■ 会社概要
設立 1959年
従業員数 220名(グループ含め、550名)
本社 長野県諏訪市四賀107
事業内容 オーディオ・ビジュアル、情報機器、自動車関連機器、精密機器等の冷間鍛造金型、精密順送金型製作及びプレス加工。各種めっき等表面処理加工、CAD/CAMシステムソフトの開発・販売
チャレンジ精神旺盛な社員が多い社風が合格率の高さに
―合格社員が次回受験者の指導職に!―
長野県諏訪市にある太陽工業株式会社は、1959年の創業以来、精密加工業界のリーディングカンパニーを目指し、精密金型・塑性加工・冷間鍛造といった精密加工の技術を追求し、事業を展開してきた。その技術力を証明すべく、主力製品も精密機器、デジタル家電、自動車、スマートグリッド、医療機器と着実に幅を広げている。そうした中、ビジネス・キャリア検定試験においては2019年から「生産管理分野」「営業・マーケティング分野」を中心に幅広い分野を受験いただいており、合格率が比較的高い。その理由を探るべく経営企画部部長、林道明氏に話を伺った。
技術職に技能検定、間接部門にはビジキャリを導入
御社の概要と事業内容について教えてください。
林 当社はプレス金型、金属部品製造を事業としているものづくりの会社です。自動車関連部品、スマートフォン内の重要な部品、医療などで使われるものをつくり、主に国内のメーカーへ出荷しています。組織としては製造部、生産技術部、「テクノロジーセンター輝(teru)」といった技術系の部門と、営業、購買、品質保証、生産管理などの間接部門があります。グループ企業にメッキ加工の株式会社ハイライト、ソフトウェアをゼロベースから開発する太陽メカトロニクス株式会社があり、グループ内で一貫加工できるのが大きな強みとなっています。社員は約220名、グループ会社も含めると総勢550名の組織です。
ビジネス・キャリア検定(以下、ビジキャリ)導入の背景を教えていただけますでしょうか。
林 ビジキャリ導入を検討し始めたのは2018年。翌年から人事制度を全面的に改定することが決まっていたことが理由です。新しい人事制度「役割等級制度」では、昇進昇格を決める際の要件として、資格の有無をそれぞれの職種ごとに定義しました。例えば、技術系の社員であれば、「技能検定の●級を取らなければ、上位等級に昇進することはできない。」といった具合に。ビジキャリは、間接部門の部署ごとの要件となる資格の一つとして設定しました。もちろん、昇進を決める際は他の要件も見ますが、資格は力量の大きな証(あかし)となるので要素としては大きいです。
それと、全社員が資格取得のために頑張って勉強するという風土を作りたかった、ということもあります。技術職は、人事制度の改定前から多くの社員が技能検定取得のために日々精進していました。ところが、間接部門の社員には、技能職における技能検定に該当するような資格がありませんでした。「間接部門の社員がチャレンジしたくなる資格がないか」といろいろ調べてたどり着いたのがビジキャリでした。
導入するにあたって一番の決め手になったことは何だったのでしょうか
林 ビジキャリは「経理・財務管理分野」「営業・マーケティング分野」「生産管理分野」など8つの分野があり、事務系職種が網羅されており非常に裾野が広いので、どの間接部門に所属する社員も挑戦チャレンジできる資格であることが一番の決め手でした。
受験料はあえて合格者に返金する仕組みに
社内への周知方法、奨励方法について教えてください。
林 そもそも社員はビジキャリがどのような資格か全く知りませんでした。そのため、まずは各部門の役職社員に伝え、そこから社員に広めてもらうことにしました。また、社内の情報ポータルサイトでも資格内容と受験要項を告知し、受験希望者も募りました。幸い、想定した以上に導入の初年度から多くの社員が受験してくれました。大体、3級を現場のライン長クラス、2級をその上の主任クラスが2級、課長層が1級を受けているという印象です。しかし、実際にはそれに限らず一般社員も多く受けていますし、3級と2級を同時に受験するという社員もいました。
御社は平均合格率が比較的高い実績となっています。会社として社員の方々に勉強してもらうための風土・環境づくりなど、何か取り組みをされていらっしゃいますか。
林 当社は採用面接の段階から、自己研鑽に前向きに取り組むような人材採用を心がけていますので、チャレンジ精神旺盛な社風が自ずと醸成されています。それゆえ、資格取得や研修に意欲的な社員が多いです。
特に、役職者が率先してビジキャリに挑戦している部署は一般社員も数多く受験しています。生産管理部がまさにそうです。生産管理部の部長は「ビジキャリは実際の業務に役立つから。」と自ら受験していました。そんなやる気に満ちた上司に一般社員も刺激され、資格取得を目指して頑張っているのではないかと思います。
それに加えて、合格者は全員、他の社員の前で社長から表彰してもらうようにしています。社内の情報ポータルサイトにある「電子掲示板」コーナーでも「今年のビジキャリ●級の合格者は...」と名前を公表しています。そういった取り組みもまた、資格取得の励みになっているのではないかと思います。
部署によっては受験のアドバイスを行う役割として「指導職」がいます。当然、指導職自身は合格しているので、先輩としてこれから受験する社員を応援し指導するわけです。これから受験する社員は指導職に、勉強のコツや試験の要などを教えてもらったりしています。このような職場内におけるフォローも、合格者の増加につながっているのではないかと思います。
なお、基本的に受験料などは会社が負担しますが、いったん、本人に支払ってもらい、合格後に返金することにしています。1回分しか支払わないのでみんな一発で合格できているのかもしれません。テキストは常に最新版を用意し、必要な人の手元に届くようにしています。
ビジキャリの複数科目で合格を目指し、ゼネラリストになってほしい
ビジキャリ導入後の効果はいかがですか?
