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JAVADA情報マガジン12月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2017年12月号

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大学生のキャリア形成支援について
~複数の大学でのキャリアコンサルティング業務を通して~
第1回 大学生の就職活動と社会人基礎力の関係性

キャリアコンサルタント、大学講師、文筆家
   碇 ともみ 氏(Official HP:碇ともみ.com) 《プロフィール》 

1.大学生の就職活動の概要

2018年度入社の大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者の就職活動は、日本経済団体連合会の「採用選考に関する指針と手引き」によると、3月から広報活動(企業説明会など)が始まり、6月に選考活動(面接選考など)、正式な採用内定日を10月1日とするスケジュールである。
 例年よりも企業側は早めに採用選考を進めたところが多く、短期決戦であったと感じる。しかしながら、6月から面接選考を始める従来ながらの企業も多々あったが、3月~5月までにはエントリーシート(以下ES)、ウェブテスト・テストセンターの受験など面接選考に進む前にそれらの通過難関が待ち受けており、周到な準備が不可欠である。

企業によって採用選考内容は様々であるが、一般的にES、SPIテスト等試験、グループデスカッション(以下GD)、グループワーク(以下GW)、集団・個人面接(複数回)と続き、内々定へと続く(図1参照)。

【図表1 就職活動の流れ】

就職活動の流れ

 

2.社会人基礎力とは

「社会人基礎力」とは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年から提唱している。
 ほぼすべての企業が新卒社員の採用プロセスや入社後の人材育成において「社会人基礎力」を重視していることから、就職活動をする学生たちに認識してもらうことが大切である。そのためには、各大学での正課・課外授業に置かれている「キャリア関連科目」で採り上げることやキャリアセンター内でのキャリア支援の一環として、「社会人基礎力」を学生に伝えることで社会人として必要な能力を事前学習でき、円滑な就職活動が行えるのである。

【図表2 社会人基礎力3つの能力と12の能力要素】

社会人基礎力とは
※クリックするとPDFでご覧いただけます。
(出所:経済産業省 「社会人基礎力」普及・促進PR資料3ページ)

社会人基礎力は、企業側からの「学生に求める能力要素」と、学生側からの「企業で求められていると考える能力要素」には大きな隔たりがあり、このことを踏まえながら自己を見つめていく「自己理解」と、社会人として必要な能力「職業理解」を把握して、就職活動における自己戦略していくことが重要であるといえる。

【図表3 大学生の社会人観の把握と社会人基礎力の認知度向上実証に関する調査】
(平成21年)

企業と学生の意識のギャップ
※クリックするとPDFでご覧いただけます。
(出所:経済産業省「社会人基礎力」普及・促進PR資料4ページ)

企業側が学生に不足している能力として「主体性」「粘り強さ」「コミュニケーション能力」「チームワーク力」であり、内面的な能力です。しかしながら学生は、それらに関してはすでに備わっていると考える学生が多いということになった。 また反対に、学生が自分に不足している能力として「ビジネスマナー」「語学力」「業界に関する専門知識」「PCスキル」などの専門的な能力であり、企業側はそれらをあまり意識していなく、双方の見解が異なることとなる(図表3参照)。
 このことから社会人として「求められている人材」の意識の違いが企業側と学生側とのミスマッチを生んでいることになる。

 

4.企業側が求める「社会人基礎力」のある学生の判断材料

昨今、企業側は従業員に対して、決められた仕事を出来ることを前提にそこから応用力を発揮できる人材を求めているのである。それが発揮されるためには、自ら進んでチャレンジしていくことであったり、そのチャレンジを一時的に終わらせるのではなく、粘り強く考え抜き、他者との意見を融合させていくことで「素晴らしい何か」を創造し、企業に利益をもたらすことを望んでいると考える。
 上述した企業側が学生に不足している能力として「主体性」「粘り強さ」「コミュニケーション能力」「チームワーク力」を挙げていることと合致している。まさしく、社会人基礎力の必要性を求めているものとうかがえる。

