JAVADA情報マガジン2月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2017年2月号

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40年間の職業経験からみた企業・組織を強くする職場づくりのポイント
第3回:人材育成・能力開発からみた職場づくりのポイントのまとめ

キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、研修・セミナー講師、大学キャリアコンサルタント
  心理相談員、CSCインストラクター
   河野 佳正 氏 《プロフィール》 

はじめに

前回までの2回は素材としての私の【職業経歴】(試行錯誤した経験)を第1回:【職業経験前半16年、メンバー格からみた職場づくりのポイント】第2回:【職業経験後半24年、管理職格からみた職場づくりのポイント】の2つに分け、年齢・職務・職位の時系列に沿って「企業・組織を強くする職場づくりのポイント」となる目標達成、人材育成・能力開発、組織育成の視点で振り返りお伝えしました。

また、前回(第2回)の後半『Ⅱ.部下を持ったライン管理職(営業管理職)としての経験(主に日常マネジメント)』では、私の営業管理職としての経験から、「企業・組織を強くする職場づくりのポイント」となる業績達成・人材育成・組織育成を大枠でまとめ、併せて人材マネジメントのイメージ図もお伝えしました。

 

今回(第3回)と次回(第4回)は、部下を持ったライン営業管理職の視点での「企業・組織を強くする職場づくりのポイント」を、更にメンバーの人材育成・能力開発の面から(今回)と組織育成の面から(次回)の2回に分けて、実務経験でお伝えいたします。

私のライン営業管理職としての事例は2000(平成12)年前後頃から現在に近い時点(2009(平成21)年)までの期間です。人事制度が見直され目標管理・キャリア開発・セカンドキャリア研修(50歳代)・定年再雇用なども導入され、主力商品は単体の複写機から現在の複合機に、営業スタイルもソリューション営業へ変化した期間です。

したがって、私の企業・職業経験・留意していた点をお伝えする上でのキャリア開発・目標管理などについては、代用として私が腹落ちした現在の市販図書を参考にして引用・改変し、経験を加味してまとめたことをご了承ください(参考図書;備考A、備考B) 。

今回の「人材育成・能力開発からみた職場づくりのポイントのまとめ」は、まずキャリア開発・目標管理のフレームをお伝えし、続いて日常の営業プロセスに沿った人材育成の実務経験、私自身のビジネスキャリア・職務経歴の全般的な振り返りをお伝えします。

 

Ⅰ.「キャリア開発」
Ⅰ‐1.はじめに

キャリアとは自分の人生や仕事の節目(段階・年代・出会い)でどう向き合ってきたかを表す軌跡、およびこれからどこへ向かいたいのかという将来の展望、と捉えています。

 
 

① キャリアには人生そのもの(ライフキャリア)と仕事の側面(ビジネスキャリア)とがある。

② キャリアの目標はキャリアの成功で、自己イメージと照らし合わせたフィット感・納得感。

③ キャリア開発はキャリアの成功を実現するための思考と行動。

④ キャリア開発はWILL(なりたい自分・目標・方向)とCAN(できること)とのGAPを埋めながら、MUST(すべきこと・制約)に留意し、実践を通してWILLに近づくこと。手法は問題解決型アプローチ。

⑤ 『WILL/CAN/MUST』の3つを満たしている時にやりがいを感じやすい。但し安住は後退につながるので新たなWILLの設定に留意。

 

Ⅰ‐2.「ビジネスキャリア・職務遂行能力「ビジネスキャリアの発達段階」
およびキャリア開発の進め方

今回の一連のテーマは【40年間の職業経験からみた企業・組織を強くする職場づくりのポイント】ですので、『キャリア=ビジネスキャリア=職務遂行能力』として進めます。

以下に『ビジネスキャリア=職務遂行能力』・『職務遂行能力の構成要素』・『階層別発揮比率』・『発達段階』のイメージ図と説明、続けてキャリア開発の進め方を説明します。

また本文の最終ページに、概念的な職務遂行能力分類と評価基準の『ビジネスキャリア・職務遂行能力の各構成要素と基準点数の説明』・『※何にこだわって仕事をしたいか?(シャインのキャリアアンカーの改変)』を表にまとめましたのでお目通しください。

