JAVADA情報マガジン10月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2017年10月号

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明るい「えがお」にあふれたキャリアを積むために
キャリアコンサルタントができること
第3回 『こころのクセ』と『中年の危機』

Officeえがお 代表(Facebook)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、PHPビジネスコーチ
  国家資格・2級キャリアコンサルティング技能士、国家資格キャリアコンサルタント
   門 千奈津 氏 《プロフィール》 

28年間のほとんどを営業で過ごした私ですが、前回述べたように、「プラス思考で何とかなる」「やってみなけりゃわからない」と常に思っていたわけではありません。いろいろな環境の変化や、人間関係などによって、私も『マイナス思考』になるときがありました。

その乗り越え方をお伝えできれば、働く方へのエールになろうかと思います。今回は、私が、セミナーでも活用している『認知療法』『4S点検』を使いながら、述べていきたいと思います。

 

~こころのクセ~

『こころのクセ』を『スキーマ』と言います。『こころのクセ』は自動思考の基礎になっています。私はキャリアコンサルティングを学習し、『認知療法』を知りました。そこで、入門書として、『はじめての認知療法』(大野 裕著)を読み、納得できました。以下は、それを"業務の中での行き詰まり"に使えないだろうかと私なりに考察したものです。

【ものの受け取り方や考え方を柔軟に考えよう】

営業職でも、事務職でも、人と接していると、“否定される” "断られる"ことで、自信を喪失したり、やる気をなくしたりすることがあります。それでも、努力しなければ仕事としてはやっていけません。業務がうまくいかない場合、どんな気持ちになっているでしょうか?

≪例≫どうして、自分だけがこんな大変な目に合わなければいけないの?

また、断られるに決まってる!!
だれも、私の気持ちを分かってくれない。
今、不景気なんだから、成績不振を責めないでよ。

私は、実際、こんな気持ちになったことが何度もありました。「人生、そんなにうまくいかない。」という人生観があったかもしれません。その時には『こころのクセ』で「私には力がない!!」というスキーマが現れているのです。

私には力がない

スキーマは、自動思考の基礎になっているその人なりの『こころのクセ』です。それは、自動思考のように、その場その場で瞬間的に浮かんでくるイメージとは違って、その人がずっと持ち続けている基本的な人生観や人間観です。そのために、自分にとっては心の中でずっと続いているもので、自分にとってはごく当たり前で、自然に受け入れているものです。(前出著書より)そのために最初からそれに気づくことは困難ですが、スキーマに気づき、スキーマをなるべく出さないように、意識をすることは、簡単にできることです。

皆さんもやってることがあると思います。「あ~、ダメダメ、否定的に考えるのはよそう。」とか、「あ、ネガティブになってる!!」とか、会話でも出てきます。私は、一人の時に、マイナスの『こころのクセ』が出てきたときは「キャンセル!!」と言って、考え方・イメージを最初から考え直すことにしています。これも、ご縁があって、今でもお付き合いいただいているお客さまから、教えてもらいました。

では、どのようにすればいいのでしょうか...

どのようにすればいいのでしょうか

このように、考えれば、少しは自分の行動に変化をもたらすことができるのではないでしょうか。私はそのようにして、ものの受け取り方や思考を柔軟に変え、行動を変える努力をしていきました。

さて、そのようなプラスの行動を意識して働きましたが、私にも『中年の危機』が訪れました。

 

~中年の危機~

私は、大同生命に前回述べたとおり、何気なく入社したのですが、いつの間にか大好きな会社になりました。

仕事は充実しており、努力した分だけの評価も得られました。しかし、40代後半ごろから、体力の衰え、尊敬する先輩方の定年退職などがあり、また、昇格できない時期が長く続き、身内の不幸なども重なり、人生の転換期を迎えました。そこで、私は早期退職をしようと決断しました。

その時は、今から思えば、「どうせ私なんて」という"こころのクセ"が現れ、マイナスの自動思考が止まりませんでした。

そんな中年はこれからもどんどんと増えてくると思います。早期退職だけでなく、65歳雇用延長義務化に伴う『働き方』の悩み、定年後のキャリアの悩みなど、多種多様です。

そのような人たちをキャリアコンサルティングするならば、皆様はどのように関わりますか?

【4S点検で、じっくり自分に問いかけよう】

私はシュロスバーグのキャリア理論をよく活用しています。シュロスバーグは人生を様々な転機(トランジション)の連続と捉えるところに特色があります。シュロスバーグは、それらの転機に直面した際にそれらを乗り切るために利用できる内的資源を4つ(状況:Situation、自己:Self、支援:Support、戦略:Strategy)に分類し、それぞれを点検することを推奨しています。この4つの資源の頭文字をとって『4S点検』と呼びます。

もし、当時、キャリアコンサルタントに出会っていたら、私は転機を乗り越えて、退職しないという選択肢もあったような気がします。

その理由は、振り返って、下図のように4S点検してみると、赤色文字の部分について、矛盾があったり、認知のずれがあったり、思い込みがあったり、予測が当たらなかったこともあったからです。

例えば

  • 長年昇格できない⇒先輩でもまだ、昇格していない人もいる。また、後輩と思っていた人は、先輩だった。
  • 両親を置いて転勤は無理⇒両親は転勤先についていきたいと言っている。柔軟に考えればいいのではないか。
  • 今の仕事は大好き。会社に未練がある。⇒なのに、なぜ、退職なんだろう。矛盾がある。
  • 講師としての戦略⇒講師業に、営業は必要なく、オファーが多くあると思っていた。しかし、ほぼゼロだった。
  • 両親は退職に反対している⇒私は反対する両親の意見に耳を貸そうとしなかった。両親もあきらめた。
  • 確固たる支援⇒支援いただけると思ったのは勘違いだった。

そう述べると、私の早期退職は後悔ばかりなのかと言えば、そうではありません。いろいろな転機を乗り越え、新たにキャリアコンサルタントという仕事にも恵まれました。

しかしながら、今、中年の危機にさしかかっている人や退職を考えている人には、4S点検をお勧めします。キャリアコンサルタントが身近にいなくても、ご自身で自問自答していただきたいと思います。

それが、悔いのない幸せな人生を送るための方策です。

  • それぞれを偏りなく点検したか
  • 矛盾点はないか
  • 全て確証を得た事柄なのか
  • 無理はないか

最後に、覚悟はあるか??

この言葉を問いかけて、私はキャリアコンサルティングを行いたいと思います。次回は、転機を乗り越え、キャリアコンサルタントになった私の"今"を交えながら、現場と課題を述べたいと思います。

 


  • 『はじめての認知療法』(大野 裕著)講談社現代新書 
  • 大同生命保険株式会社 HP http://www.daido-life.co.jp/ 
  • 参考文献:新時代のキャリアコンサルティング 独立行政法人 労働政策研究・研修機構 

 

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