JAVADA情報マガジン4月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2016年4月号

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第一回 自社内のキャリアコンサルティングの実施の経緯、感想等

キャリアカウンセラー、ファイナンシャルプランナー、調理師、自動車整備士
  大野 利勝 氏 《プロフィール》 

わたくしは、観光宿泊行業を行う、有限会社ブルージュにて、マネージャーとして業務全般を携わってまいりました。
 当社は同一営業形態では老舗であり、35年を越える長年にわたり営業を続けていますが、観光業にありがちな、ハイシーズンとOffシーズンとの顧客数、業務量の差が多い営業特性から、従業員の短期雇用を繰り返すという側面があります、昭和の生涯雇用的な時代の中でもすでに、現代的な短期の契約で働いていただくと言うことを繰り返し長年行ってきており、その中から体験してきた部分で皆様にお伝えできることがあればと思っております。

また、経営側として勉強をしていく中で、縁あって偶然にもキャリア学に接する機会を得てキャリアコンサルティング技能士2級を取得、現在本業のOffシーズンを中心に、キャリアコンサルタントとしても活動をしており、その活動を通して得られたことなども含めながら、今回の記事を掲載したいと考えておりまして、今回のコラムでは、4回構成ということで、以下の内容について、取り上げていこうかと予定しております。

第一回 自社内のキャリアコンサルティングの実施の経緯、感想等
第二回 キャリアコンサルで、会社を強くするには? 実施のメリットとデメリット
第三回 実施に当たり、社内(社外)キャリコンの現状と能力の問題について
第四回 会社がすべきことと、担当者(キャリコン)が身に着けるべき力について

自己紹介にも、簡単に記載いたしましたが、弊社は、新潟県のゲレンデの近くにて、ウィンターシーズンを中心とした宿泊施設を運営しております。
 シーズン性がとても強いエリアで、ごく近年までゲレンデがクローズしてしまうと、ほぼお客さまが居ないと言うエリアでした。
 昔は、当社も冬季のみの営業で、現在も夏季と冬季では、お客様の数が違う状況があります。故に、通年で継続的に人材を確保することには無理がある営業形態で、冬季のみピークに合わせた形で人を雇い入れることを、長年繰り返して来ております。

その大半は、学生の住み込みアルバイトと言う形態を中心に賄って来ておりますが、そんな中でも、リーダークラスの人材は、やはり冬期に繰り返し働いていただいた形になっておりました。もちろん、年間雇用をしていたメンバーもおります。
 その場合でも、残念ながら高額な給料を年間支払い続けることは困難で、能力に見合うだけの給金をお支払いすることは、できていなかったであろうとも考えています。

そんな好条件とは言い切れない職場に長らく働いてくれた方々が、なぜいたのか? その魅力となった一因は、キャリアコンサルティングにあったのではないか?とも思うのです。

まずは、なぜキャリアコンサルティングを行い始めたか?ですが、

当社での雇用形態は、シーズン中、なぜ住み込みで働いていただくケースが大半だったかといえば、当社の就業の形態は、開業当初から永らく、エリアの一般的な宿泊営業の形態とは、違っておりました。
 私どもの営業エリアでは、当時、和風での展開がほぼ大半で、当社は洋風の展開を行っていたため当該のエリア内で働き手を求めても仕事の内容に対応ができないという理由で嫌がられるケースが多く、確保が難しい状況にありました。
 したがって、関東域から人を集めることとなり、住み込みで働いていただくと言う形がほぼ大半でした。

住み込みで働いていただいていることもあり、従業員とは長い時間お付き合いをするケースが多く、いろいろなお話を伺う機会も多かった業態です。
 この際に、楽しいお話や、皆さんの将来のお悩みの話などもいろいろと伺う機会も多く発生いたしました。

