキャリを活用させていただいた次第です。
導入するにあたって一番の決め手になったことは何だったのでしょうか
小坂 全般的・包含的な資格としてはビジキャリが一番だと思ったからです。例えば、航空貨物を取り扱う上でのレギュレーションを理解する際はIATAディプロマ、通関業務であれば通関士、貿易関連であれば、貿易実務といった具合にそれぞれのキャリアに沿った資格支援はこれまでもしてきました。そうした中、ビジキャリは一つの分野に関して網羅的に習得できる。そこが魅力でした。

職務定義書に習得すべき資格として明文化したことが推奨に

社内への周知方法、奨励方法について教えてください。
小坂 2023年4月、会社が求める人物像や人材に対する会社としての姿勢を明確化するため、「ヤマトグループ人材マネジメント方針」を制定しました。社員の成長こそが会社の成長の原動力という考えのもと、この方針を会社と社員がともに成長し続けるための羅針盤と位置づけています。  そして、会社の成長に必要な社員の役割と責任を明確化すべく、職務定義書を制定しました。職務定義書では、各ポジションに求める具体的な仕事内容、責任範囲、知識、スキルなどを明記しています。ビジキャリも職務定義書に「この部署で働くには、ビジキャリ3級ロジスティクス管理が必要」といった具合に明記されています。そのことがおのずと社内への周知になっており、奨励になっていると思います。

 特に国内外の法人営業に携わる社員には、ビジキャリの中でも「2級ロジスティクス管理」「3級ロジスティクス管理」を推奨しています。ただ、同じ法人営業でも役職などによって職務定義書も異なってくるため、「2級ロジスティクス管理」一つとっても役職ごとに取得をMUST(必須)とWANT(できれば持っていてほしい)に条件を分けています。例えば、法人営業の中でも部長や地域担当課長であれば、2級ロジスティクス管理と2級ロジスティクスオペレーションがMUST条件になりますが、課長・担当課長、係長・一般社員であればどちらもWANTが条件になるといった具合に、です。

 職務定義書の規定化と合わせて社内公募制度をスタートさせたことも社員への推奨に大きくつながっています。そもそも職務定義書や社内公募制度という仕組みを導入しようとした背景に、人材マネジメント方針を大きく変えたいという当社の思いがあります。これまでの当社では、どちらかといえば、リテールに近いビジネスを推進してきました。要はお客様が求めていることだと思えば何でもやりなさいというカルチャーだったわけです。ただ、そのやり方では専門性の担保は難しい。それゆえ、職務定義書で必要なポジションを明確に定義したわけです。ポジションに対してしっかりジョブ・アサインメントしていく。今までの人材マネジメントの在り方を変え、適材適所をより徹底させていこうということで社内では「適所適材」と言っています。
 この「適所適材」を効果的に推進していくためには、一人ひとりの社員、特に若手社員に自律キャリアを促進していくことが必要です。そこで、社内公募制度を活用して自分のキャリアは自分で作っていくものだという価値観、考え方を今、広めているところです。

 例えば、あるポジションが今、公募されているとします。そのポジションへ応募したいと思った時に、職務定義書を見れば、どんなスキルが必要なのか、また自分にはどのスキルが足らないのかを確認できる。そこにビジキャリの「3級ロジスティクス管理」がMUSTと書いてあれば、その資格取得にチャレンジしようといった動機づけにつながる。さらに自己研鑽して自己学習を進めようとする。職務定義書と社内公募制度によってそんなカルチャーが醸成されていくのではないかと期待しているところです。
御社は平均合格率が比較的高い実績となっています。会社として社員の方々に勉強してもらうための風土・環境づくりなど、何か取り組みをされていらっしゃいますか。
小坂 特に試験対策講座などは行っていませんし、いつまでに取得しないとペナルティがあるといった直接的な動機づけはしていません。ただ、先ほどお伝えしたように、2021年に「Oneヤマト体制」になったことで様々なキャリア形成が可能になった分、自分のポジショニングをはっきりさせたくなったり、自分のアイデンティティを確立したくなっている。つまり、自身のキャリアを生きたいという意志がモチベーションになり、ビジキャリに限らず、自分に必要な資格を取得しておこうという動機づけになっているのではないかと思います。

 合格率を褒めていただけるのは大変ありがたいのですが、実践で優秀な社員の試験結果が意外に伴っていないこともありました。そう考えると今後試験対策なども必要なのかなと思いますが、ただ、やはり試験に合格する上で一番大事なのは本人の動機づけだというのが実感です

