はじめに
私は、【プロフィ-ル】に記載したとおり、1970(昭和45)年から2009(平成21)年まで転職を含め40年間、企業・組織の営業部門、システム開発部門、営業スタッフ部門の現業部門にて、組織と自身の目標達成、人材育成・能力開発、組織育成を実践してきました。
定年退職後に資格を取得し、現在、キャリア開発、人材育成、組織育成などのセミナー・研修講師、キャリアコンサルティングに努めています。
今回機会をいただき、企業・組織の営業部門・システム開発部門・営業スタッフ部門の現業部門での私の【職務経歴】を一つの素材として、「企業・組織を強くする職場づくりのポイント」について、ポイントとなる目標達成、人材育成・能力開発、組織育成を中心に現在の視点でまとめ、4回連載させていただきます。
読者の皆様にとっては当たり前、違うのではと思われる点はあるかとは思いますが、一事例として読者の皆様の一助になれば幸いです。
各回のサブテーマ(予定)は次のとおりです。
第1回:職業経験前半16年、メンバー格からみた職場づくりのポイント
~新卒から転職まで~システム開発エンジニアの時代~
第2回:職業経験後半24年、管理職格からみた職場づくりのポイント
~転職から定年まで~営業本部スタッフ・営業・営業管理職の時代~
第3回:人材育成・能力開発からみた職場づくりのポイントのまとめ
第4回:組織育成からみた職場づくりのポイントのまとめ
【第1回】職業経験前半16年、メンバー格からからみた職場づくりのポイント
~新卒から転職まで~システム開発エンジニアの時代~
今回は、素材としての私の【職業経歴】の"前半"を、年齢・職務・職位(メンバー格)の時系列に沿って、「企業・組織を強くする職場づくりのポイント」となる目標達成、人材育成・能力開発、組織育成の視点で振り返りました。
まず先に結論として、メンバー格としての職業経験前半16年を振り返り感じた職場づくりのポイント4点を記載いたします。
続いて、このポイントに行き着いた個々の実務経験を時系列で記載します。ご一読いただきご理解たまわれば幸いです。
【メンバー格としての職業経験前半16年を振り返り感じた職場づくりのポイント4点】
①メンバーとしての能力開発は、自己研鑽とOJT。組織目標達成をする上で、目の前のテーマ・業務遂行に向け実務を通じて経験と試行錯誤を積み重ね進める。
②他メンバーへの能力の伝承は、実務と経験に基づいたプロセスと各プロセスフェーズのキーポイント(実現性と妥当性と納得性)をまとめて、Off-JTとOJTを繰り返して行う。
③メンバーとしての職場つくりは、お互いに実務に基づいた意見でコミュニケーションし関係を深め合意し、一体となって業務を遂行する。
④職場づくり・活性化は、当時の上司と肌で接し感じたものの振り返りですが、メンバーの能力・適性を見極めながら実務の場を与え、自立を促し、目標達成に向けメンバーが動きやすいようにサポートし、メンバーの取り組み姿勢と職務遂行状況を見極め見守り、適宜フィードバックをする。
【1970(昭和45)年から1985(昭和60)年までの16年間】
~型を身に付け、自立・自律した時代~
~システム開発エンジニア・組織メンバーとして自己能力の向上と組織への貢献をした時代~
私は1970(昭和45)年に某機械製造企業へ新卒入社。プラントエンジニアリング事業部の新設間もないシステム課に配属。同課は各設計部門で利用される技術系システムの開発・運用サポートが主たる業務です。
この時代のポイントは、如何にして職務遂行上の専門能力、社会人としての基礎能力を身に付け自律・自立し、組織メンバーとして組織目標達成に向け、発揮・貢献していくかということでした。
新卒初年度は全くのOJT。新設間もない組織でしたのでシステム開発のプロセス・手法・様式などは整備されていません。
当初は上司から与えられたプログラム要件メモに基づき、プログラミング言語をマニュアルで調べプログラミングしテストし、足りない機能を追加プログラミングする、の繰り返しでした。
途中から利用部門担当者と事前に直接折衝し仕様決めし、要求仕様を確認・合意してからプログラミングするように切替えました。
この1年の経験と試行錯誤により、基礎能力・専門能力の基礎が身についたかと思います。
1970年(昭和45年)当時は事業の拡大期、コンピュータ利用は計算手段から生産手段へと活用され始めた時期でした。そんな折、専用CADシステムを自社開発することになり、入社2年目の私は設計部門・システム部門共同開発のCADシステム開発プロジェクトの一員となりました。
