JAVADA情報マガジン6月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2016年6月号

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第三回 実施に当たり、会社に理解していただきたいこと

キャリアカウンセラー、ファイナンシャルプランナー、調理師、自動車整備士
  大野 利勝 氏 《プロフィール》 

第一回の中で、三回、四回のテーマを

  • 第三回「実施に当たり、社内(社外)キャリコンの現状と能力の問題について」
  • 第四回「会社がすべきことと、担当者(キャリコン)が身に着けるべき力について」

とさせていただきましたが、少し入れ替えを行い、変更させていただきたいと思います。

第三回に、「実施に当たり、会社に理解していただきたいこと」
第四回に、「キャリコンが身に着けるべき力と、現状の能力の問題について」
に変更をさせていただきます。

前回のコラムでは、社員にもお客様満足度(CS)同様、適正なレベルの社員満足度が必要ではないかと、いうお話を書かせていただきましたが、ある経済番組の中でも似たような話が取り上げられていました。
前号の補足となりますが、大手の実例からも、見ていきたいと思います。
その番組中では、キャリアの世界でも大手のリクルート社の新サービスへの取り組みを紹介しておりました。その番組は、

「社員が自分の会社に働き手を紹介したいと思える会社が魅力的会社である」

と言う考え方を中心にして、就職の新サービスを構築した。 というような内容でした。
他にも目を向けると、現在有名で人気のあるリンク&モチベーション社さんの考えかたも似ているかと思います。

この例を見ても、やはりお客様への営業と従業員の待遇とは、よく似た内容に思えます。
顧客が利用したサービスを他の方に紹介したくなるサービス
顧客満足度が高いサービスは、強いサービス
(利益が少なくとも0(ゼロ)ではなく+(プラス)があり、他社からの参入障壁があれば、稼ぐことにはつながるはず、まあ、あまり利益率が低いサービスは、良質とは言えませんが、、)

同様に、働き手の満足度が高ければ、他者に案内しても良いという気持ちになれる会社
(従業員満足度が高い会社)
これは強い働き手を手に入れられる会社ではないか?と考えます。

ただ、顧客満足度や、従業員満足度をあげるため経費がかかりすぎては、サービスとして継続が難しい。CSと考え方が似ていると思いませんか?
先ほどの従業員満足度の話につながっているとお感じいただけるでしょうか?

 

では、従業員のやる気や満足度を保つためには一体何をすればよいのでしょうか?
ざっくり言ってしまうと仕事にモチベーションを持ってもらうということですが、モチベーションのコントロールのみを中心に進めてしまうと、従業員の心を見失うことになりやすいと思います。
第2回でモチベーション理論を利用するための目標を会社が提供するのは意外に難しいことであると記載しました。その一例を取り上げてみたいと思います。
仕事にモチベーションをもってもらうということですが、わかりやすい方法としては成果主義、実力主義があるかと思います。
その一例として、とある大手の店のケースから、考えてみようと思います。

その社は、成果主義制度で、アルバイトから入ったとしても、成果が上がれば、店長にも昇格できる可能性があるそうです、数字が評価に比較的直結するシステムであり、務めていた方の話によると、もちろん大いにやる気に貢献したとのことでした。けれども、意外にもこのシステム、モチベーションが長続きしないというのです。

話をしてくれた当人は、有力営業店の副店長にまで成れたそうです。もう一歩で同店の店長にもなれそうだったとのことでした。当然やる気を大変刺激されて一生懸命働いたそうで、自分が働くだけではなく、店舗内の人間のモチベーションにも配慮し、店舗の売り上げ上昇にも力を発揮したとのことでした。(がゆえに副店長にまでなれたのだとのお話しでした。)
しかし、この制度は上るのも早いが落ちるのも早く、現在の状況や地位すら、維持は大変難しとのことでした。
ですから、好成績を長く維持できている人間は少ないとのことで、務める店舗の当たり外れによっても、自分の努力が売り上げに反映できるかどうか違いを感じ、個人の能力、努力が評価にきちんと反映されているか、疑問に感じたり、どこの店舗に配属されるか、その時のメンバーがどんなメンバーであるかによっても左右され、自分の力が出せなかったりするとも感じていたようです。

