JAVADA情報マガジン4月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2019年4月号

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企業タイプ別 女性のキャリア形成支援(1)

株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門マネジャー
   織田 真珠美 氏 《プロフィール

女性活躍推進法をきっかけに企業の対策が進み、子育て期の女性の就業率や、役職者に占める女性の割合等、女性の活躍を示す数値は向上している。各社が更なる女性活躍を進める中、女性のキャリアは多様化している。今回は企業のタイプ別に、女性社員が直面している課題や悩みを整理して、二回に分けて解決の方向性を示す。

図は企業の女性の割合(横軸)と平均勤続年数(縦軸)に着目し、記号で各区分の今後の女性活躍の進め方を示したものである。

今後の女性活躍の進め方

本稿では、「Ⅰ.女性は少なくすぐ辞める」「Ⅱ.女性は多いがすぐ辞める」の区分について、各企業の特徴と女性が抱えやすいキャリアの課題を確認する。

 

Ⅰ.女性は少なくすぐ辞める

女性社員の人数が少なく定着率が低い企業では、まずは女性の採用増加ではなく女性社員の定着率向上が必要だ。

女性社員自身の業務上の課題として、周囲の助けを引き出さず独力で対処する傾向が見られる。また、周囲が長時間の残業を前提として、体力差や経験の差等を考慮せず仕事を与えるケースや、その反対に、重要な仕事を任せず簡単な仕事を与えるケースもある。結果、女性社員が仕事を抱えて業務が滞る他、長時間労働の結果として体調を崩して辞職するケースと、当社において成長しキャリアを積むイメージを持てず、転職するケースが見られる。

定着率向上のためには、労働環境や組織風土の見直しが有効だ。このような企業に就職した女性社員の特徴として、学生生活を通じて優秀で、男女差を感じることなく過ごしてきて、女性社員が少ないという職場環境に対する不安よりも、就業を通じて実現したいことを優先して就職先を決めている場合が多い。離職する社員の特徴として、社内に相談できる相手がおらず、悩みを抱えたまま状況を悪化させてしまう事が多い。このような状況を防ぐためには、相談相手を作る事が有効である。業務に直接関係ない内容も相談できるエルダー制度の整備や、社内の人間関係を円滑にする人材交流の機会を設定する事が考えられる。この場合の相談相手は女性社員に限らない。また、女性特有の悩みを共有し、自分たちのキャリアを考えさせる意味で、他の事業所にいる女性社員の情報交換の場を設けることも有効だ。

 

Ⅱ.女性は多いがすぐ辞める

女性社員の人数は多いが定着率は低く、定着率の向上が必要だ。このような企業に就職した女性社員の特徴として、公私共に女性に期待する役割を引き受けることを当然と捉えており、そもそも家庭の事情を優先しやすい環境にある。また、女性社員は多いものの、長期にわたり勤続する社員は少なく、社員は将来にわたって当社で働くキャリアを描くことができていない。そのため、結婚や出産、夫の異動を機に離職するケースが見られる。

まずは、女性社員自身のキャリア観の変化を促すことが重要である。働くことを通じて得られる人間的成長や、自立した生活を送る手段を確保できる意義を踏まえて、出産・育児・介護といったプライベートの事情を原因に仕事を諦めないように働きかける事が重要だ。前提として企業には、プライベートの変化に関わらず、長く働こうと思える職場づくりが求められ、長時間労働の是正や、職場風土の改善、就業を継続しやすい支援制度の充実が期待される。

 

 

定着率が低い(「Ⅰ.女性は少なくすぐ辞める」「Ⅱ.女性は多いがすぐ辞める」)企業の場合、女性社員は社内に相談できる相手がおらず、悩みを抱えたまま状況を悪化させてしまう事が多いので、フォーマル・インフォーマルを通じて相談できる相手を作る事が有効である。女性社員はいわゆる一般職(限定社員)だけでなく、総合職においても、異動の経験が少なく社内の人間関係が限られる事が多い。まして、女性社員同士のつながりは部署内の限られた社員に限定されがちである。結果、課題が見過ごされたり、社員の不満が蓄積したり、社員間の交流があればよりスムーズに進んだ業務が進まないといった業務上の支障に繋がる。企業としては、女性社員の集合研修やダイバーシティ連携推進室主催の会合を開催して、女性社員が抱える課題を共有すると共に、事業所見学会や食事会等の交流の機会を設ける取組が有用だ。これによって、女性社員特有の課題を把握すると共に、社員同士が親近感を持ち、コミュニケーションをとりやすい状況が生まれる。

これに加えて、職場環境の改善や就業を継続できる支援制度の充実が期待される。勤務時間や勤務地の柔軟性が高い職場は、就労を継続しやすい環境といえる。例えば、夫の異動を機に離職するケースでは、一定の条件の下、別の拠点に異動の申請を認める等して、継続して働き続ける事が出来る仕組みづくりが有効である。人材配置に余裕が無い、あるいは拠点が限られる等の理由で、柔軟な対応が難しい企業では、一度離職してもプライベートの事情が落ちついた時点で、職場に戻ることが出来る制度を作ることが有効となる。

次回は、「女性は少ないが活躍」「多くの女性が活躍」「管理職として活躍」の各モデルについて整理する。

 

 


 

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