企業事例 協和プレス工業株式会社



 会社概要

設立   1963年

従業員数 100名(社員75名、パート10名、派遣社員15名)

本社   和歌山県紀の川市長田中345番地7

事業内容 業務用空調機器用板金・プレス部品、工作機械用カバー板金部品などを製造(試作品から量産品まで対応)



ビジキャリで知識を修得し、自己成長につなげてもらう
-外国人社員も積極的に資格取得-

 ダイバーシティ経営を推進しており、特定技能外国人材、高度外国人材の採用にも積極的な協和プレス工業株式会社は、「人を育て、技術を磨き、日本の未来をつくる」をモットーに、業務用空調機・冷凍機、情報通信機器などの板金部品を製造している。ビジネス・キャリア検定も生産管理分野を中心に日本人社員だけでなく多くの外国人社員も合格し、実務と自身のキャリア形成に生かしている。代表取締役社長 野村壮吾氏に詳しくお話を伺った。

社員の成長なくして会社の成長はないと考え、ビジキャリを導入

最初にビジネス・キャリア検定(以下、ビジキャリ)をお知りになったきっかけから教えていただけますでしょうか。
野村 当初、社員教育の一環で国家資格の技能検定を受けることを長く推奨してきました。ただ、技能検定はどちらかというと技能修得のためのものであり、製造現場サイドの成長を促すもの。それだけではなく生産管理というか、現場の生産を援助する立場のスタッフの成長を促すことも重要だと考え、そのための手立てはないかと探していた時に、和歌山県職業能力開発協会の方からビジキャリのことを教えていただきました。ではやってみようかというのが始まりでした。

社長ご自身がまず受けてくださったそうですね。
野村 そうなんです。試験のレベルや出題内容を見ておきたくて。それは体験してみないとわからないと思ったので。私が受けるなら経営戦略かと思い、まずは3級を受けて翌年、2級を受けました。原理原則がきっちり押さえられているところと、長く経営に携わっているにもかかわらず、私もわからないところがありましたし、言葉の説明もきちんとなされていました。実務に役立つ内容がしっかり盛り込まれていると実感したので社員にも取得を勧めることにしました。
 技術は技能検定で、知識に関してはビジキャリで理解を深めてもらうという位置づけです。「みんなで頑張って取ろう」と資格取得を奨励していたら、ビジキャリの受験希望者がどんどん増えていったので、今は企業一括申請をさせてもらっています。

専門用語が社員同士の"共通言語"になりつつある

特に2016年あたりから受験者が徐々に増えていますが。
野村 最初は難しいと思って受験に二の足を踏んでいた社員が多かったかもしれません。でも、当社には資格認定制度があり、合格して認定書を取得すると資格手当として給与に反映されます。努力すれば、報われるし、仕事にも役立つ知識が得られるということが広まって積極的に受ける社員が増えたのではないかと。2016年から急速に受験者が増えたのは、新しい人材が入ってきたからというのもありますね。
 それと、当社は生産管理分野の受験者が大半なのですが、たとえば、生産管理オペレーションの3級と2級に受かったら、次は生産管理プランニングの3級、2級といった具合に上位級や違う分野にチャレンジする社員が多いので、おのずと延べ人数が増えているんだと思います。また、たとえ不合格であっても諦めずに何度もチャレンジする社員も結構いますね。社員のやる気を大事にしたいので「何度受験してもいい、受験料は会社で負担するから」と伝えています。もちろん、テキスト代も会社負担です。
ビジキャリ合格者が社内に増えたことによってどのような効果が出ていますか?
野村 生産管理を勉強してもらったことで専門用語の言葉の意味を理解できる社員が増えました。その部分が共通言語となって今まで以上にコミュニケーションがスムーズになった気がします。また、仕事の中身への理解も深まったことで、社員の多くがやりがいを感じて働いてくれています。それが定着というところにもつながっており、実際、ビジキャリを受けている社員の離職率は低いと感じています。

外国人社員も日本人社員同様、ビジキャリにチャレンジ!