 

 

1. 『ビジネスキャリア=職務遂行能力』・『職務遂行能力の構成要素』・『階層別発揮比率』・『発達段階』について (上記イメージ図と以下を参照)

① 職務遂行能力(コンピテンシー)は、①専門能力(テクニカルスキル)、②基礎能力(パーソナルスキル)、③概念化力(コンセプチャルスキル)の3つの能力に分類される。

② 3つの能力の発揮期待比率は階層・職位により異なる。職位共通は基礎能力。下位層は専門能力、中間層は専門能力・概念化力、上位層は概念化力。概念化力はマネジメント層の専門能力とも言える。

③ 3つの能力はそれぞれ複数の細分化能力にブレークダウンされ構成される。

④ それらの能力は評価基準とともに職務遂行能力辞書としてまとめられる。

⑤ 能力は職務の実務経験を通して身につく・身につける。

⑥ 知識は大切だが要は能力を発揮して行動すること。

⑦ 高能力保有者でもモチベーション・意欲などの気持ち・姿勢が低ければ能力の発揮度合いは下がる。

⑧ キャリア発達段階(年齢)とともに高い能力発揮(パフォーマンス)を期待される。

 

2. キャリア開発のライン現場での進め方

① 年度初めに、メンバー本人がキャリア開発管理シートを作成し上司とすり合わせ合意する。

①‐1.メンバー本人が何にこだわって仕事をしたいか(キャリアアンカー)を含め、キャリア開発管理シートに職務分類書を参照しながら数年先(5年程度)の目標職務(WILL)と理由・背景(WHY)を記述する。

①‐2.目標職務遂行に必要と思われる能力(WHAT)を職務遂行能力辞書から選び出し、現在の能力レベルを自己採点する(①専門能力②基礎能力③概念化力の細分化能力)。

①‐3.目標職務に必要と思われる点数を想定し現在(CAN)と目標(WILL)との課題(GAP)を知る。

①‐4.現在の職務を遂行する中でどのように課題(GAP)を解決するか(HOW)を記述する(自己研鑽(実務の中で・実務の外で)・OJT・上司からの支援・Off-JT・その他)。

①‐5.キャリア開発管理シートをもとに本人と上司ですり合わせ・修正し合意する。

② 期中は、本人が自己管理し実行し上司は見守り・相談を受け・OJT・助言する。

③ 年度末に、本人が出来栄えを自己評価し上司とすり合わせし、上司はフィードバックする。

④ 翌年度初めに、本人がキャリア開発管理シートの計画修正を行い本人と上司ですり合わせ・修正し合意する。

 

3.組織の支援

別途、職位・職種・年齢などの節目にあわせて、新卒教育からセカンドキャリア研修(50歳代)まで種々の集合教育・研修(Off-JT)は行われています。

 

Ⅱ.目標管理

目標管理は業績評価・行動評価と連動し、営業の場合の目標管理は以下の手順で行う。

① 年間の組織目標(=業績目標)を上下半期に分け半期組織目標を設定し、半期初に個人別に配分し個人業績目標としすり合わせを行う。

 
 

② 各人が受け取った個人業績目標を目標管理シートに記入し達成にむけた半期プロセス目標(数項目の重点行動計画)を自律して作成する。

③ 目標管理シートをベースに業績目標達成に向けた重点行動計画の妥当性・実現性をすり合わせる。

④ 期中は各人が自律して計画と進捗を管理し、月度・四半期毎に進捗のすり合わせと助言を行う。

⑤ 半期終了後に業績と重点行動計画の出来栄えのすり合わせとフィードバックを行う。

⑥ 半期毎の重点行動計画は、中期的なキャリア開発計画に連動した短期的なキャリア開発の意味合いもあることを意識させる。

 

Ⅲ.日常の営業プロセスに沿った人材育成

ポイントは如何に納得し意欲を持って職務を遂行し組織目標を達成し、職務遂行の中でキャリア目標に向けた専門能力・基礎能力・概念化力を身につけ成長してもらうかです。

日常の営業プロセスに沿った能力育成は、職位・職務遂行能力・経験年数・年齢と気持ちを踏まえ、実務の中で、任す・見守る・相談・助言・OJT・フィードバックで行いました。

