はじめに
文化・経済などさまざまな点でグローバル化到来。1970年代以降、続いてきた企業体のあり方、そして労働者の労働と生活の意味も変化を迎えています。
最近、政府の掲げた1億総活躍社会施策のもと、企業は、社員ひとり一人のワーク&ライフを尊重しながら、どのように生産性を高めていけば良いのでしょうか。
企業内人材育成推進のための助成金制度との関連から、健全な企業体について連載させて頂きます。
第1回:企業の健全度は、どのようにしてみるか
第2回:経営戦略としての人材育成
第3回:労働者の労働の意味づけの多様化
第4回:変革する企業体と社員
第1回「企業の健全度は、どのようにしてみるか」
企業の「健全度」は、大きく分けて、次の2つの視点から測定できます。
1つ目の視点は、経済的指標に基づく測定です。企業の財務諸表や有価証券報告書等に記載されている数字から健全度を読み取るという考え方です。
もう1つの視点は、企業で働く労働者に注目した測定です。具体的には、企業定着率等の人由来の指標を基にして、健全度を測定しようとする考え方です。例えば、企業定着率は、心を持った人間としての労働者が、主観的に自社をどのように見ているかを示す指標と考えられます。人由来の指標は、忠誠心や帰属意識、チームワーク、マネジメント、パフォーマンス等によって変動するものですので、絶対指標というよりも相対的指標になります。
前者も後者も、経営学や経済学・会計学だけでなく、社会学、心理学等の分野でも研究されています。企業の健全度は、先述の2つの視点が相互に影響し合っていると言えます。どちらの視点も重要なのです。
ただ、両者の調和が取れていない時に、企業の存続の危機や労働者のパフォーマンスの問題点として表面化し、企業と労働者、双方の利益を損ないます。そのため、いかに両者の調和と建設的な妥協点を見出すかが重要な課題となりますが、この課題の解決のためには、企業と労働者を十分に正しく診断し、適切に介入し、経過を観察していくというサイクルを回していくことが大切です。そしてそのようなサイクルを確立するためには、企業の外部の諸専門家集団の活用と企業の内部でのキーパーソン養成がポイントとなってきます。
活用すべき企業の外部の諸専門家としては、
| ① |
経済的な指標から診断・介入・経過観察ができる税理士、会計士、経営コンサルタント、中小企業診断士、MBA等 |
| ② |
企業で働く労働者の指標から診断・介入・経過観察ができるキャリアコンサルタント等 |
があげられます。
一方、企業内部では、「外部の専門家と企業との調整的な存在=キーパーソン」が必要になります。労働者の中で、外部専門家の助言などを企業内部者へ伝えられるバイリンガル(専門用語を企業内の用語に通訳できる)の能力とスキルを兼ね備えた人材の養成が重要なのです。
1970年代以降の企業の日本型の人事労務管理の諸制度は、2000年代の今日、制度疲労を生じているように思えます。この数十年、文化・価値・マーケットなどが大きく変貌してきました。それに伴い、労働者のライフキャリアが変わり、それが日本型雇用における企業が求める働かせ方と労働者の求める働き方とのギャップを生じさせているように思います。
だからこそ、企業の健全度を高めるために、『労働』という視点から、企業と労働者のニーズを調和させて行く役割を担う存在=キャリアコンサルタントの重要性が非常に高まってきていると考えています。
次回は、『経営戦略としての人材育成』において、キャリアコンサルタントをどのように外部キーパーソンとして活用していくかについて、お話させて頂きます。
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