林 ビジキャリ導入前、間接部門の人材教育はOJTが中心でした。しかし、ビジキャリ導入後は試験の勉強を通して、OJTでは学べない知識やスキルが身に付き、それがそのまま自分自身の業務にすぐに活用できるという認識が広がりました。実際、資格を取得した社員の仕事ぶりを見て、資格取得を目指す社員も増えてきています。とても良い循環だと感じています。
今後はビジキャリをどのように活用されていきたいとお考えでしょうか。
林 当社はジョブローテーションを制度として奨励しています。営業にいた社員が生産管理へ、あるいは品質管理部の社員が営業へ異動するといったことをどんどん勧めていきたいと考えています。そういう意味で言うと、異動するたびに一人の社員がそこで必要な基礎知識を得るためにビジキャリを受験し合格していく、といったケースも増えてくると思います。
まだジョブローテーションは道半ばではありますが、社員には貪欲にマルチにビジキャリの複数科目を受験し合格することで、多種多様な分野に精通している「ゼネラリスト」として活躍してほしい、という会社としての思いがあります。
最近の傾向としては、まだ異動の辞令が出ていないにもかかわらず、自分で将来のキャリアプランを考えてなのか、設計部門にいながらロジスティクス分野の科目を受験したり、営業部門に所属しながら経理の原価計算などの科目を受験したりしています。とても良い傾向だととらえています。極端な話、当社を卒業して他社へ転職したとしても困らないよう、様々な知識とスキルを修得しておいてほしいと思います。
今後、老若男女はもちろん、外国人と様々な人たちが会社に出入りする時代になると思います。そうなった時、どんな人が入社してもすぐに第一線で活躍できるような教育の仕組みを作っておかなければいけないと考えています。そうした私たちの思いが根本にあり、そのための手段としてビジキャリなどの試験がある。そういう意味でビジキャリは、当社の人材教育においても重要な役目を果たす資格になりつつあります。
当社はこれまでBtoB中心のビジネスで、顧客も国内メーカーがメインでした。ただ、今後はBtoCのビジネスや、もしくは異業種ビジネスへの参入ということも考えていく必要があります。今後のビジョンを戦略的に進めていくためには、やはり人材が重要です。そのためにはビジキャリや技能検定のほか、QC検定など様々な資格を活用して、社内教育の仕組みをしっかり作りたいと考えています。経営層を担う人材を育て、新ビジネス、もしくは、新しい領域を切り拓いていくためにも間接部門の人材教育が大きな課題なので、ビジキャリをうまく活用していきたいと考えています。
■ ビジネス・キャリア合格者に聞きました
導入検討の際、ビジキャリを受けて合格した社員、藤森麻衣さんにお話をうかがいました
<資格取得で仕事にも自分にも自信が持てるようになった!>

ビジキャリを受けたのは2019年。ちょうど会社の制度改革があってビジキャリ取得を奨励し始めた年です。元々出世欲があったのでチャレンジしました。
所属が総務経理課なので、3級経理(簿記・財務諸表)を受けました。1人目の子どもが保育園児の時期だったので平日はどんなに頑張っても勉強できるのは1~2時間が精一杯。そのため、土日に家族に子どもを預けて一人で図書館へ行き、集中してテキストで学習していましたね。テキストは会社で購入してもらったものを使いました。
合格できたのはおそらく同じ試験を上司も受けることになっていたので「互いに一緒にがんばろう」と励まし合っていたこと、それと「出世したい」という私の中の願望の2つがモチベーションになったのだと思います。
合格したことは仕事にも、私自身にも大きな自信を与えてくれました。そもそも経理なのに、仕分け作業に苦手意識があって実のところよく理解していないまま業務を遂行していたのですが、試験勉強をして合格したことでむしろ親しみを持って取り組むことができています。それと3カ月間でしたが、がむしゃらに頑張った自分がいたという事実があるので、それが自分の自信になっている気がします。

取材にご協力いただきありがとうございました!今後ともビジネス・キャリア検定試験をよろしくお願いいたします。
※掲載内容は取材当時(令和6年)のものです。