【私のキャリア・シフトチェンジのためのワークショップへの取り組み事例】
今回は私がキャリア・シフトチェンジのためのワークショップ(以下CSCワークショップ)の実施を担当している企業の事例をご紹介いたします。
【南国殖産株式会社における事例】
南国殖産株式会社は1945年設立。鹿児島を拠点に九州一円に事業展開する総合商社です。
<CSCワークショップ導入のきっかけ>
当時、私は鹿児島県職業能力開発協会においてキャリア形成サポーターとして活動しており、その一環で取り組んでいた企業の人事担当の方々向けの研修の場で、南国殖産株式会社の担当の方と面識を持つことになりました。そのようなご縁から企業訪問をさせていただいた際に、シニア世代の社員に関するキャリア開発上の課題についての話題の中からCSCワークショップの実施へと繋がっていきました。
<企業側の状況>
その当時から定年退職者に対する再雇用が推進される中、人事教育担当部署において、それまでの役職定年後の「キャリアアップ制度」から役職定年を迎えた方々の働き方やモチベーションの維持について課題を感じており、シニア世代の社員それぞれが、主体的に自身の仕事人生を振り返り、日ごろから準備をしてもらうための環境づくりについて、研修も含めて取組んでいきたいと考えていらっしゃいました。
そのような状況の中で、CSCワークショップについてのお問い合わせをいただき、数回の打ち合わせを重ねながら第1回目の開催へと進んだのです。
<実際のワークショップの構造>
担当の皆様と打ち合わせしていく中で、単にワークショップだけを実施するのではなく、企業側としての意図や目的等についても参加者に説明し、理解を深めていく必要もあるということで、
(1)南国殖産株式会社の定年後に関する制度の仕組みの解説(担当課長より)
(2)人生100年時代における社会の変化と個人としての向き合いかた(池元より)
(3)CSCワークショップの実施
といった内容でプログラムを企画しました。
<ワークショップの実施概要>
*実施年度:2015年に第1回目を実施。以降年1回実施しています。
*参加者:グループ会社も含め、対象年齢の社員に対して総務・人事統括部人事教育課から声掛けののち決定。管理職・非管理職などの立場に関係なく実施しております。
*ワークショップ参加者
2015年24名(55~59歳) 2016年18名(55~59歳) 2017年22名(53~56歳)
2018年17名(52~55歳) 2019年16名(51~53歳) 2020年16名(52~54歳)
2021年15名(52~53歳) 過去7年間で合計128名が参加
企業側がワークショップ実施にあたっては以下のような目的・目標、期待すること等がありました。
【目的】参加者が役職定年後及び定年後の給与、待遇について事前に理解し、そのための準備・心づもりをしてもらう。
【目標】役職定年後及び定年後もこれまでのスキルや経験を活かしてモチベーション高く持ち、会社で貢献できる人材となる。
【特に期待していたこと】参加者自身がプラットホーム能力について理解・認識し、自らリスキリングを行い、後進の見本となり、同時に後進育成にも取組み、定年後も企業の戦力として活躍し続ける人材となることを期待している。
といったことが挙げられました。
南国殖産株式会社に限らず、一般的な傾向として、企業で働く上で役職定年後や定年後の処遇に関する人事制度の仕組みは知っていたとしても、自分のこととしての実感を伴っていないことが多く、いざ自分自身について定年が現実となり、その後の仕事人生を考え始める段階で、不安や不満を抱き混乱する人も多いのではないかと感じています。
私としては、このワークショップを通して参加者の皆さんが
*年齢とともに自分自身の求められる役割が変化して行くことを理解する
*役割の変化に応じて、必要とされる能力も変化していくことを理解する
*自らの能力を再点検し、これからも業務で価値を創出し続けるために必要なスキルを知り、どのようにして獲得していけばいいのかを考え、準備できる
などを目標において取組んでいます。
<CSCワークショップ実施後の課題や成果>
今回の記事の執筆に際し、企業の担当の方にCSCワークショップ実施後の状況や課題、成果についてお聞きしたところ、以下のような回答を得ました。
【課題】まだまだキャリア・シフトチェンジについて、ネガティブな捉え方をしてしまう社員が多いと感じている。
【成果】役職定年前に実施することで、それぞれのキャリアに応じた今後の立場や役割等の変化について、現状を見直す機会となったとともに、キャリアプランだけでなくライフプランについても計画的に考えるきっかけとなったと考えられる。
今後は、ワークショップの参加対象年齢を引き下げて、より早い段階で、将来に向けての準備期間を取れるようにしていきたいと考える。
<今後の方向性について>
最後に、CSCワークショップ導入に関連する人事制度上の対応や再雇用者への処遇などについてもお聞きしました。
【担当者】今後は、段階的に65歳までの再雇用の要件緩和を行い、2025年以降は、希望すれば65歳までの継続雇用が要件無しで可能となるように取り組んでいく。
定年後も、長い期間にわたって能力を発揮し、働き続けるためには、個々のプラットホーム能力の向上やスキルアップが求められるため、よりキャリア・シフトチェンジの必要性が高まると考えられる。
また、CSCワークショップを継続していくことで、今後加速する少子高齢化による労働力不足解消のためにも、企業側としてはより継続して社員の雇用を維持できるとともに、社員にとっても継続して働き続けることで老後の資産形成に役立てることができる環境づくりに資するのではないかと考えている。そのような環境を整えていくことでお互いにとってwin-winの関係を築いていくことにもつながるのではないか。
<今後の企業への取り組みとして>
今回、この記事を書かせていただくにあたり、南国殖産株式会社における今までの取り組みを振り返り、また担当の方々とのやり取りをさせていただく中で、企業がキャリア・シフトチェンジのためのワークショップに取組んでいく意義を考えていくきっかけになりました。
私が活動している鹿児島県内の企業は中小企業が多く、今回の南国殖産株式会社のように毎年対象年齢の方々が一定数いらっしゃる企業は少ないのではないかと感じています。
今後は、中小企業で働くシニア世代の皆さんが自身の仕事人生について振り返り、組織を離れたとしても活き活きと活躍していくために準備するための環境づくりとして、このCSCワークショップを企業横断的に開催できるような取り組みを進めていきたいと考えております。
次回、第3回目では変化の激しいこれからの社会における働き方に合わせたCSCワークショップ開催に向けて私が取り組んでいきたいことをお伝えできればと考えております。
今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
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