JAVADA情報マガジン12月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2018年12月号

←前号 | 次号→

「職場でキャリア面談」のススメ ~ ふだんづかいのキャリア開発
その1~これ以上面談増やしてどうするつもり?

経営人事コンサルタント、有限会社キャリアスケープ・コンサルティング代表
   小野田 博之 氏(http://career-workshop.info/) 《プロフィール

これから4回にわたって、職場でのキャリア面談について、その目的や期待される効果などについて説明したいと思います。ここでいうキャリア面談とは「上司と部下など職場(仕事)を同じくするメンバーで、対象者の中長期の仕事人生(Career)の展開の方向性について話し合い、当面の業務や中期長期の能力開発に活かせる情報を共有すること」としておきます。

【この上さらに新たな面談を?】

職場ではすでにいろいろな面談が行われていることと思います。特に人事評価に関わる面談は、期の初めに目標設定面談、中ほどでは設定した目標の進捗を確認する中間面談があり、評価前には振り返りを目的とした面談、そして評価結果が確定すればそれを伝えるフィードバック面談があります。評価の対象期間が半年だと、目標設定と中間面談がそれぞれ2回ずつ、さらにフィードバック面談が賞与用と昇給・昇格用に分かれていればこれで3回、合わせて年間9回は面談をしているわけで、管理職の中には「面談が仕事になっている」と嘆く方もいらっしゃるかもしれません。組織のフラット化で部下が増え、プレイングマネジャーと言われて部署の業績責任を負わせつつ、不足分は自分でと自身の業績責任も担わせている組織ではなおさらのことでしょう。名ばかり「働き方改革」で「ともかく社員の時間外は不可」という条件まで加わるとなおのことでしょう。

そんなところへ、「キャリア面談も上司がすると良いですからね」、とお勧めしても、管理職からは「この上さらに新しい面談を押し込むつもり?」と反対されそうです。制度を推進している人事部門の方々からも、「理想はそうですが、これ以上現場に負荷をかけられなくて・・・」といわれそうです。

 

【キャリア面談実施率は44%だけど】

一般財団法人労務行政研究所の調査では、現場の管理者がキャリア面談をしている割合は44.3%とほぼ半数に至っています。意外に普及していると思われるかもしれません。ただ、調査方法が異なるので一概に比較できませんが、先のフィードバック面談の実施比率が96.3%であることと比較するとまだまだ余地があるといえます。懸念されるのは、フィードバック面談が9割を超えるまでに普及してはいるものの、評価に対する満足感、納得感の向上を人事制度上の課題として取り上げる組織は少なくないことです。これを考えるとキャリア面談の方も「実施している」という数値ほどにはその効果は現れていないかもしれません。

実際、取り組んでいる上司サイドからは次のような声が聞かれます。
「目標設定やフィードバック面談は伝えることや確認することなどすべきことはっきりしているからやりやすいけれど、キャリア面談は中期長期の話なので曖昧になりがち」
「1年に1度話をするといっても希望がそんなに変わるわけでもないから、話題には出すけれど『前にこう言ってたけど変わらないよね』『はぁ』みたいな感じで、ものの数分で終わるかな。本人もそれほど考えている様子ではないし」

また次のような悩みも聞きます。
「担当業務の変更ならまだしも、そんな先のことは約束できない。『これがやりたい』と言われても、組織の都合もあってなかなか実現できるわけではないし、そもそもそうしたことを決める権限はない。言われて困ることになるので、ぼんやりとしたところで話を終わることになる」

せっかくの機会を活かせないままにしておくのは残念な話です。キャリアについて相談するのは、職場の上司ではなく、たとえばキャリアコンサルタントをはじめとする専門家に任せておくのがよいのでしょうか?そもそもキャリアを考えるということは個人的なことなのだから本人に任せておくのがよいのでしょうか?