また、店長になってしまうと、その先は、本社扱いで、エリアマネージャーになるそうですが、エリアマネージャーになれる人間はほぼ皆無とのことで、実際には店長止まり。また、必死に努力してきて確保している店長という地位も、さすがに長く無理をして維持することも難しいと思うと、長く必死に努力し続けるモチベーションはもてなくなったそうです。(もちろん給与にも反映しているシステムでもあるのですが、それでもモチベーションが維持しきれないとのこと)

つまり、モチベーションの起源を直接の成績と人事評価、報酬に制度に求めると、結果としてはモチベーションを長く確保することが難しいということになったわけです。

このシステムにはエリアマネージャーと、その下の店長までとの評価や待遇差が大きすぎることと、店長までの評価反映が早いが故、平均的力量での評価がされず、一時のパフォーマンスを引き出すことには成功しているが、長期に渡ってモチベーションをコントロールできる範囲を超えているという問題を抱えていると考えられます。
仮にその制度上で問題点を調整して対処したとしても、どこかに社内の制度との合致しない部分が露呈することになるのではないでしょうか?
働く人のモチベーションのグラデーションにあうように、社長からアルバイトまでの成果主義制度を作ることは、システム的にもかなり難しい(事実上不可能?)ことと、経営者の皆様はすぐにピン来ていただけると思うのです。

この例は成果主義を中心としただけでのモチベーションコントロールの限界を示していると私は考えています。
もちろん成果主義を中心としたモチベーションコントロールそのものを否定しているのではなく、成果主義そのものは、バランスよく上手に活用すれば、優れた制度であるとも思っているのですが、たとえ大規模に制度を導入したとしても、制度とのバランスとの問題も含め、人のやる気を長年にわたって仕事に向けることは難しいことを示した例だと思いました。

では、どのようにやる気を持ってもらうのか?という点ですが、基本的には、自分の人生設計もしくは、やりたいことと会社の目的を近寄せることであると考えます。その理解と実行には、キャリア学が有効であると思うのです。

資料

その一例をあげれば、エドガーシャイン教授のキャリアサバイバル、キャリアマネージメントという考え方の中などにも方法が示されています。
(余談ですが、私は、短い時間ではありましたが、アメリカにてエドガーシャイン教授ご本人よりの直接のセミナーを受講させていただいた経験がありますが、その際に日本のキャリアコンサルタントに足りないもの等を色々と感じたので、これも紙面(?)が許せば、次回にお伝えをしたいと思っています。)

従業員のやる気を、当人の人生設計と会社の方針との間で調整一致をさせ、長期間の能力向上を考え、キャリア育成という考え方から見た場合、長期に渡ったモチベーションを持ってもらうことも可能になることを感じています。そこから、個人個人に長期にわたって力量を発揮してもらうことが必要と考えていますが、経営環境は高速化しており、事業の体制変更は頻繁に発生するようになっている現代で、生涯雇用の確約も難しくなっているという側面も含め、いうほど簡単なことでは無いとも思います。

では、どのように、個人のキャリア育成と、個人の仕事や会社に対するモチベーションの維持と、会社の経営スピードとの間で調整を取るのかということですが、そのためには、従業員のキャリアの概念に柔軟性を持たせ、キャリアの育成を図る必要性があるのはないかと考えています。
そのためにも、社員教育の中で、十分なキャリア発達の概念を持った、育成役や相談役が必要であると思うのです。

柔軟性を持ったキャリアの概念とはどういうことか? ですが、つまり従業員が、何のプロになるか? ととらえています。

プロになるということは、しっかりとした専門性を持つことですが、例えば、事務でも、営業でも、

自社内的に上手になる = 自社内的プロフェッショナルである

と同時に、専門性を極めると、汎用性がなくなり、変化への対応力が下がるという側面もあります。

たとえば、営業職を考えたとき、業界のみの営業のプロは、他業界では、また覚え直しになります。
ご存知のように、法人営業と、個人営業、外商と店舗内営業でも、それぞれ求められるテクニックは違うからです。
でも、共通するキーポイントがあることにはお気づきいただけると思います。このことが理解できている人は、どの営業部署に行っても適合しやすい訳です。

最初から、こういった概念を持った上で、キャリア形成を行っていくことが、変化に対応しやすい体制を作るのではないでしょうか?
つまり、自分は何のプロになるか? 先ほどの営業の例で考えるとすると、業界営業のプロなのか、それとも、法人営業のプロなのか、営業全般なのか?
そこを意識したうえで、営業全般のプロ+自社業界独特の手法を手に入れることであるとの概念をもって、キャリア形成を行えば、将来の業態変化、業務変化の時にどの部分が利用できるスキルで、どの部分を磨き直せばよいか理解できるので、変化にも対応できる社員を育成できるのではないかと、とらえています。

