JAVADA情報マガジン2月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-
◆2018年2月号◆
大学生のキャリア形成支援について |
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1.はじめに日本は少子化の波が押し寄せて、選ばれる大学を目指し、大学経営存続を考えなければならなくなった。学生が多数の中から大学を選択する基準として、大学生活を飛び越えてその先の就職率や就職先を検索し、またよりよい就職活動ができるように、多数の就職講座や資格取得講座の設置されていることが大学進学志願者の選択理由のトップになっている。また、学生本人だけではなく、彼らの保護者が納得する就職へのカリキュラムを大学に期待しているのである。 インターネットでも、「大学の資格検定講座」と検索すると、全国の多く大学が様々な資格検定講座を開設している。例えば、語学に関する検定から簿記検定、宅地建物取引士、秘書技能検定、FP(ファイナンシャル・プランナー)等のビジネス系検定、世界遺産検定等の趣味興味系の検定まで開設されている。 大学側は、学生のキャリア形成支援と同時に学生が希望通りの就職活動準備のために設置しているものとみられている。履歴書に書ける資格を約6割以上の学生が取得している。 【図表1 大学生が履歴書に書ける資格の保有率】 ![]() (出所:リクナビ 就職ジャーナル 学生×シゴト総研)
学校によって違いはあるものの、ほとんどの大学はキャリアセンター主催で、外部資格学校から委託された講師がその講座を担当することになる。大学はひとつの資格学校を入れているわけではなく、複数の資格学校が入っており、それぞれ決められた講座を担当することとなる。受講料は無料であったり、受講料を設定されていたり、テキスト代だけの支払いなど学校側の考えで運用している。そしてそこには、多くの学生が集まり、受講しているのである。 【図表2 大学生が取得している資格】 ![]() (出所:リクナビ 就職ジャーナル 学生×シゴト総研)
2.ビジネス系資格取得の目的筆者はビジネス系の資格を複数保有しているため、全国の大学で資格検定講座の講師も務めている。主に秘書技能検定とサービス接遇検定を担当している。昨年そこに集まる学生たちの意識調査を質問紙とインタビュー形式で授業中に行ってみた。 その結果、3年生・4年生では、就職に有利になるであろうと考えるほか、学生自身が社会人なるために足りないと思う「ビジネスマナー」「社会常識」を身に付けるとの目的が多く、1年生や2年生に関しては、現在のアルバイトに役立つためとのことである。低学年と高学年とでは、ビジネス系(特にサービス接遇検定)資格試験を受ける目的が異なっていた。
3.英語をはじめとする語学に関する大学生の意識日本のグローバル化が進み、多くの企業は新卒選考時にエントリーシート(以下ES)や筆記試験で英語をはじめとする語学力を問われる。そのために多種の語学検定試験や留学などして英語をはじめとする語学力に磨きをかけている学生を多くみかけるが、またそれとは逆に全くしない学生の両極端に分かれている。 大学2年生頃から準備をしている学生の意識として、日本企業が今後更にグローバル化することを予想しており、英語を生かすというよりも、自分が志望している企業には当然必要であると、必然的考えを持つ学生が多かった。そのような思考を持つ彼らの語学力は一般の学生の平均をはるかに超えたレベルの学生がほとんどである。(TOEIC® Test平均735点)そして、ES提出まで検定を受け続けるなど、最後まで得点を高める努力をしている。また逆に、全く準備していない学生は、語学の必要性が分かっていたとしても、不得意を理由に手を付けていないのである。また、日本企業であるがゆえに日本語のコミュニケーション能力だけでも大丈夫と思い込みを語学には興味を示さない。 「社会人基礎力」(経済産業省2006)では学生が思うほど語学力には不満を感じていないと企業側の意見であるが、本当なのであろうか。 日本企業は新卒採用選考の時点でテクニカルスキルよりヒューマンスキルを大切にしているところが多い。