営業プロセスをお目通しいただけば、メンバーが自律・自立して期初の総合攻略計画策定段階から実行段階の面談・提案からファン化までを実践することにより、専門能力・基礎能力・概念化力の全ての能力向上が見込めることをご理解いただけると思います。

 
 

① 『市場を知る』では、期初に各自担当市場の緊急度・重要度・難易度など総合判断しプライオリティづけし総合攻略計画を策定する。
総合判断は、マクロ外部環境・市場・競合環境、自社の強み・弱み、顧客の顧客の視点、業種・企業規模、同一性・類似性企業の多少、企業の親和度の高低(ファン化度)、継続担当企業・新規担当企業などで行う。

② 『顧客を知る』では、『市場を知る』の総合判断から、効果的ないくつかの企業を選定し、個別に重点企業攻略計画を策定する。
HP情報などから顧客企業を取り巻く環境、企業・組織のニーズ・問題・課題を想定し攻略計画を策定する。予算策定時期・稟議ルートに留意する。

③ 『仮説提案』では、企業個々の問題・課題解決策を想定し仮説提案をまとめる。

④ 『面談』では、顧客と面談・折衝し親和と興味換気を進める(顧客のミドル・担当者・トップ層のキーマン・賛同者・反対者など)。

⑤ 『提案』では、仮説提案を面談・折衝を繰り返して確認・修正し実体提案に仕上げ提案する。

 

⑥ 『合意』

⑦ 『契約・導入』

⑧ 『フォロー』では、早期立ち上げ・定着をサポートし・効果を確認・レビューする。

⑨ 『ファン化』では、定期訪問・情報提供などで顧客満足度を向上させる。新たな商談を探る。

 

Ⅳ.私自身のビジネスキャリア・職務経歴の全般的な振り返り

私のビジネスキャリア・【職業経歴】(詳細は第1回、第2回の投稿文)はキャリア開発制度などがない時代からですが、外資系事務機器企業の制度と経験、定年後に学んだキャリア開発の視点で振り返ると、無意識のうちに節目で方向性を持ち、実務を通してキャリア開発をやって・やらされて「ビジネスキャリアの発達段階」を歩んできたと思います。

結果として『専門性×リーダーシップ』+『深み+幅』がT型に身に着いたと思います。

それは流れに流されたり・乗ったり、手を挙げて山に登ったり、組織・上司・メンバーの目に見える・見えない支援を受けたり、実務を通しての試行錯誤とスパイラルアップの繰り返しによると思います。

それは好奇心と変化を視る目・起こす気持ちを持ち、根気よく、『まず動く・考える・学ぶ・まとめる・また動く』、『都度必要な能力を身に付け、型を造り、破り、また新たな型を造る』、『仕事・職場・仲間・環境に馴染む』を実務を通して繰り返しスパイラルアップしたことによると思います。

尚、転職およびセカンドキャリアは、以下の2つの別文をお目通しください。

① 1985(昭和60)年9月、36歳時の転職経験は【~転職・キャリアチェンジ~】。

② 2009(平成21)年6月、60歳定年時の経験は【~定年退職・セカンドライフ~】。

次回(第4回・最終回)は、主に部下を持ったライン営業管理職の視点での「企業・組織を強くする職場づくりのポイント」を「組織育成からみた職場づくりのポイントのまとめ」としてお伝えいたします。

 
 

  • 備考A:管理職研修時からの参考図書(現在市販されているかは不明);
    • 『管理者の基礎テキスト』松田 憲二 著 初版1991年12月5日 日本能率協会マネジメントセンター
  • 備考B:今回参照した現在市販されている参考図書;
    • キャリアデザイン入門『Ⅰ』基礎力編 大久保 幸夫  日経文庫
    • キャリアデザイン入門『Ⅱ』専門力編 大久保 幸夫  日経文庫
    • マネジャーのための人材育成スキル 大久保 幸夫  日経文庫
    • 会社を強くする人材育成戦略 大久保 幸夫  日経文庫
    • 一次評価者のための目標管理入門 河合 克彦
    • 石橋 薫 共著 日本経済新聞出版社
    • ビジュアル『ビジネス・フレームワーク』 堀 公俊  日経文庫

 

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