企業事例 サンコー株式会社



 会社概要

設立   1961年

従業員数 約230名

本社   香川県高松市朝日新町20-4

事業内容 各種産業用締結ねじ部品・精密機能部品の設計、製造、販売




人材育成の体制再構築に手段の一つとして組み込む
-社長自ら受験し、身をもって良さを実感-

今年創業60年目を迎えたサンコー株式会社は、ねじ、金属加工部品などの製造、販売を行っており、従業員は嘱託含め約230名。香川県高松市に本社を構え、16カ所の販売拠点と国内外に多くのグループ会社、協力会社がある。社長自身が複数の分野のビジキャリを受験し、刺激を受けると同時に各職務への理解も深まったという。河野伸之代表取締役社長と監査役の田村隆氏にお話をうかがった。

営業職の資格を探していた

ビジネス・キャリア検定試験はどのような経緯で導入されたのでしょうか。
河野  去年の春に香川県職業能力開発協会から送られてきたビジキャリの案内を見たのがきっかけです。「こんなのあるんだ」と思って。当社は営業が主体の会社なんですが、営業の仕事に何か資格のようなものはないかなと日頃から感じていたんです。よくある自己啓発本やビジネス書などよりもう少し理論的にきちんと学べるもの。それでたまたま案内を見て、まさにそういうものがあるんだと思いました。厚生労働省も後援してるし、営業だけではなくていろいろな分野もあって、これは面白いなと。
それから過去問をやってみたりしながら「これうちでやってみたいな」と思ったんです。営業3級のテキストはBtoBの営業の内容で、理想論のようなものではなくてちょうどいいなと。将来的に主任係長クラスの人間が所長に上がる時に「営業3級は持っておくこと」ぐらいにしたいという思いがあって始めました。
また、営業職以外の間接部門――総務、経理、物流などの社員も、こうしたものがあればある程度具体的な目標もできていいのではないかということもありましたね。人事評価に自己啓発という項目もありますが、事務系の人はなかなか目標が立てづらいですから。
どのような形でビジキャリを運用されていますか。
河野 最初に「こういうものをやりますよ」と全社員に一斉配信し、希望者を募りました。
田村 強制ではなく、営業担当の係長・代理職に対しては「営業3級を取得してください」と言っています。決して取らないとなれないという形ではないです。その職位ではない人も受けていますね。営業の人間がほかの試験を受けるケースもあります。経営戦略とか。受験申込みは個人が本社に提出して、そこで一括申請しています。
受験に対する援助などはされているんでしょうか。
田村 各試験を初めて受験する際の受験料、テキスト代は会社で負担しています。不合格で再チャレンジの場合は個人負担になりますが、違う試験区分を受験する場合は初めてということになりますから会社負担ですね。
社員の皆さんのビジキャリに対する反応、感想などはいかがでしょうか。

田村 本社以外に16カ所の拠点(2支店・13営業所・1出張所)があり、私が監査の職務でそれぞれを訪問して若手からベテランまでヒアリングするんです。その項目の一つとしてビジキャリについて聞くんですが、どういう制度でどういう支援があるといったことはだいたいみんな知っていて認識されていますね。拠点によって多少温度差はあるにせよ、浸透は間違いなくしていると思いますね。
河野 受験の日が近くなってくると「勉強どこまでやったんや?」という言葉が社員同士の会話の中によく出てきたりしますし、試験の後は「どやったー?」という感じですね。そういう面ではみんな結構楽しんでるところはありますね。
複数の分野を受ける社員も多いです。仲間同士で「次何受ける?」という感じで。受験者は延べで210名ほどになりました。グループ会社にも紹介して、一部受けてくれたりもしてますね。
田村 全国で受験できるのがよかったですね。四国だけでなく、広島、横浜など各拠点の地元で受験できます。


社長自身が受験して良さを実感

受験者の方は、勉強する時間などそれなりに準備が必要かと思いますが、いかがですか。
河野 私自身も去年の10月、今年の2月、10月と3回連続で受けてみたんですが、やはり勉強に時間はかかりますね。特に自分が今まであまりやっていない分野を受けてみようと思い、テキストを一から読みました。テキストだけでは理解できない面もあったので、図書館で参考になるような本を調べたりしましたね。受験者はやはりそれなりの時間をかけて学習しているんでしょうね。毎晩仕事から帰ってやろうとするんだけど寝てしまった、といった話も聞きます。1カ月ほど前からエンジンかけてやっているようです。
でも苦労したらしたなりの成果はありますね。
河野 そうですね。当然合格したら嬉しいですし、だめでも「また次頑張ろう」という気持ちになる。最初に私が社員に言ったのは「勉強することに意義があるんだ」ということです。学生から社会人になってだいぶ経つと、なかなかきちんと勉強する機会がないですよね。自分でやってみると、普段あまり使っていない部分の脳を使ってるような感じでした。非常に刺激になって、いいことだと感じています。
私は経営戦略、経理の簿記・財務諸表、企業法務を受験したんですが、そうすると「経理の人はこういう知識があって仕事をしているんだ」とか「総務系の人もこういう法律の知識を基に仕事をしているのか」と、尊敬する気持ちも生まれましたね。

人材育成の体制再構築の手段の一つ

人材育成、社員教育について今後どのように取り組まれていかれますか。
河野 営業の面では、いろいろな人材を揃えておきたいという思いがあります。営業担当者というのは様々なお客様それぞれに合う・合わないがある。できるだけ社員の個性によって、合うお客様を当てるようにするわけです。個性はどんどん伸ばしていきたいという部分もありますが、個性だけでは通用しません。ベースには知識・スキルも当然身に付けておかないといけない。その手段の一つとしてビジキャリもあります。そうした人材育成が今まで必ずしも十分ではなかった面もあると思いますので、今後はさらに力を入れてやっていこうと考えています。
田村 ある程度形はできて、もう少し細かいところを詰めていくことに現在取り組んでいる最中です。実際に運用しながら改良を加えていこうという段階ですね。ですから、ビジキャリを知ったのはいいタイミングでした。あらためて人材育成の体制を再構築していく中で社員の自己啓発を後押しする手段の一つとして機能していると思いますし、今後も利用させていただきたいですね。
河野 例えば大学卒業後に入社して38歳までに所長になるとすると、そのためにどのような教育をしていくか。その中にビジキャリが組み込まれているわけです。
田村 当社の場合、どの分野・科目を受けてもいいという形にしてるんですけれど、拠点ごとに「今度はこれを受けてみようか」とか「じゃあ私も受けてみよう」という感じになっていますね。間接部門の事務の女性が営業を受けることもあります。
河野 実際にこれを導入する時、どのくらい反応があるか多少不安はあったんですけれども、任意受験でも予想以上の人数が受けていましたし、それが2回目、3回目と続いています。手前味噌な言い方になりますが、うちの社員もなかなかやる気はあるな、と思いましたね。今後も継続して受けてもらえるようにしていくつもりです。受験料、テキスト代は会社負担ということはあるにせよ、受験するとなるとしんどい面もやっぱりありますから、それでもチャレンジしてくれるというのは有り難いですね。
自分が今までやってきていないような分野の仕事についても知ることができれば、それはそれで役に立つこともあるでしょうし、幅広く勉強してほしいですね。


※掲載内容は取材当時(令和3年)のものです。

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