JAVADA情報マガジン7月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2014年7月号

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第4回 キャリアの現場から「キャリア・コンサルタントとして、私のこれからの課題」

ディーリンクス 代表
  特定非営利活動法人 日本キャリア・カウンセリング研究会 理事  
   池元正美 氏 《プロフィール》 

4月から担当いたしました情報マガジンは、今回が最終回です。

今回は、日ごろの活動やキャリア・コンサルタントの方々との交流の中から考えているキャリア・コンサルティングを巡っての課題や私自身の今後の課題について書いてみます。

 

【カウンセリング活動について】

カウンセリングについては理論を学び、実践し、評価すること、そして適切な指導(スーパービジョン)を受けることが重要なことですが、実際のところは自分自身のカウンセリング場面を振り返り、評価する場面は通常業務の中では少ないのではないかと感じています。

私は企業や個人の方々からの依頼によりカウンセリングをする場面があります。また一般の方々を対象にカウンセリングの基本や考え方を学ぶ勉強会も定期的に開き、時にはカウンセラー仲間とロールプレイや逐語記録を使った事例検討など自主的な学習の場を主催することもあります。

一方で実際にはカウンセリングする現場を持てないでいる方は多く、スーパービジョンを積極的に受けている方も少ないのではないでしょうか。特に地方においては、身近にスーパーバイザーがいない事もあり、一層チャンスが限られていると思います。

今後予想される時代や社会環境の変化に対応していくためにも、キャリア・コンサルタントの活躍の場も広くなり、そのカウンセリング能力の向上がとても重要になってくると思っています。

現実的にはカウンセリング能力を高めるための課題は多いですが、当面は仲間たちと一緒に、理論を学び、事例検討などを通して定期的に語り合いながら学べる場を確保していきたいです。また今後、地元鹿児島でも、指導者の方にお願いしてスーパービジョンの場を定期的に持てるようにしていきたいです。そのためにも、自分自身でもキャリア開発やカウンセリングに関する理論・スキルでまだ習得できていない分野についてさらに学習し、人に伝え、応用できるレベルにまで身に着けていきたいと考えています。

そして更に、キャリア・カウンセリングが私の周囲の働く方々にとって身近なものになるよう学びの場を広げ、自分のキャリアについて、いつでも気軽に相談できる環境づくりにも取り組んでいきたいです。

 

【専門家と現場をつなぐもの】

私は、企業の中にもっとキャリア開発の考えが広がって行く必要があると感じており、そのための活動に取り組んでいます。企業内でキャリア開発に関する理論や知識を学んでいる方がいて、外部のキャリア・コンサルタントと連携していくことで、企業において、より柔軟なキャリア開発支援が可能になって行くのではないでしょうか。キャリア開発を推進していく方が企業内にいることで、組織の活性化や人材育成、人材開発の取り組みが機能していくのではないかと考えているのです。

そのことを実現していくため、鹿児島県職業能力開発協会において『導入レベルのキャリア・コンサルティング講習』を実施しています。

講座を受講して下さった方々とは企業訪問を通じて、キャリア開発支援の現状や課題などについて話し合ったり、対応策を提案・情報提供したりしています。講座で学んだ知識を、更に書籍等で学んでいる方や、社内に広げる活動をしている方、社内研修や面談の際に実践していただいている方なども増えてきており心強く感じています。今後も引き続き情報提供など必要なサポートをさせていただきたいと考えております。何より、働く現場の皆様にキャリア開発に関心を持っていただき、一緒に取り組めることが嬉しいです。今年度はこれまで実施している二日間の基礎講習に加えて、次のステップとなる実践講習も開催する予定です。

今後は、企業内にいらっしゃるキャリア開発支援者の方々と、私たちキャリア開発の専門家が密に連携を取り、一人ひとりの働く方々と組織が共生関係を築いていけるような環境作りに挑戦していきたいと思っています。

 

【教育・普及活動について】

キャリア・コンサルタントに求められている活動の中に教育・普及活動があります。

私は九州を中心に、キャリア開発に関する講演や研修を実施しています。当社の独自事業として実施するものもありますが、行政や団体・企業からの依頼も増えてきました。キャリア開発に関するテーマは幅広いですが、現在私はリーダーシップやマネジメント、モチベーション、人間理解力、ワーク・ライフ・バランスなどについてのものが多いです。また大学でもキャリア開発の考え方については様々な場面で学生たちに伝えています。

講座・研修等で参加者の皆さんにキャリア開発についての考えをお伝えすると、これまで課題になっていたことに関して、「解決に向けてのヒントを得ることができた」「取り組んでいくための方向性がつかめた」という声をいただくことが多いです。また、自分自身のキャリアについて考え、働く上での軸を再発見していただくこともあります。知識や理論を学ぶことで、それぞれの現場で起こっていることに関しての視野が広がり、対処法も気づくことができるようです。終了後メール等で質問をしていただくことも多く、やり取りを通してキャリア開発に関して私たちが持っている知識や経験が、様々な方々に必要なものであるということを実感するとともに、教育・普及活動の重要性を感じます。

また最近、様々な勉強会の場で、学んだ知識について「知っているけど実行できない」「分かっているけど実践できない」ことがあり、どのようにすれば実践できるかという質問もいただくことが続きました。その疑問に対して、参加者の皆さんと「なぜ、実践できないのか」について議論しながら考えてきました。議論を通して【学ぶこと】⇔【実践すること】を何回も繰り返していくことで意識しなくても行動できるようになり、知識が【自分のもの】になって行く。そして、その知識を応用していくことで更に能力開発へと繋がって行くのではないかという意見でまとまりました。このように、お互いの知識や経験を持ち寄り、新しい知恵を生み出していくことがキャリア開発になるのではないかと感じています。キャリア開発をテーマに、様々な方たちと語り合う場面をもっと多く持ちたいと考えています。

 

【キャリア開発の実務家として私が目指していきたいことと課題】

社会が激しい勢い変化にさらされているということが、これまで様々な場面で語られてきており、同時にキャリア・コンサルタントの社会的意義は高まってきていると思います。今後はさらに変化の様子が変わり、より先の見えない時代が来るのかもしれません。そんな中、キャリア・コンサルタントにはますます高い能力が必要とされ、その在り様も重要になって行くのではないかと考えています。

地方においてはキャリア・コンサルタントの方々の自己研鑽の機会の確保が重要になっています。資格やスキルアップのためだけでなく、地域で求められるキャリア開発の専門家となっていくための学びの場を広げていく必要があります。私はキャリア開発支援の実務家としての活動を中心に置きつつ、今後は導入レベル、標準レベルのキャリア・コンサルタントの方々を対象としたスキルアップのお手伝いを継続していくことで、実務に取り組んでいく方たちが増えていくように努力していきたいと考えています。

そして、私自身が与えられた環境で【個人と組織の新たな共生を追求】していけるキャリア・コンサルンタントとなることを目指していきたいとと思っています。

以上で私のレポートは終了させていただきます。今回の連載を担当させていただいたことで、自分自身の活動や目標を振り返ることが出来ました。取り組むべき課題も見つかりました。自由に自分の考えを発表できる機会をいただけたことに感謝しています。

これまでの記事に関して、読んでいただいた皆様のご意見・ご指摘・ご感想などをいただけると幸いです。4ヶ月間お付き合いいただきありがとうございました。

 

 

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