JAVADA情報マガジン10月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2013年10月号

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キャリア相談のありかたをスタイルでとらえる(3)
 ~キャリア・コンサルティングの状況的アプローチという考え方~

HRDファシリテーションズ 代表 大関 義勝 氏 《プロフィール》 
 (前・キャリア・コンサルティング協議会理事・事務局長)

5.キャリア・コンサルティング・スタイル  
  ~クライエントへの接し方を振り返るために~

キャリア・コンサルタントには、ガイダンス機能、カウンセリング機能、エデュケーション機能、コーチング機能、ヘルピング機能、アセスメント機能、コンサルティング機能など実に様々な機能が求められ、クライエントの状況によってそれらが渾然一体となって意識的あるいは無意識的(反射的)に使っている。

とりわけ無意識的に使っている機能は、そのキャリア・コンサルタントがよくとりがちなスタイルとして表出し、本人は気づいていないが周囲からは、「あの人のやり方だ」と捉えられがちとなる。

たとえば、解決を急ぐ課題を抱えるクライエントに対して、自分が推察した方策が外れて関係が壊れることを心配し、傾聴を踏襲することが安全第一とばかりに具体的な方策を提示せず、結果として互いがもどかしさを感じたり、やるべきことを先送りしてしまうことがあるが、キャリア・コンサルタント本人は「今日はうまくいかなかった」と処理してしまい、それが自分のスタイルとして定着しているとは感じていないことがある。

一方、自分では傾聴と思い込んでいる“事情聴取”をした後、クライエントの気持ちの整理を置き去りに表面的な課題に対してたちどころに解決策を導き出して、こうすべき・こう考えなさいと自分の使える道具を押し付けてクライエントを不承不承の状態にしてしまうようなこともあるが、これも自分のパターンであるとは気づきにくく、先輩からの注意やスーパービジョンで指摘されて、そんなはずはないと考えたりする。

あるいは、どのようなクライエントにも「キャリア・シートの作成」と「職業興味検査の実施」、そして「職業情報検索システムの利用」を“万能キット” として実施させれば道は開けるとばかりに半ば押し付けてしまうような場合では、それを意識的にしているけれどクライエントをミスリードする懲りないキャリア・コンサルタントとなっている。

クライエントの立場に立てば、置かれている状況やレディネス(気持、意識、経験、知識などのレベル)によって、キャリア・コンサルタントの関わり方が千変万化することは明白である。しかし、キャリア・コンサルタント自身の“振り返らない経験”やスーパービジョン経験の無さは、知らず知らずに偏向的でパターン化された自分固有の対応スタイルとして定着しがちである。ジョハリの窓で説明されるように、想っている自分と想われている自分には多少なりともズレがあることを、キャリア・コンサルタントであるならば意識しておかなければならない。

 

6.さまざまな状況的アプローチのイメージ
  (状況変化に対応してスタイルを変える)

 

 

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