資格取得で自分の位置づけを認識した社員からのキャリア相談が急増

ビジキャリ導入後の効果はいかがですか?
小坂 自律キャリアを自ら開発していくんだという意識が高まっています。資格を取得した社員の多くは、自分のバックグランドに自信を持つようになり、自身の位置づけを再認識しているようです。社内公募制度のお話をしましたが、自発的に資格取得を目指すことで、自分のキャリアを自分でどう切り拓いていこうかと考える社員が増えたと感じています。実際、私のところにキャリア相談に訪れる社員も増えています。

 ビジキャリを当社で受けているのは大半が法人営業なので、営業の例で言うと、これまでは営業成績が上がったとか、お客様にこんな提案をしたら感謝されたといった具合に、自分のパフォーマンスを自己評価していた感じでした。しかし、ビジキャリであれば当社における法人営業のスキルを本当に持っているかどうかを定量的に示されることになります。実際にロジスティクスの専門家であると明確に自覚できる。まさにビジキャリが自己のキャリア形成において重要な機会になっていると感じています。

グローバル化を推進する上でビジキャリのロジスティクス分野は必須

今後はビジキャリをどのように活用されていきたいとお考えでしょうか。
小坂 物流に携わる者として普遍的な知識を得ることができる検定としてビジキャリは非常に適切。当社の職務定義書にも業務に必要な資格として明記しており、当面は変更することはないと思います。
 法人営業を中心にお話させていただいていますが、法人に対する営業を突き進めていくと、国内展開が中心のお客様であっても、グローバル市場における物流提案を求められることが多くなっています。
 そうでなくても、ロジスティクスの専門性は今後、海外進出を推進していく上で非常に重要になってきます。ところが国内だと、サプライチェーン、ロジスティクスを専門に学べる大学・学部というのは非常に限られています。片や、海外の主要大学にはロジスティクスを専門に学べる学部が設置されています。海外の人たちからすれば、日本で活躍するロジスティクスの専門家であるはずのリーダーにアカデミックなバックグラウンドがなく、資格もないというのは不安ですし、信頼してもらえない状況になりかねません。  そう考えるとグローバルに戦える企業としてさらに事業成長していくためにも、ビジキャリの「ロジスティクス管理・オペレーション」を取得した社員をもっと増やしていかなければと考えています。

 また、今後は、ロジスティクス分野に限らず、他の様々な部門がその専門性をどこまで高められているかを把握するツールとしてビジキャリを幅広く活用していけたらと思っています。1級、2級、3級とそれぞれの段階に必要な知識とスキルを身につけられる形になっている検定なので、昇進を軸にキャリアアップを考えている社員にとってはとても入りやすいと思います。私も人事に携わる者として、人事領域のビジキャリに挑戦したいと思います。


 ビジネス・キャリア合格者に聞きました
ビジキャリを受けて合格した社員、F・Aさんに話をうかがいました。
<資格取得で仕事にも自分にも自信が持てるようになった!>
 現在は人材開発部に所属していますが、以前は国内のアカウント営業チームに所属し、顧客別の案件進捗や獲得状況の管理をしていました。アカウント営業はお客様のサプライチェーンに対し、ソリューション提案を最初から最後まで担当します。それゆえ、弊社の主力商品である宅配便の他、倉庫での作業からフォワーディングまで多岐に渡る知識が必要です。すべてをジョブローテーションで経験できればいいのですが、現実には難しく、物流企業に勤めるのだから基礎知識をしっかり習得したいと思い、ビジキャリの3級ロジスティクス管理をその時受けました。
当時、先に合格していた先輩から「過去問を何度か解いておくといいよ」とアドバイスをもらい、実践しました。また、普段の業務の中で、テキストで知った専門用語が出てくると点と点がつながるような感覚で理解でき、学習を続けるモチベーションになりました。実際に仕事しながら学んだことが合格につながったのではないかと思います。無事合格できたことは大きな自信になりました。

 所属が営業から人事へ異動となった際、人事の知識を早く修得したくビジキャリの3級人事・人材開発を受験。ロジスティクス管理を勉強した時と同様、やはり専門用語や仕事の仕組みが業務の中でだんだん分かるようになるプロセスが面白くて受験のモチベーションになりましたし、その後の業務の幅も広げることができていると感じています。

 現在は人事として、社員にビジキャリを推奨する立場です。自分がスキルアップできた経験があるので、自信をもって受験を勧めたいです。多くの社員にチャレンジしてもらうため、資格取得の支援制度を今、模索しているところです。


※掲載内容は取材当時(令和6年)のものです。


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