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JAVADA情報マガジン1月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2018年1月号

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大学生のキャリア形成支援について
~複数の大学でのキャリアコンサルティング業務を通して~
第2回 大学生のキャリアデザインと働く意義

キャリアコンサルタント、大学講師、文筆家
   碇 ともみ 氏(Official HP:碇ともみ.com) 《プロフィール》 

1.大学でのキャリアデザイン教育の取組み

キャリアデザインとは、自分がどの様に生きたいか、どの様な人になりたいかを考え、なりたい自分になるための未来計画予想図を描くことである。特に「人生の節目」(進学・就職・結婚など)に何らかの選択をしていくことになるが、その時の選択を自律的に考えて人生の経歴をつくっていくことである。

キャリアに関するガイダンス・セミナー・授業を取り入れている大学は多く、初年次教育、もしくは3年次に設置していることが多い。授業に関しては「キャリアデザイン」「キャリアプランニング」などの科目名で必修科目授業・選択科目授業、正課授業・課外授業と様々な形でキャリア教育を行われている。

【図表1 大学で行われる就職セミナー・ガイダンス実施率】

図表1 大学で行われる就職セミナー・ガイダンス実施率

【図表2 大学でキャリア関連科目開設している割合】

図表2 大学でキャリア関連科目開設している割合
(図表1.2ともに 出所:日本学生支援機構から筆者作成)

 

2.インターンシップからの「働く意義」

就職活動を控えた大学生は、3年生の夏休みあたりから始めるインターンシップ参加のために大学のキャリアセンターに訪れ始める。将来のことを意識し始める時期でもある。
 最近はインターンシップにも選抜があり、多くの希望者がいる場合には、予め提出した書類選考や面接などで人数を絞ることもあり、希望者全員がインターンシップに参加出来るわけではない。例えば、希望企業・団体のインターンシップに参加出来なかった時点で、急に焦りだす学生も少なくない。
 将来のことを考える上で啓発的経験はとても大事なことであるが、ただインターンシップで就業体験をすればよいものではなく、「働く意義」を考えながら参加することで、就職に対する姿勢も変わってくる。学生の中には、アルバイトと就職を同じレベルで考えている者もいるが、その違いを明確にすることも大学の教職員や周囲の大人の役割と考える。
 そして何よりも、学生たちの身近な社会人や保護者が「働くことには意義がある」「働くことにやりがいを感じている」と言葉や態度で伝えていくことが何よりも動機づけされることである。

 

3.大学生たちの未来予想図

学生が自律的にキャリアをデザインする上で重要なのは、「就職やキャリアに関しての正しい認識・知識」を持つことであり、本人・大学・企業・家庭など社会全体で「教えよう、知ろう」とする学習機会を設けることにより学生自らが納得いくキャリアを選択できるのである。「何をしてよいか分らない」との学生の質問に対して「なぜ働くのか」と逆に問い掛けると、「生活のため、生きるために働く」と応える学生が数多くいる。それが図表3のデータにも表れている。生活のため、自由なお金が欲しい、貯金とお金に関して20代の半数が「働く意義」をお金に結びつけていることが分かる。それでは、本当に働くとは、経済面だけで考えてもよいものなのか。

「働く意義」には経済的理由、自己実現、社会貢献などが挙げられるが、学生自身が「10年後の自分はどうなっていたら、笑顔でいられるか」と未来予想図を描くことから始めると、プライベートの自分と仕事をしている自分の姿を想像し始めるのである。若年者に対して、「楽しい未来と自分の姿」を描くことが出来るのであれば、それに向かうためのモチベーションにもなり、就職活動までに準備すべきことが円滑に進めることができると思われる。

【図表3 20代の働く意義に関する意識調査】

図表3 20代の働く意義に関する意識調査
(出所:o-uccino総研 「働き目的・モチベーションに関する実態調査」より筆者作成)

 

4.若年者の問題

昨今、若年者の離職率「七五三現象」が取り挙げられている。なぜ若年者は入社3年以内に辞めてしまうのか。
 厚生労働省の若年者雇用実態調査によると、初めて勤務した会社をやめた理由(3つまでの複数回答)についてみると、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が22.2%、「人間関係がよくなかった」が19.6%、「仕事が自分に合わない」が18.8%、「賃金の条件がよくなかった」が18.0%の順となっている。
 これを性別にみると、男では「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が22.7%、「賃金の条件がよくなかった」が22.1%、「仕事が自分に合わない」が22.0%、女では「人間関係がよくなかった」が22.8%、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が21.8%、「仕事が自分に合わない」が16.1%の順となっている。
 この離職理由のデータからも賃金条件に関して高い水準を求め、仕事時間は短く、休みを多く欲しいとの若者の仕事に対する考え方が表されている。