採用選考の早い段階で、GDやGWが行われるのは、ひとつのテーマをチームで考えていく取組み姿勢が問われているのである。そして採用選考で初めて出会った他大学の学生たちと限られた時間内でのディスカッションやワークを通して、互いに信頼関係を築き、積極的に論理的にものごとを進めていけるかが見られている。
 学生が思う「コミュニケーション」とは、友人同士でも話合いやSNSの中でも話合い、または、アルバイトでの接客などを考えている様であるが、社会人に求められている「コミュニケーション」とは、初めて会った人でも一人ひとりの意見を傾聴し、自分の意見を論理立てて他者に伝えることができ、それらを融合させていくことであると理解している。
 そして、ディスカッションやワークでは柔軟性をもって取捨選択をチームでしながら、ひとつのことを完結することが望まれているのである。
 最近の学生は、他者に気を遣いすぎる部分があるように感じる。人が自分のことをどう見ているのかということを気にする傾向があり、人を傷つけないようにするあまり、自分の意見を押し殺し、大多数の意見に乗ってしまい、「まあいいか」となってしまう。それは、企業の求めるグループダイナミクス(集団力学)とは微妙な差異が生じているのではないかと感じる。
 「社会人基礎力」で挙げられている3つの能力と12の能力要素は、自らが動くこと(前に踏み出す力、考え抜く力)により他者を巻き込んでいき、チーム内でグループダイナミクス(集団力学)が生まれ(チームで働く力)、企業、個人双方にwin-winの関係をもたらし、ES(従業員満足)からCS(顧客満足)へとつなげていくプロセスであると考える。

 

5.自己理解と職業理解のツールとしての「社会人基礎力」活用事例

筆者は実際に大学の正課授業(キャリデザイン、起業論)の1コマに「社会人基礎力」を設けて受講生自身の強いところ、弱いところを熟考させ、自己理解から職業理解を促す授業を展開している。
 はじめに「社会人基礎力」の3つの能力と12の能力要素を自己評価してもらい(強・普通・弱)、その理由を過去の出来事から記入してもらう。そして自分の傾向や行動特性を把握した上で、グループワークとしてその結果を話し合ってもらう。グループでの共有が出来た上で、各項目に対して何らかの対処(強・普通:更に能力を伸ばす方策、弱:改善策、)を考える。また、将来就きたい職業を挙げてもらい、どの能力が特に必要かを企業のホームページなど情報収集しながら調べることをしている。
 ただ単に「自己理解」に留まらず、業界や企業別に必要な能力を知ることで、自分が目標に向かうために必要なことが見えてくるのである。最後に必ず共有事項のフィードバックと自己実現のために「何かをしてみる勇気」を持つことを伝えている。
 以上「社会人基礎力」に関する授業について説明したが、他の題材の授業に関しても「社会人基礎力」を修得すべく学生主体型「アクティブ・ラーニング」を展開している。学生主体の授業は参加することだけではなく他者の思考も取り入れ、共有することでグループダイナミクスを生む効果が出てくる。

 

6.今後の課題とまとめ

社会人になるということは、自分の仕事や振る舞いに対して責任を持つことであり、それをやり遂げることである。そこには立ちはばかる壁がいくつもあり、心が折れることも出てくるかもしれません。
 最近知り合いの採用担当者たちが口を揃えて、「最近の若者に足りないのは耐力だ」と言っていたことを思い出した。社会人基礎力でいう「ストレスコントロール力」である。
 このストレスコントロール力は社会人にとって大切だとは思うが、「耐力」の限度は人それぞれであり、昨今社会問題になっている「メンタルヘルス」との境界線が不明慮であり、難しい問題であると認識している。「メンタルヘルス」についても大学生にどの様に伝えていくかを熟考していかなければならない。
 この問題を個人・組織・社会全体で考えることが個々人の「自分らしいキャリア形成」を築くために要素であると考えている。
 それぞれの信頼関係構築が大切であることの認識の上で、増々「コミュニケーション力」がクローズアップされることになるであろう。話すことは誰しも培われてきているが、「他者・他所に伝える表現力」(言語・非言語コミュニケーション)を豊かにしていくことも社会人として重要な基礎力ではないかと思うのである。

 

 


【引用・参考文献】

 

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