JAVADA情報マガジン1月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2015年1月号

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キャリア・コンサルティング普及への取り組み~私の描く対人援助者の将来像~
第2回『キャリア・コンサルティング普及のための課題(1)』

株式会社ASキャリア 代表取締役 瀬谷 俊宏 氏 《プロフィール》 

はじめに

今月号と次月号の2回に渡って、私の実践経験から考える「キャリア・コンサルティング普及のための課題」について、述べさせて頂くことにする。私よりも多くの実践経験とキャリア・コンサルティングの造詣の深い皆様やこれから実践経験を積んでいかれる皆様が、私のような考えと取り組みをしていることを知って頂き、温かく見守って頂けると幸いである。

 

(1)キャリア・コンサルティングの現状について

キャリア・コンサルタント養成講座(現標準レベルキャリア・コンサルタント養成講座)が開始されて約10年が経つ。その間、キャリア・コンサルティングは、国・公的機関や民間企業、非営利活動法人等の並々ならぬ努力の下、一定の認知度を得ることができたと思う。
 しかし、キャリア・コンサルタントを取り巻く身分保証や雇用環境は、これから先30年を考えると、決して楽観視できないと思う。厚生労働省委託「平成25年度「キャリア・コンサルティング研究会 キャリア・コンサルタントが有するキャリア・コンサルティング能力の実態等に関する検討部会報告書」(平成26年3月)」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)の調べによると、キャリア・コンサルタントの性別比率は、男性42.4%、女性57.6%である。また、就業形態は、①正社員・職員は31.1%②フリー・自営業(委託・請負等含む)は14.4%、③非正規社員・職員は39.7%であり、正社員・職員の割合は3分の1程度の方々である。
 また、厚生労働省委託「キャリア・コンサルティングに関する実態調査結果報告書(平成23年3月)」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)の調べによると、キャリア・コンサルタントの性別比率は、男性52.3%、女性47.7%である。また、雇用形態は、①正規職員・従業員は45.2%、②フリー・自営業は28.0%、③非正規従業員(契約・嘱託・1パートタイマー等)33.0%であり、正規職員・従業員の割合は半数に及んでいない。両年度調査ともに、キャリア・コンサルタント有資格者としての正規雇用は依然厳しいと言える。
 さらに回答者の直近1年間の年収(キャリア・コンサルティングに関連する活動」以外の収入を含む)は、300万~400万円未満が18.5%とも多く、次いで200万~300万円未満が15.8%、400万~500万円未満が11.4%、500万~600万円未満が10.0%、1000万円以上が8.0%、100万円以下が8.0%である。キャリア・コンサルタントだけの年収では雇用と生活への安心感があるとは言い難い。
 その現状に対して、キャリア・コンサルタントである私の考える大きな課題の1つは、キャリア・コンサルタントの身分保証である。2つは、キャリア・コンサルタントの雇用環境である。

 

(2)キャリア・コンサルタントの身分保証について

キャリア・コンサルティング技能士(国家資格)が登場した昨今、キャリア・コンサルティングを通じて、相談者の自立・自律を援助できる技能の高い技能士を輩出することは、とても意味があると思う。しかし、その一方で、キャリア・コンサルタントの資格が、歴史のある国家資格(特に、広く対人援助専門職;医師や司法試験等)と同じ位の必要な技能を持ち合わせているかと言われれば、まだまだ発展途上だと思える。私としては、技能は到底足元にも及ばないと自分自身を鼓舞して、より一層の努力をしていこうと誓っている。他のキャリア・コンサルタントの皆様の中にも、私と同じように感じている方も少なくないのではないだろうか。現行の制度の下、私は最も信頼のおける、また、私にはない人間的魅力と技能やセンスを兼ね備えた(本人は控え目であり、そのようには言っていないが)ビジネスパートナーとともに、法人(株式会社ASキャリア)を設立した。法人設立は、私たち自身の技能や人間的魅力の飽くなき探求でもある。
 法人を設立することで、「この(キャリア・コンサルティング)業界で、生きていこう」と腹を決めたことに不安がないというと嘘になるが、そのおかげで多くの異業種の方々と出会うことができたこと、それぞれの道のプロの優れた感性に触れることができたことは、何事にもかえがたい経験である。この貴重な出会いは、私たちの宝となっている。
 最も感化されたのは、プロとしての生き方である。私たちの知る彼らは、たとえ業務独占や名称独占の超難易度の高い国家資格保持者であっても、決して驕らず、気取らず、弛まざる努力を惜しまない方々だということである。彼らを見ていると、もっともっと努力しなければ、どんどん引き離されて行く気がしてならない。身分保証とは、彼らの業界のように永年に渡る弛まざる努力がもたらすのではないだろうか。そう考えると、私はキャリア・コンサルティング業界もそれ以上の努力が必要だと思う。