御社は外国人材の雇用にも積極的ですね。
野村 はい。現在、タイ、ミャンマー、中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ウズベキスタン、スリランカ、モンゴルの9カ国、計30名の外国人社員が活躍しています。
 特定技能外国人材には2つのルートがあります。一つは当社で技能実習生を3年~5年経験し、そのまま社員になるパターンで、もう一つは他社で技能実習を経験していったん帰国し、再来日して当社に入社するパターンです。特定技能外国人材は製造現場で活躍していただき、それぞれの成長キャリアプランにもとづいて現場リーダーにもなってもらっています。
 なお、特定技能と両輪で力を入れているのが高度外国人材の採用です。現在10名が在籍しています。高度外国人材は管理部門のスタッフ業務が主で、現場のサポート業務にも携わってもらっています。当社では主に高度外国人材がビジキャリに挑戦しています。
外国人社員の方々もビジキャリに挑戦していただいているのでしょうか。
野村 もちろんです。当社には9カ国の外国人材を採用していますが、外国人だからといった見方はまったくしていません。社内の公用語は日本語なので、日本語でコミュニケーションできれば、みんな同じ協和プレス工業の仲間としてとらえています。なので、本当に国籍関係なく、ビジキャリを受けたいと希望すれば、受験してもらっています。
外国人社員も日本人も同じと気づくようなタイミングがあったのでしょうか?
野村 実は外国人を採用し始めた頃、彼らは何に興味を持って日本へ来るのか疑問で、20~30代の外国人の若者たちに話を聞きました。すると「日本のアニメやカルチャーが好きです」と言う。日本の若者と何ら変わらないわけです。しかも、彼らは生まれた時からメイドインジャパンの家電にも触れてきていて日本のものづくりに興味があったから、日本へ来たと話してくれました。日本の魅力が世界の若者にも伝わっている。だったら、日本人だけでなく、世界の若者を対象に採用活動を行い、一緒に働く仲間をつくっていこうと思ったのがきっかけですね。
なるほど。では社員の方たちに今後、期待することはありますでしょうか。
野村 社員の成長なくして会社の成長はあり得ません。一人ひとりの成長の結果としてうちの会社が良い会社になっていく。そういうことを目指しているし、期待しています。社員にはビジキャリをうまく活用して自身の成長してもらいたいし、自己実現につなげていってほしいと強く願っています。
ビジキャリへの期待も聞かせてください。
野村 最近は製造現場のスタッフがビジキャリを受けたり、逆に管理部門のスタッフが技能検定に挑戦したりとクロスオーバーもしています。ビジキャリによって知識を豊富に蓄えることで互いの仕事を理解し合うようになっていますし、自分の成長が仕事へのモチベーションにもつながるという好循環が生まれています。社員一人ひとりにきっちり成長していけるようこれからもビジキャリを活用させていだこうと思っています。私も近いうちに1級を受けようと思っています。


