JAVADA情報マガジン2月号 キャリアに関する研究者からの提言【キャリアナウ】
◆2015年2月号◆
発達障がい・精神障がい・ひきこもり(がち)の若者のキャリア支援現場における社会福祉領域からの提言~今、福祉職に求められる守備範囲の拡大~ |
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神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 准教授 |
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はじめに第1回では、「発達障がいのある若者とその家族の方々への就労支援の現状と課題」をテーマに書きました。今回は、「精神障がいのある若者とその家族の方々への就労支援の現状と課題」、さらに精神障がいのある方々を雇用している又は雇用をお考えの企業の現状と課題および職場での関わり方について、私の実践と研究の観点から書かせていただきます。尚、障がいのある方々への就労支援に関する法制度については、第1回連載の「2.社会福祉施策の今」をご参照ください。
1.精神障がいのある若者とその家族の方々の現状と課題 ~実務者の視点から~精神障がいのある若者(以下、当事者)とそのご家族の方々(以下、ご家族)につきまして、就労支援という観点から、私の就労支援の経験から便宜的に、おおむね次の3つの年代に分けて述べていきます。 (1)おおよそ17,18歳から23,24歳の時期①当事者の現状と課題につきましては、高校卒業の時期、大学卒業の時期から就職1~2年が経った頃です。 (2)おおよそ 25,26歳から30歳前半①当事者の現状と課題につきましては、この時期になると、精神疾患があっても病気とうまく付き合えるようになってきます。もちろん精神科や心療内科の医療機関に通院し、医師や臨床心理士、精神保健福祉士の助言や支援を受けながら回復への道をたどっていきます。働くことはお金を稼ぐだけでなく、そのものがリハビリテーションであり、社会参加であり、自尊心を保ち、生きがいを持つことにつながっていきます。短時間のアルバイトや就労支援の体験利用などができるようになります。徐々に就労体験を積むことが大切です。 (3)おおよそ30歳半ばから40歳前半①当事者の現状と課題につきましては、20歳前後の時期から比べると病状も安定してくる時期です。そして、主体的に就労支援の事業所を自ら利用しようという意欲が出てきたりします。ハローワークに登録し、積極的に就職活動ができてきたりもします。この時期になると、就労移行支援事業の利用者が一般就職することが多くなります。これは、就労準備期間に生活リズムを整え、対人関係やコミュニケーションの取り方、服薬管理などのトレーニングを十分に行うことにより、本人も働くことへの自信が生まれ、その結果、就労に結びつくことがあります。 このように若年の精神障がいのある方は、精神疾患を抱えながら働くことを目指すのが一般的です。これはとても大変なことであり、周りのサポートが必要になってきます。また本人も積極的にサポートを受けることが必要です。サポート受けながらの支援が就労への近道となるのです。もちろん精神疾患が完治すればいいのですが、疾患の性質上、長い回復の過程をたどることを十分に理解することが必要です。
2.精神障がいのある方々を雇用している又は雇用をお考えの企業の現状と課題および職場での関わり方法律で定められた一定規模の企業は、障がいのある方々を雇用するにあたって、法定雇用率が2.0に上昇した一方で、企業が彼らを「我が社の一員」として、どのように受け入れたらよいのか悩んでいる現状は想像に固くはないと思います。特に、企業は生産活動を行う上で人の採用をしているわけですから、基本的には仕事においても、人間関係においても安定している人、すなわち、精神的に安定している人を採用する必要があります。しかし、このような考え方だけで精神障がいのある方々を採用しなければならないとしますと、企業にとっても、当事者にとっても、また社会にとってもただ「義務で繋がった関係性」に過ぎないと思います。その繋がり方は、到底、発展性のある関係性とは思えないのです。日本の企業経営の良い風習、文化、風土等を見ますと、やはり企業と労働者が精神的にしっかりと繋がっていることが、「労働―対価としての賃金、福利厚生、安定雇用等の身分保障」を超えて、信頼関係を醸成するのではないでしょうか。すなわち「絆で繋がった関係性」が重要だと思います。
3.就労を支援する福祉専門職の役割と求められるスキル・能力等私たち支援者(社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士等)は、精神医学・臨床心理学に関する知識とソーシャルワークやカウンセリングなどの援助技術に関する方法を体型的に学んでおり、それぞれの専門職の拠り所とする理論やアプローチを取ることができます。勿論、それらの専門職は、他の医療のスペシャリストとチームで、当事者の社会的・精神的な自立を支援して行くことは言うまでもありません。しかし、当事者の希望が、就労ということを鑑みますと、これまでのように、手厚い社会福祉制度と賃金の両輪で生活を送って行くことを望んでいる方々だけではありません。彼らが、健常の方々の中で、生活と仕事できるようにして行く役割も福祉・医療領域の専門職の重要な役割のひとつとして、ますます期待が高まって来ていることを、支援現場では実感しています。
4.就労を支援する福祉専門職の課題~では、福祉専門職は、(ビジネスパーソンのそれと全く同じではないまでも)どこまでもビジネス感覚を得ることには限界があるのでしょうか。福祉専門職といっても、その経路はさまざまです。その中で、主流となる経路を2つ言うと、
これまでは①の経路が少なくありません。①、②ともに、社会福祉制度を活用して就労という生産活動を叶えるためには、これらの専門職の存在は欠かせません。そこに、就職支援に関する能力・スキルを有する「キャリア・コンサルタント」の知恵をお借りすることができます。まさに、チーム医療の福祉支援職版(チーム就労支援)です。特に、精神障がいのある若者とそのご家族の方々を限りなく包括的な支援を目指すためには、医療・福祉・キャリア等さまざまな専門分野の方々が、その様態に応じたそれぞれのアプローチ法を出し合い、コンサルテーションを重ねながら、統合的な支援計画と方法を作りあげることが課題だと思います。
(参考文献)
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