JAVADA情報マガジン9月号 キャリアに関する研究者からの提言【キャリアナウ】
◆2013年9月号◆
3.教員養成におけるインターンシップ・職場体験の実践とその効果 |
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(1)ゼミナールによる教員養成の実践中高保健体育教員免許の課程認定校である本学体育学部には、教員養成のための特別な教育課程があるわけではない。しかし、毎年1000名程度の教員免許取得者が存在する。本稿では、大学全体としての取り組みではなく、ゼミの学生を対象とした教員養成のプログラムを紹介する。特に、その中でも教職インターンシップの実践については詳細に紹介したい。 ゼミナールは3年生と4年生が受講するものであるが、2年生から希望者を集めてプレ・ゼミナールを開講し、前期で討論を中心としたグループ活動を実施している。討論は、与えられた教育課題に対する自らの考えをまとめ、グループ内で発表し、メンバーとの意見交換から討論へと発展させていく。 初めはワークシートに自分の短所を5つ書き、メンバーに渡して、メンバーが、それを長所に置き換えて推薦文を書き、発表するといったグループワークの展開である。これは、短所と思っていても見方を変えれば長所ととらえることができ、相手の長所を見つけることができれば、良好な人間関係を構築することができることを実習を通して理解するものである。この後は、コンセンサスゲームや意思決定ゲームなどを実習して、課題解決型討議へと進んでいく。「道徳の教科化」の問題が新聞紙面に掲載された時には、それを課題として各自の考えをまとめ、グループ内で発表し合い、討論した後、ファシリテーター役である教員がコメントを加えてまとめるといった展開で進めた。討論に慣れてきたら、いじめ問題や体罰問題など、重大な教育課題の内容を順次取り上げていくようにしている。 2年生の後期からは、体育授業の単元指導計画の作成が毎時間の課題となる。運動種目を決め、10時間程度の単元の指導計画を立て、毎時間使用する学習カードや技能チェックシート、グループノートやゲームで使うスコア―シートなど学習教材を開発していく。最近では手のひらに乗る大きさのワークシートにして、小さなリングノートに貼り付けて外でも書けるように工夫するようになってきた。また、体育実技の宿題を毎週課すようにして、練習効果を上げるとともに家庭での運動習慣を持たせることで、生涯体育・スポーツを定着させる工夫も取り入れている。 このように、大規模な授業の講義ではできない専門的な授業力を高める指導がゼミだからこそ実践できるといえる。その他、毎週のウィークリーテストやWebでの論文指導、勉強合宿などがこれまでのゼミの活動である。更にインターンシップや職場体験として、自然宿泊体験教室への指導員の派遣がある。学校は防犯や安全管理の観点からも、普段は関係者以外立ち入り禁止になっており、教職を目指している学生であっても、学校内で授業を見学したり、生徒指導の現場を見ることは困難なことであり、教育現場に触れるチャンスはあまりないのが現状である。このような状況の中で、指導員として学校行事に参加できることは、教師を目指す学生にとっては望ましい機会といえる。大学としても指導員としての参加が『社会貢献実習』や『インターンシップ』の科目履修として認めている。
(2)自然宿泊体験教室への指導員派遣を通した教員養成区教育委員会と連携して、区内の全小学校・中学校へ自然宿泊体験教室の指導員としてゼミの学生を派遣している。 体験教室の主な内容は、小学生が2泊3日で興津、中学生が3泊4日で八ヶ岳等において、自然の中で宿泊を伴った体験学習を行うもので、小学校低学年では浜辺での観察、ハイキング、天体観測などがあり、小学校高学年では、海や山の素材を生かした制作活動、町調査、海浜の生き物調査、砂上運動会などがある。中学生では、登山コースのハイキング、各施設での体験活動、酪農体験、冒険プログラム、夜はキャンプファイヤー、レクリエーション、地域の方の講話などが企画されている。全体の内容と流れを以下解説する。 1)自然宿泊体験教室への派遣指導員の登録
2)教育委員会指導主事による説明会の実施自然宿泊体験教室の事前指導として、4月下旬に区教育委員会の指導主事による説明会を開催している。児童生徒とのかかわり方や心構えなどについての講義で、以下がその内容である。 ①自然宿泊体験教室のねらいと主な学習活動、②引率者としての心構え、③指導者としての立場、④生活指導上の留意点、⑤特別な支援が必要な児童・生徒の対応 3)担当校への挨拶・打ち合わせ①活動する学校の管理職・担当教員への挨拶、②活動内容の説明を受け、指導員としての役割を理解する 4)児童・生徒の理解・交流①授業見学、授業指導補助、休み時間や学級活動での交流などによって、児童・生徒理解を深める。 ②担当教員から資料提供を受け、体験教室の内容の理解を深める。 5)引率指導員の活動内容①指導・生徒の整列・点呼の補助、②荷物の運搬・管理補助、③配布物の管理、④体験学習支援(体験学習補助・安全管理、野外活動支援) 6)宿泊支援①宿泊室の準備・点検、②リネン・寝具類の管理・指導、③児童・生徒の入浴指導・管理補助、④食事管理・指導補助、⑤児童・生徒の清掃指導補助、⑥給水場作業 実習後、ゼミ生は感動的な体験を語り、その後も学校からの要請で運動会や水泳教室などへの手伝いに足を運んでいる。このように経験・体験から得られた知識・理解は実践力へと発展していくものであり、教員養成としての大きな役割を果たすものである。
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