JAVADA情報マガジン6月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-
◆2014年6月号◆
第3回 キャリアの現場から「企業におけるキャリア開発支援のための取り組み方」 |
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ディーリンクス 代表 |
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現在私は、鹿児島県職業能力開発協会において【キャリア形成サポーター】【人材育成コンサルタント】として活動をしており、キャリア開発を主なテーマに県内企業のお手伝いをさせていただいております。また、他の事業の中でも、企業の方々からも相談いただいく機会も増えてきました。
企業の方々とお話すると、共通して話題に登ることは「社員の育成・定着」「中高年社員のモチベーション」「管理者・評価者の能力」があります。また最近では採用を巡っての話題として「人材の見分け方」「応募者の確保」などもあります。 私のキャリア・コンサルタントとしてのスタンスは、NPO日本キャリア・カウンセリング研究会(JCC)の理念でもある【個人と組織の新たな共生を追求する】ことでありますので、企業の方々と生の現場に関して考え、提案し、行動していく場があることはとても恵まれた環境だと思っています。その環境の中で、キャリア開発に関する考え方が企業・従業員双方にとって重要であり、お互いの成長のために欠かせないものであることを知っていただけるような活動をしております。
一つは中央職業能力開発協会が取り組んでいる【キャリア診断】があります。企業におけるキャリア開発支援の現状を会社側へのヒアリング、従業員へのアンケート調査により双方の認識のズレをデータ化し、そのズレの背景を従業員のカウンセリングを通してさらに考え、課題を見つけていきます。最終的には気づいた課題とその解決に向けての具体的な取り組み方についてレポートにまとめ会社側に報告します。
診断の他に、企業内での研修・勉強会も担当することもあります。キャリア診断の結果を見ると、管理者の能力向上、評価の質を高めること、社員のキャリア自覚促進、目標設定及び評価の在り方などがテーマになることが多く、企業の方々からの相談でも同じような傾向が見られます。これらのテーマに向き合うために【リーダーシップ】【ファシリテーション】【人間理解力】などを中心にキャリア開発に関する知識や考え方を学んでいただくための研修プログラムを提供することもあり、【目標による管理(MBO)】への本来の取り組み方についてお話しすることもあります。考え方や捉え方を知らないことで、課題への対応策を明確に定めることができない例も見受けられ、管理者、担当者が必要な知識を学ぶことで、自ら解決策を構築できることも多いと感じています。キャリア開発や組織に関する学びを通して、自分自身が抱えている課題と向き合うためのヒントを見つけ、実践していただけるようお手伝いする機会も増えてきました。
また、キャリア開発に関する理論や考え方を学び合う場づくりも進めています。私の地元では【キャリア開発読書会】として月一回テキストを読みながら語り合う機会を作っています。現在のテキストは『キャリア開発24の扉』(文末に参考図書として紹介)です。 県外では福岡、熊本、長崎において、参加者からの事例・質問等をお聞きし、それらを題材にキャリア開発の視点から議論し、理論や考え方に関する解説を通して学べる講座を開催しております。 以上のように、キャリア開発の考え方が企業や組織の現場に広がっていくことを目標に活動しているのですが、一昨年あたりから企業の経営者・管理者・人事担当者の方々を中心にキャリア開発への関心が高まってきていることを感じています。私がキャリア形成サポーターを担当している鹿児島県職業能力開発協会では毎年、職業能力開発推進者を対象にした「導入レベルのキャリア・コンサルティング研修」や「職業能力評価基準活用セミナー」を実施しているのですが、昨年度はいずれの講座も参加申込者が定員を大きく超え、追加の講座を開催する状態になっております。講座の中で参加者の方々からお話をお伺いすると、具体的な質問や問い合わせも多く、質問者以外の方も回答を熱心にメモする様子が見受けられます。講座ではワークシートへの記入、グループワークでの話し合いも行っているのですが、とても活発に取り組んでいただき、体験を通して具体的に学んでいただく時間になっています。後日、企業訪問の際参加者の方々からお話をお伺いすると、講座内容を早速社内研修や評価制度整備のために活用していただいている方も多く、実践した過程での新たな質問や相談をいただくこともあり、さらにキャリア開発支援への取り組みが進んでいることを実感します。 現場の方たちは、自分たちがどのように取り組んでいけば課題解決に向けて一歩踏み出すことができるのかを体験することで、日々発生する様々な出来事に対処していく意欲が高まることにもつながっているようです。 私たちキャリア・コンサルタントは課題を整理し、必要な情報・知識を提供し、関係者が自らの課題に気づき、解決に向けて行動できるように支援していくことが求められているのではないでしょうか。企業の方々と外部の専門家がお互いの知恵を持ち寄って、企業におけるキャリア開発に取り組む機会は今後も広がり、重要性を増してくるのではないかと感じているところです。 今回は私が企業・組織の方々と取り組んでいるキャリア開発支援の様子についてお伝えしました。次回はここまでの3回の記事を踏まえ、今後私がキャリアの現場で仕事をしていく中で、自分自身の課題やこれからの目標・目指していく方向性について、キャリア・コンサルタントが必要とされている場面などについてお伝えしたいと思っております。
参考書籍及び関連資料等
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