 

【キャリア面談と人事評価面談の本質的な違い】

本稿は職場で上司がキャリア面談をすることをお勧めすることが主旨なので、先の問いについて答えるなら、上司が相談に乗ることは専門家にはないメリットがあるので、未導入の6割の組織も含めて上手に運用してほしいということになります。ところで「キャリア面談」については、少し補足しておいた方がよいことがあります。

「面談」(あるいは「面接」といってもほぼ同様かと思います)という言葉を使うせいか、キャリア面談はその他の面談、特に目標設定面談と同じように、「特定の時期」に、「全員」に実施するものというイメージがありはしないでしょうか?とくに人事部門が主導して導入するときは、「会社全体での運用、実施」を考えて仕組みや制度を整えるので、こうした傾向がより強くなります。しかし、ことキャリア面談においては、現実にはこれらの要素を意識しすぎると却って形骸化しそうです。

そもそもキャリア面談は、目標設定面談など人事評価制度に関わる面談は前提が異なります。人事評価制度は1年または半年をサイクルとして統一的に実施する必要があるものです。それは事業計画が1年、半年単位で設定され、それに合わせて評価を行い昇給・昇格や賞与支給するからです。また、このときの評価内容は事業計画を反映させることが経営上効果的であるので、本人が意欲を持って取り組めるように、またその取り組みがあらぬ方向に向かってしまって時間と才能の無駄遣いになってしまうことがないように足並みを揃えるよう、時期を決めて全員を対象に実施することで効果の発揮を図ります。

また、人事評価面談の主体は組織側にあります。仮に組織(具体的には上司)の意図と本人の希望の間に溝が生じていた場合、最終的には組織の都合が優先されることとなります。

これに対してキャリア面談の方は期首でなければならないという必然性はありません。むしろ、人生における転機はいつ訪れるか分からないことを考えると、期間を決めて全員を対象に実施するよりも、むしろ期間を通じて、必要度の高い人を中心に、場合によっては実施頻度に差があることも双方の了解のもとにむしろ良しとされるものとなります。桜散る公園で恋に落ちて電撃結婚、ジューンブライドを実現し、年度末には育児休業が視野に-ということも有り得ます。個人を取り巻く状況は会社の事業年度とは異なるリズムで変わりますから、そのタイミングは自ずと異なるのです。従ってキャリア面談のテーマは人によって異なりますし、キャリア(仕事人生:Working Life)に留まらず全人生(Total Life)にも及ぶことになります。ここでは時期も内容も、そして意思決定も個人が主体となります。キャリア開発は個人主導が前提なのです。

 

【個人主導のキャリア面談】

「ちょっと待ってくれ。目標設定面談とキャリア面談は同時に実施するのが普通なのでは?」と違和感を持つ方も少なくないのではないでしょうか? 人事評価制度に関する書籍でも、キャリア開発に関する書籍でも「目標設定に当たっては本人の中長期のキャリア目標を意識する」という記述が見られます。本人のキャリアプランと、これから取り組もうとしている日常業務上の目標との間に整合性があることが、モチベーションの喚起に寄与することが期待できるからです。

ここで考えておかなければならないことは、当然と言えば当然のことですが、「目標設定のときに中期長期キャリアを考慮する」ということと「中期長期キャリアをテーマとした面談を実施する」ということとは別のことであるということです。大切なのは、部下が今後のキャリア開発についてどのように考えているかを目標設定の前提として考慮できるよう、あらかじめ相互に理解していることなのです。考え方を共有しているということであって、同時に実施することが大切なのではありません。

特にキャリア面談の方は、先に記したように、個人の状況は事業年度とは関係なく変化していくので年に一度では間に合わない人もいれば、ここ数年はあまり変化しないという人もいます。また、キャリア面談という場を設けなくても自ら相談を持ちかけてくる人もいれば、いろいろと話しかけてキャリアについて考えること自体を支援しなければならないという人もいます。こうした意味でもキャリア面談は、その情報を目標設定面談に活かすことは前提としながらも、別のタイミングで行う方が効果的でしょう。

今回はキャリア面談と人事評価制度に関わる面談との考え方の違いを説明しました。次回は実際に、どのように進めていくのかについて考えてみたいと思います。

 

 


  • 労務行政研究所編「これからのキャリア開発支援 企業の育成力を高める制度設計の実務」222p。同社のホームページ「WEB労政時報」に登録している民間企業から抽出した人事労務担当者9,024人を対象とするWEBによるアンケート。169社が回答(1社1人)
  • 労務行政研究所「人事労務諸制度の実施状況【前編】」(労政時報第3956号、42p)。全国証券市場の上場企業3,830社と上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上または従業員500人以上)3,909社が対象。440社が回答。

 

前号   次号

ページの先頭へ