 ビジネス・キャリア合格者に聞きました
実際にビジキャリを受けて合格した社員2名にお話をうかがいます。
まずは製造部納品課の西原美紀さんです。よろしくお願いいたします。
<上司の言うことが理解できるようになり、仕事への考え方が変わった>
 私は現場で働いています。最初は技能検定を目指し、先輩に指導してもらっている同僚を見て自分も受けてみたくなり、技能検定の2級と1級を受験し合格しました。
 ビジキャリを受け始めたのは2018年からです。事務所の管理部門の方々が受けているのが気になり、「私も受けてみてもいいかな」と話したら、「もちろん、ぜひ!」と言ってもらえたので挑戦しました。最初は生産管理オペレーション3級から受け、合格したので2級を受験。当時は、オペレーション2級はさらに2つに分かれていたので一つひとつ受けました。その後、生産管理プランニング3級を受けて、こちらの2級は3つに分かれていたので一つひとつ受け、合格していきました。
 受験前はこの資格を知りませんでしたが、会場での受験者数の多さに驚愕し、これだけの人が受けるのだから素晴らしい資格なのでは、と感じましたね。ですから合格した時は心底嬉しかったです。その気持ちは生涯大切にしたいです。受験の直接のきっかけは会社の昇進条件にこの資格があったことですが、やり遂げるんだという目標がやりがいと生きがいにつながったと思っています。
 ビジキャリの勉強は何だか学生に戻ったような感覚があって楽しかったです。だいたい休憩時間と帰宅して寝るまでの1時間ぐらいは勉強していました。休日は半日、試験近くになったら丸1日勉強するといった感じです。最初の試験の時は不安で4カ月前から勉強を始めたのですが、いくつか受けていくうちに共通の部分もあり、徐々に学習時間は短くなっていきました。テキストもわかりやすく、過去問で間違ったところは必ずテキストに戻って確認していました。
 実は以前は会社で専門用語を言われても意味がわからなかったので聞き流していました。でも、資格を取得したことで専門用語や仕事のしくみがわかるようになり、仕事に対する姿勢と考え方がガラッと変わりました。今は何を言われても意味がちゃんと理解できるようになったので聞き流すことはありません。社内で作業の標準化を進めてくれていることも理解できるようになり、役立っています。また、生産管理の書類の中身が理解できるので、そこに記載されている計画どおりに業務が進むと達成感があります。仕事が俄然楽しくなりました。まだまだ知識を広げていきたいので今度はロジスティクスの3級を受けたいと思っています。

次は高度外国人材として採用されたメタゼンプーさんです。ミャンマー出身で現在、管理部生産技術課で活躍しています。プーさん、よろしくお願いいたします。
<みんなを助けられるぐらい自分を成長させたくてビジキャリに挑戦>
 CAD/CAMに興味があって就職先を探していて協和プレス工業株式会社を見つけました。社長と話したらいろいろチャレンジもできそうだったので2020年3月に入社しました。入社1年目の年に生産管理オペレーション3級を受けました。最初は落ちてしまいましたが、2回目に合格しました。その後、生産管理オペレーション2級も合格しました。生産管理プランニング3級も受かったので、次は生産管理プランニング2級に挑戦するつもりです。
 正直勉強は大変です。テキストが日本語なのでわからない漢字もたくさん出てきます。そのたびにネットで調べたり、周りに聞いたりしています。読み解くのに手間がかかり、結局1日1ページで終わってしまうこともしばしば。それでも途中で諦めたりせずがんばりました。なぜかというと、みんなに比べてまだまだ知識が足りないからです。少しでも知識を増やして、みんなの仕事を助けられる自分に成長したいです。何よりわからないことがわかるようになっていくのはすごく楽しい。学べば学ぶほどまだまだ知らないことがあることにも気づくことができました。
 私にとって一番大事なことは仕事でミスをしないこと。そのために生産管理でわからないところが出てくるとテキストで確認したりしています。また、知識習得の手段としてこれからも資格には挑戦していきたいと思っています。
野村社長は西原さん、プーさんのコメントをお聞きになり、どのように感じられましたか?
野村 ビジキャリを受けてどうだったかといった社内アンケートを取っていなかったので今回の機会でお二人の話が聞けてよかったです。わからないことがわかるようになったことがすごく楽しいと二人とも話してくれてすごく感動しました。しかも、それがモチベーションになってまた次はこういう試験を受けたいとか、こんな知識を増やしたいとか、仕事へのモチベーションにもつながっているなだと改めて実感しました。
 確かに専門用語がわからないまま、「この部品のリードタイムはどうなっているか?」とか、「この作業を標準化しないといけない」なんて言われても答えられないだろうし、また、答えられないことにもどかしさを感じてしまっていたと思うんです。小さなことかもしれないけれど、コミュニケーションは言葉を介在にして行うものなので、言葉の意味が正確にお互いに理解できていないと、コミュニケーションはうまくいきません。そうなると生産性を悪化させるし、人間関係も悪くなります。共通認識できる知識を身につけることは本当に大切だなと改めて思いましたね。


※掲載内容は取材当時(令和5年)のものです。

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