新人の3年間は企業側が教育機会として最も大切な時として考えており、ヒューマンスキル(対人間関係能力)、テクニカルスキル(業務遂行能力)を付けて行く必要があるのであり、その後マネジメントする立場に立つためのリーダーシップや課題解決力などのコンセプチュアルスキル(概念化能力)を身につけさせる基礎となるものである(Katz,1955)。
 しかしそれが社会人の基礎能力に磨きをかけ、一人前になる前に離職してしまうことにより、大切な教育機会が少なくなる、もしくは失うことを残念に思う。
 激しく変化する労働市場や環境下において学生はとにかく「良い条件の企業」「安定した企業」との考えを押し出してくることをキャリアコンサルティングしていく中でも感じる。それが悪いということではなく、学生自身が本当に自己理解をしているのだろうか、自分の「伸びしろ」を考えているのだろうか、よく考えて自分に合う企業や仕事を選ぶことをアドバイスするようにしている。それには、多くの時間を費やして粘り強く、経験の棚卸しや自分の価値観を学生自身が知るべきであり、方向性を定めること、いわゆる「キャリアデザイン」をすることが大切だと思う。

情報社会の発展は私たちの生活を豊かにしてくれるものであるが、就職活動や企業について多くの情報があるがゆえに惑わされることもあり、正しく情報をキャッチしていく力も必要である。毎年、何人もの学生がインターネットや噂により希望している企業や仕事について間際で戸惑い自信を失い、何を信じて良いが分らなくなるという事態に陥る。
 一度描いた「キャリアデザイン」は、絶対的・固定的ではなく、修正しながらつくり直して良いものであることも、学生たちに伝えておくべき点である。

 

5.学生が陥る「修正できないキャリアデザイン」

採用選考が始まると、自分が希望している業界や職種や企業にこだわりを持ちすぎて、他の業界や企業について、一切関心を示さない学生がいる。キャリアコンサルタントとして彼らに伝えることは、希望の企業に関してはそのまま続けることの他、合同説明会や多種多様な企業説明会に可能な限り参加して自分自身の特性を考えながら、採用選考に臨んでほしいとアドバイスをしている。

ひとつにこだわり過ぎる就職活動は、自分で自分を狭めて、選択の余地を与えなくしてしまう。それは、逃げ場がなくなることでもある。もしかして、就職活動中に他業界や他社に触れることで、新たな自分を発見することもあり得るのだ。そうなった場合には、その時に軌道修正をしていけばいいのであるが、学生は一度決めた「キャリアデザイン」を修正することに抵抗があり、自分の方向性の修正に納得することに少し時間を要することが多い。特に人気のある大企業を希望している学生にありがちなのである。希望の企業に一直線に内々定まで進むことができるのは、ごく一握りの学生であり、ほとんどの学生は紆余曲折しながら内々定を頂くことになるが、そこには「折り合い」と「納得」をしているかどうかが問題となる。

採用選考が始まると目まぐるしく時が流れ、学生はみな一喜一憂してしまうが、自分の人生は自分で責任を持つことを意識させ、自分に甘すぎず、厳し過ぎず自分をみつめる機会であることを学生たちに伝えている。

 

6.まとめ

産業能率大学の「2014年度新入社員の会社生活調査」によると、新入社員が働き続けたいと思う割合は76.3%に及ぶ。そのことから大学生を含む若年者が求めているのは、「安定」であることが分かる。彼らが育ってきた環境にも影響していることに気が付く。

丁度、親世代がバブル経済期を過ごして、突然崩壊し、失われた20年を経験してきた世代であり、身近に家庭への影響を受けてきたことが一要因になったのだろう。
 1990年代前半までの日本的経営(終身雇用・年功序列・企業別労働組合)のなかで安心して企業と心理的契約をかわし、心配なく職業人生を歩むはずが、突然成果主義に移行し、急には仕事の仕方を変えることが出来ず、親世代は戸惑いと不安を感じながら、仕事をすることになった。親世代は自分のキャリアを自律的に考えていなかったことにから、子供は「自分の目で見た社会」からものごとを判断することになるのである。特にリストラを経験した家族にとっては、厳しい状況に置かれたと考えると、やはり子供の就職には「安定」をこだわる気も理解できる。それが親に影響を受けた大学生を含む若者の職業観であり、勤労観につながっていると推察する。
 こだわりも大切であるが、変化していく未来は予測できないからこそ、強い自分づくり(エンプロイアビリティ:雇用しうる能力)を築くことの「気づき」を与えることもキャリアコンサルタントの役割でもあると思うところである。その「気づき」はリアリティ・ショックをも緩和させ、さらに自分のパワーに変えられるように、自分のキャリア形成に対して真剣に取り組むことを示唆していくことの必要性を感じるのである。

 

 


【引用・参考文献】

 

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