【キャリア・コンサルタントとして】~自己紹介を兼ねて~
皆さん。はじめまして。私は鹿児島県の南端にある観光地指宿市に拠点を置き、キャリア・コンサルタントとして活動しています池元正美と申します。今回から機会をいただき執筆を担当させていただきます。最後までどうぞよろしくお付き合いください。
私は研究者でもなく、指導者でもなく、一人のキャリア・コンサルタントとして、キャリア開発を通じて周囲の方々や社会と繋がっていきたいとの思いで日々業務に取り組んでおります。キャリア・コンサルタントとして仕事に取り組み始めた頃は、地元の人に私がやっている仕事をお話ししても、「キャリアって何?何をする人なの?」といった反応が多く、家族にもよく理解してもらえないところからの出発でした。
あれから10年経過して、社会も地域も大きく変化し、最近ではキャリア・コンサルティングに関心を持っていただく方や、企業からのキャリア・カウンセリングの依頼もいただくようになってきており、一緒にキャリア開発の勉強会に取り組んでいる管理者の方もいらっしゃいます。
今回の連載では4回に分けて、田舎でキャリア開発の実務家として取り組んでいく中で感じていることや課題について、皆さんにお伝えできればと考えております。
【4回の予定】
第1回 キャリアの現場から「キャリア・コンサルタントとしての活動の場」
第2回 キャリアの現場から「学生・若者のキャリア開発・就職活動支援」
第3回 キャリアの現場から「企業におけるキャリア開発支援の進め方」
第4回 キャリアの現場から「キャリア・コンサルタントとして、私のこれからの課題」
【キャリア・コンサルタントとしての実際の活動】
私は現在、キャリア・コンサルタントとして複数の仕事を兼任しております。これは人口が少なく、専門職に対する需要が少ないこともあり、組織に属して働いているキャリア・コンサルタントの方が多く、フリーランスの専門家が少ない(仕事として成立しにくい)地方での特徴なのかも知れません。
私がキャリア・コンサルティングについて学んだのは、平成15年の雇用能力開発機構(現独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)主催によるキャリア・コンサルタント養成講座が最初でした。当時は職業訓練校を運営しており、訓練生の就職活動を支援することに役立つのではないかと考え、基本的な知識もないままに受講しました。その後、主に職業訓練に限定した取り組みをしておりましたが、10年を経て職業訓練からキャリア・コンサルタントとしての活動へと変化していったのです。
現在の私の主な活動分野としては、大学でのキャリアデザイン科目の非常勤講師、求職者向けの就職活動セミナーやキャリアに関する講話、キャリア開発・ヒューマンスキル・人材育成・組織マネジメントに関する講座の講師、企業のコンサルティング、そして鹿児島県職業能力開発協会のキャリア形成サポーターといったものがあり、それぞれが少しずつ関連しあいながら日々取り組んでおります。
【大学での私の取り組み】
平成23年4月より、地元の私立鹿児島国際大学でキャリアデザイン科目の非常勤講師として講義をしております。この大学では、平成20年度より大学の卒業生を対象にした就職支援をするためのサテライトオフィスを設けており(平成23年度末まで)、そこで私はキャリア・カウンセリングを担当しておりました。その後、講義を通して学生たちの就職活動に必要なスキルを身に付けるための科目を担当することになったのです。
講義では「コミュニケーション力育成」と「ビジネス実務」という科目を担当し、コミュニケーションを中心にしたヒューマンスキルの向上、社会人に必要な考え方や企業・組織の現状を知ることなどを目標に授業を進めています。講義では毎回グループによる話し合いをしていき、学生たちが自分の考えや意見をきちんと言えるよう訓練も重ねていきます。
学生たちは人との関係づくりに関する理論や企業の現状に高い関心を示し、知って試していく中で、少しずつではありますが確実に変化していきます。15回の講義を経て、その変化した姿に触れることで成長を実感するとき達成感を感じます。また直接のフィードバックや講義のアンケートでは様々な感想を聞くことができ、次の講義に向けての振り返りにもなります。キャリアの専門家が教育現場でキャリア開発についての専門知識を生かしていくことは、これから社会に旅立っていく学生たちにとっての教育環境として、とても重要なことだと実感しています。
【就職活動支援の取り組み】
求職者を対象にした就職活動支援セミナーは各地で開催されていることと思います。鹿児島でも、様々な講座が開催されていますが、私は若年者を対象にした「面接力アップセミナー」を担当させていただいております。セミナーでは【自己理解】に焦点を置き、シートを使って自分のことを確かめること、話すことを中心に取り組んでいきます。面接の場でありのままの自分を言語化できるよう、自分のことを整理し、言葉にしていくための準備や手法についても実際に試してもらいます。セミナーを通して自分の生きがい、働きがいに目を向け、自分を表現し、フィードバックし合う時間にもなっているのです。
ありのままの自分を大切にすること、働く上で何を大切にしていきたいのかを考え、話してみる過程で、就職活動での自分の課題と目標、準備しなくてはならないこと、そして気づいていなかった自分を発見することもあり、それぞれに何かを掴んでもらっているようです。
セミナーで出会った若者たちの中にはfacebookやメール等で感想や質問、その後の就職状況を連絡してくれる人もあり、私にとっては貴重なフィードバックになっております。
【企業とのかかわり】
キャリア・コンサルタントとして仕事を始めてしばらくは求職者の支援、若者支援、キャリア・コンサルタント仲間との自己研鑽の場が主な活動の場でしたが、4年ほど前から企業の方々とかかわる機会も増えてきました。
特に鹿児島県職業能力開発協会の評価者育成コーディネーター、人材育成コンサルタントを担うことになり、人材育成・評価・キャリア開発支援について企業の方々への情報提供やご質問にお答えする業務に取り組む中で現場の出来事に直接関わってきました。現在はキャリア形成サポーターとして『キャリア診断』や企業におけるキャリア・カウンセリングを担当する他、様々なキャリア開発に関する講座等で企業の人事・採用・教育担当の方々とお会いし、一緒に考える場面が多くなっております。
企業の方々からは、今、現場で起こっていることや様々な課題に関する問い合わせや相談があり、教科書に書いていることだけでは対応できないことも多いです。課題に対して関係者の気持ちや考えを整理・調整することもあり、課題解決に向けアドバイスや提案をすることもあります。まさにカウンセラーであり、コンサルタントであることを実感する場面でもあります。
管理者や経営者の方々にもキャリア開発に関する考え方や理論について知っていただくことで、組織をより良くしていくための手がかりとして関心を持っていただけるようになってきました。
鹿児島でも今後、労働人口が減少していくことが予想されており、企業の方々と触れ合う中で、人材確保・人材育成に危機感を募らせているトップマネジメントの方々も増えていることを実感しています。それだけに、これから組織においてはメンバーのキャリア開発の在り方、支援策に対する考え方がとても重要になってくるのではないかと考えています。
以上簡単にご紹介してきましたが、個人、企業、大学、行政など様々な立場の方たちとキャリア開発という視点でかかわり、キャリア開発支援に取り組んでいく日々の中で感じたことを、次回から少し詳しくお伝えしていきたいと思います。読者の皆様にとって少しでも参考になることがあれば嬉しいです。
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