しかしながら、今後日本の少子高齢化社会が加速し、さらにグローバル化が進めば、職場で机の隣が普通に外国人であったり、経営者自身が外国人になり、企業内の公用語が英語になりかねないなか、語学に対して採用選考評価の割合が高い低いかは別にして、素養は十分必要ではないかと感じる。これは民間企業だけでなく、増え続けている外国人の日本移住を支援する地方自治体で働く公務員にも関係してくることである。 実際に学習するのは学生本人であり強要はできかねるが、正しい日本語とともに世界の公用語である英語の重要性を自ら気づかせることもキャリアコンサルタントとしてできればよいと感じる。実際にキャリアコンサルティングを行っている大学では、外国人留学生からの相談も受けるが、ほとんどが日本での就職を志望している。もちろん日本語は流暢である。 多様な人材を入社させる企業にとっては、共通語としての英語は最低限理解しておくことが暗黙の了解である。そう考えると、採用の時点である程度の語学力を有する学生が採用されていると仮定するならば、外国人留学生の語学力は当然日本の新卒一括採用に参入してくることが予想される。 日本の学生もまた、英語を中心とした語学が就職に対して有利になったと感じている学生が26.9%と就職に有利になる項目のトップを占めていることが分かる(図表4参照)。 【図表3 資格が就職に有利だと思った割合】 ![]() (出所:リクナビ 就職ジャーナル 学生×シゴト総研)
【図表4 資格が就職に有利になった点】 ![]() (出所:リクナビ 就職ジャーナル 学生×シゴト総研)
4.多様な資格試験取得の迷走多くの大学では多数の資格取得のための講座が開講されているが、興味関心のあるものや自己啓発のために選択することには問題ないが、以前、学生から「どの資格をとったら、就活に有利ですか」と質問されたことがあった。自分が就きたい仕事を踏まえた資格取得ではなく、その前の就職活動を勝ち抜くための資格取得を考えており、そこを目指すことに関して違和感がある。 筆者自身も多数の資格試験を持っているが、全てにおいて明確な目的を持って受検していた。仕事に生かすためや関心があるものを主体的に取得していくことが本来の形であると考えるが、学生の中には、主体的ではなく、資格を持つことによって選考が有利になるのではないかとの受動的考えで資格取得を考える学生もいることは確かである。 学習自体は大変素晴らしいことと捉えているが、それを就職活動に有利、不利ではなく、自分の内的知識を蓄えるために主体的に選択することも「自律したキャリア形成」の一片であると思うのである。就職の活動の有利のためではなく、「仕事」「人生」「本人」のための資格取得を臨んでほしい。実際に就職活動で資格取得が有利であったかどうかを質問で「はい」と応えた割合は32.8%にとどまる。(図表3参照) 採用選考でのESでは「資格・能力欄」が必ずあり、自分のアピールどころではあるので、「なぜその資格を目指したか」「それをどのように生かしていきたいか」をいうことをはっきりを伝えられるようにしておかなければならない。それに対して、企業側がその資格をどう判断するかは、一律ではないので何とも言い難い。しかし、「学習意欲はあり」との判断は多少されると思われる。
5.まとめ資格取得をすることによって、自信がつき、ほかにも学習意欲が湧いてきたとの声もよく聞く。資格取得による自己効力感が上がった素晴らしい例であり、それが就職活動に繋げることができるのであれば、それに越したことはない。資格試験は努力したことが明確な結果として表れるので、合格した時の満足感は大きいものでしょう。 資格試験に臨むときには、少し努力しなくては取得できないレベルに挑戦することで、目標達成感が上がる。それが社会に出ても少し難しいものに挑戦しようという気持ちが芽生えると考える。将来、自分のキャリアを考える上で資格勉強が何かのきっかけになることを期待したいとともに、学生本人が主体的に資格取得の選択をし、粘り強くやり遂げることが大切であると考察する。
【引用・参考文献】
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