そのような職場がゆえ、学生さんで数年間来てくれたがたがたは、卒業に近づくにつれ、夢や進路の話なども沢山してくれていました。

このような形で、キャリアカウンセリングという概念を持つ以前から、従業員の人生相談に乗ってきたというのが始まりです。

話の内容については様々でした。もちろん、仕事やキャリアに関係のない悩みも沢山含まれていました。
 一例を見ると、趣味の話し、恋愛の悩み、学校の話、思想信条(宗教)の話や悩み、などもありました。もちろん、キャリアに近い、進路、お金、独立に関する悩みや話、将来の仕事に対する悩みや、人生の夢の話など色々としてきました。
 話は必ずしも、悩みの相談と言う訳ではなく、雑談的に話していくうちに、悩んでいることなどにつながっていくケースが多かったように思います。

こういった中で、長く働いてくれた人、長く付き合いが続く人たちは、楽しんで働いてくれた人たちや、当方の仕事のスタイルと人生の目的が一致しやすい内容が多く合った人たちが、多かったように思われます。

雇用時から、興味や流行で雇用先を当社に決めた人間よりも、やはり目的感を持っていた方々、たとえば、将来宿泊施設を経営したいという独立的意向を持っている人や、スノーボード、スキーなどの技術向上を目的に、シーズンの居場所と収入源を確保したいといった意識を持っている人が、より長続きしたということだと思います。
 上記のような考え方は、入社時からなくとも、働いていく中から、形成されてきたケースもあります。
 このような目的感を持った方は、仕事に対する目標を同一にしやすく、比較的仕事に対して、モチベーションも持ちやすかったのではないかと感じています。

キャリアの学習をしてみると、ここでやってきた事が、キャリアカウンセリングが含まれていたと気づかされました。

現在では以前のような人生相談だけではなく、もう少し洗練された形でキャリアコンサルティングという形態も導入しておりますが、人生相談的な相談は今も続けており、その発展として、必要なある時点で、キャリアコンサルティングの形式に切り替えて行うという形にて実施しておりますので、社内で制度的にきっちりとした形でのキャリアコンサルティングを行うというものとは少々違うものかもしれません。
 しかし、考え方や効果につきましては、制度的にキャリアコンサルティングを行う会社様にも参考になる部分があるのではないか?と考えております。

このような流れから当社では、自然にキャリアコンサルティングを行う雰囲気が発生してきたわけで、一般の会社の感覚から考えると大変特殊な形態といえると思います。

ただ、この中から感じてきたことは、使い方が正しければ、キャリアコンサルティングは、会社と従業員の結びつきを強くし、ひいては会社を強くすることができる。と感じている次第です。

ただし、キャリアコンサルティングを行うことで、不利益もあるとは思っていますが、そのことはキャリアコンサルティングを行わず当面表面化しなかったとしても、会社の中で、いずれ違う形で問題として内包し続けたり、噴出したりする原因になりやすい事柄であるとも考えられるのです。

このあたりのお話につきましては、次回のテーマである

第二回 キャリアコンサルで、会社を強くするには? 実施のメリットとデメリット
という部分にて、記載させていただきたいと思います。

さて、キャリアコンサルティングや人生相談を受けている中で、私がひとつ注意していることがあります。
 それは、枠組みという事柄です。

人生相談からの発展的、キャリアコンサルティングと記載しましたが、やはり、枠組みという事柄は重要で、今の状況は知り合いの人生相談なのか、上司と部下なのか、キャリアコンサルティングを行っているのかは、自分側でけじめを持って切り替えています。それぞれの中では、役割が違いますし、範囲も立場も違うからです。本来は、二重の関係というのは好ましくなく、分離すべきですが、分離できなければ、立場ごとに矛盾があっても、各々のその立場から考え、発言の立場を伝えながらキチンと話をすることと、それでも切り分けができない場合は、その先の部分はリファーを行うつもりで、話をしています。
 切り分けができない状況になりうるのは、やはり相手側にとって別の役割(たとえば上司)を持っている場合で、それが原因となって発言できない部分などはなからずあるため、そこがうまく回らないケースの要因になります。 関係性の特殊性から生じるもので、このあたりに関しては、私がカウンセリングや相談を行ううえで気をつけている部分でもあります。
 このあたりの話は、

第三回 実施に当たり、社内(社外)キャリコンの現状と能力の問題について
第四回 会社がすべきことと、担当者(キャリコン)が身に着けるべき力について

でも関係する話となりますので、そのあたりで、もう少し詳しく記載させていただければと考えています。

 


 

 

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