はじめに
第3回目は、『企業が求める人事部門のキャリア・コンサルティング力』というテーマで個人と組織へのアプローチの方法と実態をお伝えしました。
今回は最終回となりますが、キャリア視点からの企業の人材育成の方針について述べさせていただきたいと思います。
1)会社内でのキャリア展望
企業というのは、生き残りをかけて絶えず外的環境の変化をキャッチし、内的環境を変化させていきます。その企業の中で個人がいかに将来のキャリアの展望を見出し、モチベーションを保っていくかは、個人にとってもまた企業にとっても大変重要なポイントです。
しかし近年は、絶えず給与は順調に上がらなくなり、ポストが潤沢にあるわけでもなく、また年代の若返りによって年下の上司の増加、会社の方向性の転換による組織内変化への戸惑い等・・今までのように社員の「モチベーションの維持」が容易ではなくなっているのが現状です。
当社においても、上記の内部環境の変化が顕著で「昔はよかった」という事がよく聞かれ、不満要因のターゲットを探しているような傾向にもあります。第3回目でも述べさせて頂きましたが、賃金や役職、といった「外的キャリア」に依存する人が多く存在しているのが現状です。そこで適性や価値観にあった仕事をして満足がいく「内的キャリア」への変換が必要になってくると思います。
それにはまず「働くとは、仕事とは」等の労働の目的や意義を再確認することだと思います。たしかに仕事をするという事で「収入を得る」ことは大変重要です。しかしそれ以外に自分の仕事の役割や位置づけ、すなわち存在価値、また将来への展望、強みや適性が活かされている、という実感をもって仕事を持つこともモチベーションの根源である、という事を自分自身で気づいてもらう事が重要だと思います。これが「キャリアの自立」の第一歩ではないでしょうか。そして結果的に、時代を乗り越えていく対応力も備わってくると思います。
企業としてもこういった個人の「キャリアの自立」への支援・教育をしていく必要があります。
2)キャリア・デベロップメント・プログラム
個人が自立したキャリア視点を持つためには、企業側もその支援をする必要があり、自己成長した社員が増えていく事は企業にとっても重要です。
当社においても「キャリアデザイン研修」を3年前から節目の年代(45歳・50歳)で実施しており、今後は中高年層以外にも若手のキャリア研修も計画中です。
一方「仕事を通じてのキャリア開発」も重要です。そこで、中・長期的に社員のキャリアを考えていて育成していくというキャリア・デベロップメント・プログラム(CDP)をご紹介したいと思います。
いわゆる育成計画ですが、ベロップメントというのは「封書・閉じ込める」という意味です。そのデ(反対語)で、"封じ込めない"という意味です。すなわちキャリアを封じ込めない=活かして成長していく、という事です。
以下の図がCDPの概要ですが、学卒で入社した場合に、若い時に複数の職場経験をして、自分の適性の可能性を広げていってもらいます。入社してからずっと同じ職場でより専門性の高い仕事をするという考えもありますが、自分の可能性の広がり、将来の汎用性という面でもこれは必要となってくると思います。これからは一つの仕事をしていく事が出来なくなってくる事も考えられます。したがって企業としても個人としても若い時にいろんなことを経験していく事は、大変重要な事であると思います。経験を通じてCAN・WILLを大きくしていく、という事です。
そして30代では「自分は何屋でくのか?」という事を考えて、40代ではそれを「発揮してもらい」50代では今までの経験を活かして「組織に貢献してもらう」という事です。企業側としての(仕事の機会提供による)キャリア開発なのです。
そこには、管理職として将来の幹部候補生としての見極めも入ってきます。企業としてはそこで、ゼネラリスト/スペシャリストといったコースを歩んでもらう、という設計でもあるのです。

以上が仕事を通じてのキャリア開発ですが、ライフサイクル(人生の周期)の視点から年齢別の課題を記載した資料が以下の図です。
仕事人としてまた生活者として年齢を重ねていくと、起こりうる転機・乗り越えていくべき課題が表れてきます。そういった"出来事"を企業としても理解したうえで、キャリア開発をしていく事も大切な点だと思います。

図表:T.Kishi
以上、企業のキャリア視点の人材育成の方針について述べさせていただきました。
3)最後に
8月から4回にわたり、私の人事部門のキャリア・コンサルタントとしての実務内容を中心に連載させていただきました。これからも私自身、「人はそれぞれの強みを持ち味があり、"その人らしさ"を見出して、可能性を引き出して共に歩んでいく事」をモットーに支援者としてのキャリアを磨いていきたいと思っております。
現代社会は、急激に変化が加速されています。それを実行するのは、ビジネスパーソンであり、その求められる能力は日々増えていっています。そんな中、戸惑い・悩みながら、また振り落とされそうにされながらも、人々は前に進むことを強いられています。
日本企業内におけるキャリア・コンサルタントとしての認知度はまだまだ低いのが現状だと思います。今後はキャリア・コンサルタントの活躍するフィールドやニーズが増えていくと予想されます。私たちの活躍によって、働く方が一人ひとり充実した仕事人生をはぐくむことができるよう支援していきたいと思います。
今回このような執筆の機会を頂いたことに心より感謝申し上げます。
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