また、全員が全員汎用性の高い能力に目標を置かなくともよいと考えます。会社には、専門のプロがいてくれることも必要とも思うのです。
ただ、専門を目指すことを決めるときに、専門であるがゆえに、専門の部門が会社からなくなる場合のリスクも理解した上で、選択してもらうとよいのではないでしょうか?
また、専門性を極める際にも、自分の専門性の転用性を含めて学んでおく、着目しておくことも可能です、その場合、転用性という考え方が当人たちの中でも育てば、会社全体としても、培ってきた能力の転用にいち早く着目することが可能になるかもしれず、これは会社の強みの有効活用につながりと考えます。

つまり、これからの経営には、顧客の観点から考える力、経済の側面から経営を考える力、人の側面(特に職業能力開発(発達)とモチベーションコントロール)に関係する概念も持っていたほうが強い会社を作れるのではないかということです。

上記の考えを実施するにあたっては、簡単なことではなく、やはり、心理学も駆使できる専門家がいたほうが良いとは思われます。そのための専門家とは、まさに、キャリアコンサルタントということになります。

ただ、会社との連携が重要になってきますので、可能であれば社員の方が良いのではないでしょか?
そして、会社を強くするためには、ただキャリアコンサルタント任せにするのではなく、会社との連携をとっていくことの必要性からも、キャリアコンサルタントは、会社を動かす力量も必要と考えます、つまり従業員本人へのアプローチだけではなく、会社や組織の考え方理解である外的キャリアや会社などの環境へのアプローチができるという部分知識、技量も必要であると考えています。

そして、実際に機能させるためには、キャリア学、やキャリアコンサルタントについて、経営側、上司等も少し知識、もしくは関心をもっていただきたいとも考えます。
会社の展開方針にもかかわるということは、読んでいただくとお気づきの経営者の方もいらっしゃるのではないかと思いますが、経営と関係する部分でもあるわけです。つまり、単に専門家として、キャリアコンサルタントに外部依頼をすれば済むわけではなく、一体に活動するという観点から考えると、経営陣にもキャリア学を学んだ(理解した)人間が必要であると思われるわけで。ゆえに社内での育成も視野に入れていただいたほうが良く、社員によるキャリアコンサルタントと記載したわけです。
もっと贅沢を言えば、上司になる人間は、キャリアコンサルタントの基礎学習をしておいて、決して損はないとも考えます。

ところで、当文章を読みながら、ドキッとされたキャリアコンサルタントの方もいらっしゃるのではないでしょうか? 果たして、すべてのキャリアコンサルタントが上記のことを専門家として実行できるのか、疑問な点もあります。
できないと思われるキャリアコンサルタントの方は、是非とも今後とも継続学習をしていただきたいというのが希望です。その必要な学習部分については、次回のテーマとしても取り上げたいと思っています。

心理学やキャリア学を、経営陣は勉強して損はないと思います。経営陣は、忙しいのに、そんなことをしている暇はないと仰る方も多いでしょう。ごもっともな意見とも思うのですが、けれども、この知識には十分なメリットもあります。なぜならば、以下のように考えているのです。

「経済学と心理学は、隣接地域」

なぜなら、人が経済を生み、経済が人の心に大きな影響力を持っているから。言い換えれば、

「お金とそれを扱う人の心が、お互いに影響しながら大部分を支配しているから。」

経済はお金、金は欲に近い存在。

人の欲は人の心理が強く反映している。

だから、人の欲は把握できれば、経済原理には反しないはずです。
そこには、資本主義で動く会社と人の心理は、必ずつながる部分があると考えています。

そんなわけで、私は、心理学を学べば、経済学をより強くすることができることから、経営にとって中核的知識の一つとなりうる可能性が強いと考えており、お忙しい中でも、経営者にとって学ぶことが損にならないと思うので、お勧めできるのです。

ここで、思い出されるのは、前回掲載させていただいた、木村 周 先生の「キャリアコンサルティングは、経営そのものです」と言うお言葉です。

ご興味をお持ちいただけたでしょうか?

もし、ご興味を頂けたのであれば、実際の導入にあたって注意点や、現在のキャリアコンサルタントの状況の解説、それを改善するために経営陣に是非お願いしたいことを次回にて記載させていただこうと考えております。

 


 

 

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