JAVADA情報マガジン5月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-
◆2015年5月号◆
今、キャリア・コンサルティング現場の就労希望者の実情とキャリア・コンサルタントの課題〜若者サポートステーション(通称:サポステ)等の現場から〜 |
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特定非営利活動法人こうべユースネット 若者自立・就労支援事業部 |
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はじめに4月号では、サポステ等の現場から見えてきた"今"の若年相談者の実情「学卒3以内の未内定者の実情および企業とキャリア・コンサルタントの課題について」書かせて頂きましたが、今月号では、「既卒4年目以降の20代の未内定者の実情および企業とキャリア・コンサルタントの課題について」を書かせて頂きます。これから就労支援に携わりたいと思われている支援者の方々や若者を雇用する企業等の方々の一助になれば幸いに思います。
"今"の若年相談者の実情 - 既卒4年目以降20代の未内定者-サポステ等の就労支援機関を利用する概ね、既卒4年目以降20代の相談者の就職に関しての現場を相談者の、内面的側面、環境的側面、の2方向から述べさせて頂きます。
(1)"今"の若年相談者の実情 - 既卒4年目以降20代の未内定者の実情-① 内面的側面20代の相談者は様々な経歴や学歴をお持ちです。中でも難関国立私立大学卒業あるいは大学院(主に修士課程)卒業が少なくありません。このような経歴から、読者の皆さんは彼らが知識レベルの優秀さを備えていることはお察しの通りだと思います。私が出会う相談者の多くが『学力の優秀さ=就職し得える能力の優秀さ』とは必ずしも一致していない印象を持ちます。彼らは、小・中・高生のいずれかの時期に中学・高校・大学への受験勉強と部活動を続けて来た結果、努力が実を結び、一般的にはすばらしい(彼らにとってはすばらしいことかどうかは不明ですが...)経歴を得るわけですが、彼らの多くが『自信のなさ』を抱いていることが特長です。客観的に彼らは勤勉で、昔は目標に向かい忍耐強く努力した経験を持っていることが人間的な魅力だと思うのですが、彼らはそう思えない心理的な規制が内在しています。
② 環境的側面彼らの内面的側面にも関連しますが、相談者は『自分にとっての働く意味』を深く考える機会をもってこなかったことが少なくありません。サポステへの主な来所のきっかけは、親御さんに急かされたり、ハローワークや地方自治体の担当部局等の公的機関からの情報提供によるものが目立ちます。もちろん、自分で何とかしなければいけないという思いで来所する人もいますが、その理由としては、周囲の友人や同年代の人達が働いている姿を見て焦りを感じ、「このままではマズいかも」「そろそろ何とかしなくては」というように、外的刺激によって相談(支援)を受けようと考え始めることが多いようです。自らが、内的な気持ちから「働きたい」「自分を変えたい」という湧き上がってくる気持ちに裏付けされていないために、"焦り"を感じながらも、働かないことが常態化しており、もう少し今のままで居れたらいいのにと思う人が見受けられます。
(2)企業は既卒4年目以降20代の未内定者をどのように理解すると人材発見につながりやすいか企業の皆さんが求める20代の若手社員の"人材像"と、相談者である彼らがイメージしている企業に求められる"人材像"とのギャップがあるように思います。
(3)既卒4年目以降20代の未内定者へのキャリア・コンサルタントの課題は何か①キャリア・コンサルタントは、企業と相談者との"ギャップ"を埋める役割になることが大切だと思います。相談者は社会を、そして企業をよく知りません。先述したように、相談者がエントリーする際には企業の求人情報に記載されている内容だけが頼りです。そこで、キャリア・コンサルタントはその企業の業界事情や企業情報、そして記載内容を十分に吟味して、企業の求める人材ビジョンについて見立てることが大切です。つまり、キャリア・コンサルタントは求人情報から、企業の求める人材事情を推測できる能力が不可欠だということです。そして相談者へ分かりやすく噛み砕いて説明することも良いですが、キャリア・コンサルタントと相談者が企業について共に考えを巡らせることで、相談者にとっては、企業研究ともなり、産業社会の在り方や経済の流れを学ぶ"機会"を持てると思います。企業の求める人材に合致しているか否かを取り上げずに"相談者が希望するからエントリーをサポートする"ことを続けていると、不採用の数が増えてしまい、動けなくなることもあるようです。不採用になるのには、その理由があるはずです。その理由は、エントリーに至るまでの過程を共に考えてきたキャリア・コンサルタントの支援のあり方の振り返りでもあります。相談者とキャリア・コンサルタントが共に振り返り、次のエントリーに向けて態勢を整える機会を提供することは、キャリア・コンサルタントの大切な役割だと思います。 ②既卒4年目以降になると、「自分は社会的ルートから外れてしまった」「まっとうな道は望めない」「負け組だ」等の思いが一層強くなる相談者が見受けられます。中には日本の新卒採用を好む雇用体制に不満を持つ相談者もいました。「どうせ自分はもうダメ」という彼らの思いが、就職に対して前向きになれない様子が見えてきます。そのような相談者に対して、自分の価値を見つけ出し、主体的に動けるよう支援することは難度の高いことと思いますが、それこそ若者支援のポイントだと考えます。キャリアの知識、心理的支援の知識、企業や雇用情勢の知識、すべてが必要であり、相談者の価値観や経験を踏まえ、個々に合った支援の形を(相談者に合わせ、まるでカメレオン的に)、作り上げられると素晴らしいと感じます。相談者が「自分はまだ磨かれていない原石である」という思いを持てるよう支援していくことを大切にしていただければと思います。
写真提供:NPO法人こうべユースネット
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