この時期に開発プロジェクトの初期から参加し、開発・初期導入・普及・外販支援の各フェーズで試行錯誤し、プロセス手順を踏んでプロジェクト・仕事を進めたことは、その後の職業人生での、組織目標達成、自己能力向上、職場関係づくり・人間関係づくりを進める上での基礎となりました。
更にプロジェクトを引っ張り、メンバーの自発を促し、見守り、アドバイスし、叱咤激励してくれた上司のリーダーシップ・マネジメントを肌身で感じたことも同様に基礎となりました。
以下にプロジェクトの経験を通して如何にして自己能力の確立と人間関係づくり・職場関係づくりを進めたかを整理しました。
1)自身の基礎能力・専門能力の確立
①プロセス手順と各プロセスフェーズのキーポイント(実現性と妥当性と納得性)を踏まえて進めました。システム開発の入一連のプロセスは次のとおりで、開発フェーズでの要求仕様・機能仕様・基本設計・詳細設計・プログラミング・システムテストから初期導入・普及フェーズです。
②全般として、まず実行してみて試行錯誤して、捨てるもの、取り替えるもの、なおすもの、残すものを判断しながら課題解決を進めました。
2)利用部門と提供部門との人間関係・職場関係づくり
システム開発は使ってもらい成果を上げてもらうことが目標であり、利用者評価が入り、初期導入・普及フェーズは開発フェーズ以上に重要なポイントでした。
①初期導入フェーズ:開発メンバー内の設計出身者とは別の通常の設計メンバーと開発メンバー(私)で運用推進チームを作り、小規模の実業務でトライアル運用を進めました。
このフェーズでの評価が普及フェーズに進めるか否かの大きなフェーズでした。席を設計部門内に設けて、他の一般設計者も気軽に見える環境でした。これは利用部門に対して興味の喚起、違和感の解消にも役立ちました。
この時に留意したポイントは、設計メンバーから従来の業務の進め方とのギャップ・違和感・意見を聴きながら、押しつけにならないように、妥当感・納得感・一体感を大切にしながら合意に導く、の3点でした。
当初は開発メンバー側の私がやってみせながら、教育しながらリードし、徐々に主体を設計メンバーに移行しました。使い勝手・出来栄えを評価し、実務に即した運用手順マニュアル・個々のケースに即した入力マニュアルを整備しました。
使い方の工夫でできるもの・できないものを聴きながら、簡単に機能修正できるものは開発メンバーが即座に修正しました。大幅なバージョンアップが必要なものは次期仕様として文書化を進めました。
②普及フェーズ:初期導入フェーズと同様に、利用部門との関係調整・職場間の関係作りが大切でした。
一体感を意識しながら、推進の主体を運用推進チーム設計メンバーに移管し、運用推進チームへの支援、都度の課題へのフォロー、利用部門での評価の見極めながら、バージョンアップ計画につなげました。
3)外販支援フェーズ;
企業をまたがった顧客と如何に一体感を持った関係づくりをできるかでした。事業・営業上での社外接触は初めてでしたが、プラントエンジニアリング営業から選抜された営業マンとペアになり顧客開拓支援(機能説明・デモ・追加機能打合せ・見積)、から成約後の導入教育・アフターフォローにあたりました。
この時に留意したポイントは次の3点です。
①顧客企業の狙い・用途・要望・設計手順・用語と自社内との違いを理解し、顧客企業の言葉・用語で自社内での利用の仕方・システム機能を説明し効果を訴求するかでした。
②更に一回の訪問で質問や要望を多く聴きだすコンパクトなコミュニケーションをするか、質問・要望に対する回答文書を提出し次につなげるかでした。
③全体としてのプロセスは、顧客との初期接触以外は成約後の導入教育・アフターフォローまで自社内で経験したプロセスで進めました。
さて次回は、転職から定年までの職業経験後半24年、管理職格・管理職からみた職場づくりのポイントについてお伝えさせていただきます。
- 備考1)プラントエンジニアリング事業は、石油精製プラントなどを個別受注生産方式で受注し、設計から施工までを一貫して行い、組織は受注単位のプロジェクトチームと機能・職能部門との典型的な縦横のマトリクス組織。
- 備考2)1970(昭和45)年代初頭は、大型ホストコンピュータ(IBM360など)の時代で、PC、WSや 市販のソフトウェアパッケージもなく、ソフトウェア開発や既存ソフトウェア利用は全て パンチカード入力、出力もコンピュータ室に置かれたラインプリンタ。技術解析・強度計算や 経理のソフトウェアは自社開発が主流の時代。
- 備考3)製図は手書き、製造に必要な材料の集計も図面から手作業で拾い出した時代。 CADはまだCADAMという汎用製図システムが出現してきた時代。
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