独立開業セミナー風景
写真左 「独立開業セミナー(個人・法人)」レジュメ表紙
出所:株式会社ASキャリア
独立開業セミナー風景
写真右 中央登壇:浅田実果
(株式会社ASキャリア 取締役)
出所:株式会社ASキャリア

(3)キャリア・コンサルタントの雇用環境について

先述の報告書の通り、キャリア・コンサルタントの雇用環境は決していいとは言えない。勿論、キャリア・コンサルタントが皆一様に『キャリア・コンサルタント資格』で正規雇用を望んでいるわけではない。自分のライフスタイルに合った働き方が何よりも大切であると思う。
 しかし、キャリア・コンサルティング業で生計を立てて行きたい方にとっては、安定した雇用を切望する声も、私の周りには数多く存在する。私は、安定雇用の獲得には、まず社会的地位の確立(認知度、有用性、技能の高さ等の理解)があって初めて成されると思う。私の原動力は、30年先のキャリア・コンサルティング業界が、社会の要請に応え、キャリア・コンサルタント一人一人が、生活や雇用の不安を抱くことなく、生き生きと活躍する姿を描くことである。そのためには、私は今、何をすべきか?私の使命は何か?を考え続け、取り組み続けることが、私のすべきことのように思う。私たち法人は、キャリア・コンサルタント業界の厳しい身分保障・雇用環境という荒波へ、あえて船出した小舟である。「身分」を自身で「宣言」することや、仕事環境を自身で作り上げる事も出来るのだと、他のキャリア・コンサルタントやこれから目指す人たちに示していきたい。それがASキャリアの原点である。

株式会社ASキャリアのロゴマーク
出所:株式会社ASキャリア

 

(4)法人設立はチャレンジ

私と同じ志しを持つビジネスパートナーと法人を設立したが、日本中で最も小さい企業であるが、志は日本一でありたいと思う。設立時から今尚も、困難な船出をしている。その過程でさまざまなものを失ってきたが、それ以上に得たものは大きかった。それは、私たちを支えてくれる多くの方々であり、感謝してもし過ぎることはない。私たちのチャレンジが本当に正しいのか?と道に迷った時、彼らの支えでどうにかここまでやって来れた。つくづく人との繋がりは大切だと実感している。特に古今堂氏(現公益法人財団法人関西カウンセリングセンター理事長)との出会いは、一生のものだと思っている。私がキャリア・コンサルタントとして、ヒヨッコだった頃、古今堂氏は事務局長補佐だった。当時の私たちは、目的は違えども、「今を良しとしない」という思いで相通じてきた。そして、「今日よりも明日、明日よりも明後日・・・」というように、両者それぞれのやり方で毎日を積み重ねてきた。今思えば、本当に猪突猛進だったと恥ずかしい限りである。私たちがASキャリアを設立した初期、関西カウンセリングセンターは、私たちを信じて、全国キャリア支援フォーラムへの惜しみないご尽力だけでははなく、さまざまな講座の開講の支援をして下さった。その恩返しは今日まで続いており、半分もできていないことに些かお恥ずかしい限りである。そして、益々のキャリア・コンサルタントの社会的普及のため、来年早々にキャリア・コンサルタント養成講座に変革をもたらすプロジェクト議論を積み重ねてきた甲斐があって、最終段階に来ている(乙ご期待ください)。この新たな取り組みが、キャリア・コンサルティング業界の拡がりになればということを切に願って、古今堂理事長と竹腰事務局長補佐と共に具体的進めている。私は、キャリア・コンサルティング業界の普及のためには、「リスクを恐れず、まずやってみる」という関西カウンセリングセンターの両氏の発想と「出来ないと憂えるのではなく、行動を起こす」という私たち法人の考え方が相当符合していると思う。両氏との関係を通して、ビジネスにおいても深い信頼関係が大切だとあらめて実感している。

第1回キャリア・コンサルタント実力アップ事例発表プロジェクト

 

 


文献・写真;

  • 厚生労働省委託『キャリア・コンサルティングに関する実態調査結果 報告書(平成23年3月)』(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
  • 厚生労働省委託『平成25年度「キャリア・コンサルティング研究会 -キャリア・コンサルタントが有するキャリア・コンサルティング能力の実態等に関する検討部会報告書」(平成26年3月)』(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
  • 公益財団法人 関西カウンセリングセンター https://www.kscc.or.jp/
  • 株式会社ASキャリア http://www.ascareer.jp/

 

 

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