JAVADA情報マガジン10月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2022年10月号

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「キャリア・シフトチェンジのためのワークショップ」の現場から(3)

ディーリンクス代表、キャリアコンサルタント 池元 正美 氏 《プロフィール

【これからのキャリア・シフトチェンジのためのワークショップへの取り組みについて】

私が担当する記事としては今回が最終回になります。今回は今後のキャリア・シフトチェンジのためのワークショップ(以下CSCワークショップ)の開催意義と展開について、私が考えていることを書かせていただきます。

 

【CSCワークショップに取り組む意義】

これまで私がCSCワークショップを担当してきた経験で、このワークショップに取り組んでいくことについて個人と組織とのそれぞれの立場からの意義を考えてみました。

 

<個人が取り組む意義>

人生100年時代を迎え、私たちの仕事人生も長く多様になってきました。また、DXの推進により今後さらに技術革新が進んでいく中で、私たちが働く環境も激しく変わっていくと思われます。2020年から続く新型コロナウィルス感染症の広がりの影響もあり、働き方そのものも、働く上で大切にしたい価値観も大きく変化しているのではないかと感じています。

長く続く仕事人生をより充実させ納得のいくものにしていくには、働く環境や自らの役割の変化に適切に対応し、現在持っている能力を活かし、さらに必要な能力を学び、身に着けることが重要になってくると考えています。

そのためにも仕事人生の節目節目において、自らの能力を冷静に点検し、主体的に学び直しを行い、新たな能力を獲得していくことで、将来にわたって活き活きと活動していけるのではないかと思うのです。

自分はどこに向かっていくのか、どんな能力が必要なのか、どうすれば必要な能力を獲得できるのかといった視点で考え、これからのキャリアを積み重ねていくことが必要です。CSCワークショップを体験することで、自分を活かす土台となるプラットフォーム能力についての理解を深め、具体的な行動計画を立てていくことで、将来に向けて自信をもって準備に取り組んでいけるのではないかと感じています。

 

<企業・組織が取り組む意義>

これからの日本社会にとって、今後ますます労働者が減少していくという状況は、ほぼ現実のものとなりそうです。現在でも業種や職場の規模によっては恒常的に人手不足が起こっています。その結果、今後安定的に必要とする人材を確保していくことは組織にとって重要な課題になっていきそうです。

私が関わらせていただいている組織において、この課題に向き合う際に重視している視点は「その組織がどんな人材を必要としているのかが明確になっているのか」ということです。組織の目標や理念を実現するために、期待する役割や水準はもちろん、思考特性や行動特性、仕事における価値観、知識・技能なども含め、具体的にどのような能力を持った人材が必要なのかを明確にしておき、そのような人材をどう確保していくかという戦略を持つことが重要なのではないかと思います。

まず取り組んでいただきたいこととして、現在働いているシニア世代の方々の能力を点検してもらい、それぞれが将来の仕事人生について何を求め、どう向き合おうとしていくのか、どのような課題があるのかなどを個人と組織が互いに理解しあえる環境を整えることが重要と考えています。その上で働く人が日々の業務において、自らの能力を高めることを意識しながら向き合うことで、組織内での人材発掘や獲得、さらに組織の活性化にも資するのではないでしょうか。

また、外部から必要な人材を獲得する際にも、選考基準や人材像が明確になり、お互いにとって良い採用へとつながっていく可能性もありそうです。特に、人材開発や人材管理部門にとっては、組織としてCSCワークショップに取り組み、プラットフォーム能力という物差しを通して観ることで、シニア世代が持っている経験や能力・課題への理解が進み、人材育成や適材適所の実現にもなると考えています。

 

【プラットフォーム能力についての私の考え】

私も含めシニア世代は仕事人生における経験や自己研鑽、成功体験などから獲得した自分なりの仕事の進め方やスキル(CSCワークショップでは「自分型」として紹介されています)があると思います。一方で、情報技術や仕事そのもののやり方の変化に伴って自分が身に着けた自分型のスタイルだけでは成果を出しにくくなる場面もありそうです。

自分が所属する組織内の限られた環境の中で通用したとしても、新しい環境や地域社会においても必要とされ、能力を発揮し続けて行くためには、必要に応じて自分の能力をアップデートして行くことも重要になってきます。自分の能力について、維持し伸ばしていくものと、新しく獲得すべきものという視点で点検することが必要です。そして、点検していく上での手掛かりとしての【プラットフォーム能力】という考え方が参考になります。

プラットフォーム能力は変化対応に必要な基礎的な能力で、以下の3つの能力からなっています。

(1)【態度】<インストラクターガイドでは「"私(わたし)"創造力」>
過去の実績や成功体験にとらわれず、新しい環境において前向きに取り組んでいくこと。つまり、自分の役割や周囲の環境変化に適切に対応できるよう、目の前の事実を冷静に受け止め、その中で自己理解を深め、本質を見極めること。さらに自ら自分の行動を適切に変え、居場所を作りだすことが必要です。

(2)【行動】<インストラクターガイドでは「"お仲間"構築力」>
周囲の人と自然体で接することができる。その上で周囲の人に適切に働きかけ、共感力や適度な距離感を保つことができる。また、自発的に人との交流機会を作り、適切な自己表現、積極的に働きかけたり交流の場を築いたりすることができ、人との関係性を適切に維持発展できます。そのことでチャンスにもつながりやすくなっていきます。

(3)【スキル】<インストラクターガイドでは「"お一人様"仕事力」>
自分の仕事を自分自身で完結することができる。そのためには、フットワークの軽快さや時代に応じた情報リテラシーを持ち、的確な段取りが出来ることで、様々な業務に対して成果を出すことになりそうです。

以上のプラットフォーム能力について自己点検し具体的な行動計画を策定することで、これからの仕事人生を前向きに考えることができるのではと思います。そしてプラットフォーム能力を土台とすることで、将来において活き活きと自分の持ち味を発揮できるようになっていくのではないでしょうか。

 

【CSCワークショップの普及に向けて】

私は、シニア世代だけでなく、働く人々にとって自らの仕事人生を活き活きと展開していく上でCSCワークショップが重要な機会となっていくのではないかと考えています。そのためにも、これからもCSCワークショップを広げていく活動に取り組んでいきたいと考えています。

現在、JAVADAでは定期的にCSCワークショップインストラクター養成講座を開催しております。私のキャリアコンサルタント仲間にもインストラクターが増えており、今後は地域においても共に活動していければと思います。

また、新型コロナウィルス感染拡大により、CSCワークショップもオンラインによる開催も増えてきつつあります。私自身も、以前からオンラインでの実施が出来ればと感じておりましたが、今年4月からインストラクター有志が中心になり、SNS上のCSC自主勉強会が立ち上がりました。私もお誘いいただき参加させていただいております。グループでは、ワークショップの開発者である山﨑先生のご協力のもと、オンライン形式でのワークショップ開催のポイントや必要なスキルなどを学ぶ場が開催されました。

現在は、オンラインを活用して、参加者自身がインストラクターとして開催するためのトレーニングの場として継続的に活動しています。参加者は立場や経験も年齢も異なりますが、CSCワークショップというコンテンツを通して出会い、支え合える仲間が出来たことで、とても心強く思っています。今後もCSCワークショップを通して、キャリアコンサルタントとしての活動に取り組んでいきたいと考えております。

 

今回で3回にわたる私の担当は最終回となりました。最後までお付き合いくださりありがとうございました。

 


 

 

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