JAVADA情報マガジン7月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-
◆2015年7月号◆
今、キャリア・コンサルティング現場の就労希望者の実情とキャリア・コンサルタントの課題〜若者サポートステーション(通称:サポステ)等の現場から〜 |
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特定非営利活動法人こうべユースネット 若者自立・就労支援事業部 |
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はじめに4月号から6月号では、「サポステ等の現場から見えてきた"今"の若年相談者の実情および企業とキャリア・コンサルタントの課題」について年代別に書かせて頂きましたが、いよいよ最終の7月号では、それぞれの年代に共通する相談者の抱える問題とそれを取り巻く環境、キャリア・コンサルタントとしてどのような視点で支援をしていくことが求められるのかという「サポステ等の現場から見えてきた"今"の若年相談者の実情のまとめ」と、そして、相談者の半数である"女性"に特化した「女性の就職の実情およびキャリア・コンサルタントの課題」の2つの視点から書かせて頂きます。女性の実情を書かせて頂いた訳は、就職活動支援場面において、女性独特な問題(社会環境的・心理的・発達的を含む)の支援の難しさを、同姓ながら日々感じているからです。これから就労支援に携わりたいと思われている支援者の方々や現在、若者支援に携わっている方々の一助になれば幸いに思います。
1、サポステ等の現場から見えてきた"今"の若年相談者の実情のまとめどの年代の相談者にも共通する特徴は「未成熟」であることだと感じます。年相応の成熟度に達していない様子が伺えます。また、相談者は一様に就労を希望し、急いでいる(焦っている)様子も伺えます。では、キャリア・コンサルタントとして、このような未成熟の相談者にどのように支援をしていけば良いのでしょうか。 私たちコンサルタントは相談者とコンサルティングの回数を重ねながら、相談者が速やかに内定が得られることを目標に共に歩みます。しかし、就労経験が少ない(アルバイトも経験の無い方もいます)こともあり、仕事観が養われていないため、「仕事をするとは」、「働くとは」ということをイメージできないという問題や、人と接する機会を自分から遠ざけて来られた方も多いため、自分を客観的に見ることができない方、自己効力感が低い方も多く、面接を受けることが出来ない等の問題もあります。そのような相談者の方々が、自ら仕事を選び、面接で等身大の自分のことを話せるようになるためには、個人差はありますが、コンサルティングに費やす時間と回数がかかりますので、コンサルタントは根気強く支援していくことが求められます。「未成熟」な相談者に対しての支援は、相談者の抱えている問題や相談者の人柄を理解し、相談者の自立・自律への支援の方針の一貫としまして、学習を体験的に積み重ねていただくことが必要だと思います。要するに、1対1のキャリア・コンサルティングで相談者に「社会」や「仕事」について覚えて頂くよりも、キャリア・コンサルタントは、外の世界での学習経験を積み重ねる前後のプラットフォーム機能を担っていくことが大切だと思います。 年齢的な焦りから、正社員での就労を希望される相談者は多いですが、先ずは、アルバイトを経験したり、相談者によっては"就労体験"などに参加したりしながら、働くことや、社会のシステムに対しての知識を得て行くことが、結果的に長期の就労に結びつきやすいと思います。「仕事を覚えること」、「自分から動いてみること」、「失敗すること」、「指導されること」などの一連の仕事の流れを歩ながら、コンサルティングの中でフォローするような、「社会」と「コンサルティング」との両輪で相談者を支援する必要があると思います。 相談者にとって、就労へ向かう、あらゆるルートから最良のルートを提案していく力が必要になると思います。
2、女性の就職の実情およびキャリア・コンサルタントの課題一概に言えないかもしれませんが、私から見ると就職活動への危機意識は男性よりも女性の方が高いように感じます。ですから就職活動も早くからコツコツと取り組む方が多く見受けられます。最近の女性の特徴でしょうか、「私は生涯働きたい!」と考えている方が多いです。結婚して子育てをしながらも自分は社会の中で定年までしっかりと仕事をして行きたいと考えることは大変素晴らしいと思い、頼もしくも思います。しかし、その意識が強すぎる方は、「将来」という今は何も確定していない(どうなるかも分からない)ことへの備えが強すぎて、"今"をチャレンジできずに、働きやすい仕事(相談者の方々はノルマや残業が少ない仕事と言われます)や、転勤が無いなど環境変化の少ない仕事を探そうとしている方がいます。彼女らは「結婚したら家庭と仕事と両立したいから〇〇でないと」、「子供が出来たら子育てしながら働けるように〇〇がいい」というように、今から"備え"をはじめています。私は「結婚相手が転勤することもあるかもしれませんね。」、「将来は決めたとおりになるかどうか分からないですね。今は自分のしたいことを考えてみることはいかがでしょうか」と尋ねると、「取りあえずは"将来がどうなっても大丈夫なように"しておきたい」と話されます。相談者が持っている潜在的な能力や可能性、学校で学んだ知識を活用できない(しようとしない)相談者の方が大勢いることが特徴に挙げられます。
3、女性の就職活動におけるキャリア・コンサルタントの課題私の周りのキャリア・コンサルタントの中には、異性の相談者に対して、得手・不得手に思っていらっしゃる方もいます。私は、相談者を、一人の嬉しさや不安など様々な感情・固有ものの考え・理想とする姿への希みを持つ人間として見ています。その上で、日本の文化・社会の中で抱える問題を相談者視点で、時には、寄り添い(Being)、時には適職テスト、情報提供や励まし・ねぎらい等を積極的にします(Doing)。このような女性の相談者を理解する役立つ主な一般的な視点(「女性とはこういうものだ」と決めつけない配慮が必要ですが)としまして、図表 1のような一般的な視点があると一助になると思います。 ![]() 女性も男性も社会の中で、両者は相互に影響関係にありますので、女性の相談者が、両者の相互影響関係の社会を通して、何に悩んでいるのか、何に困っているのかを全体として理解することが大切だと思います。 キャリア・コンサルタントとしての私は、このような視点を持つことで、女性の相談者とそれを取り巻く様々な事象を全体として視野を拡げていくことを続けています。自己研鑽には終わりがありませんが、これほど多くを学べることは、私にとって(時には辛く感じる時もありますが)、喜びに感じることでもあります。
4、最後に今回で、最終号になります。これまで読者の皆様は、時には、相談者の視点で、企業の視点で、キャリア・コンサルタントの視点でお読み頂いたと思います。皆様がそれぞれの社会の中で、少なくとも共に悩み、喜び、そして社会を動かしていると思いますので、三者が理解し合うことが何よりも大切だと思います。長らくお読み下さった皆様へ感謝申し上げます。
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