JAVADA情報マガジン8月号 キャリアに関する研究者からの提言【キャリアナウ】
◆2013年8月号◆
2.大学のキャリア教育における職業情報の意義と活用 |
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(1)就職活動の実態と現状の課題大学3年生になると就職情報を数多く収集し、エントリーシートの書き方や面接の受け方についての知識は増大していく。しかし、職業についての具体的な情報やしっかりとした将来への展望と希望を具体的に持っていない場合が多くみられる。 大学で学ぶ授業科目の中には将来の職業をイメージできないものも数多くあり、各自の進路に合わせた社会経験や情報収集が必要である。 最近の大学生の中には、社会に出ていくことに対して不安感を強く持っていたり、関心の低いまま就職活動を行っている学生も少なくない。なぜ働くのか、その会社で何をやりたいのか、将来はどうなっていきたいのかといった将来設計や人生設計、キャリアビジョンといった考えが持てずに目先の就職活動に追い立てられているようにみえる。 内定をもらった学生が人事担当者から、次回までに自分なりの目標を考えてきなさいと言われた。入社後、当面どのようなことを目指して働くのかといった内容は、人から教わることではなく、自分で考えなければならない課題である。しかし、何をどう考えたらいいのかがわからない、どうしていいかわからないから教えてほしいと相談に来た。話を聞くと、内定の出た企業やその業界についての知識がほとんどなく、単に営業事務の仕事に就くことしか考えていなかったと言う。そこで、その業界について勉強し、会社のことや自分の仕事の内容、将来どのような方向へ進んでいく可能性があるのかなどを調べることを提案した。そのうえで入社後の自分の生き方にもっと夢や希望を持ち、5年後あたりには自分はこうありたいという自分像を考えることを勧めた。一般的に学生からの相談や質問は、ほとんどが同様の内容である。 目の前の課題に対して自ら考えることなく答えを求めてくる依存した学生に、目先の課題解決に走るよりも、生涯を通した課題解決力を身につけることの大切さを教え、自立した責任感のある意思決定ができるように促していく必要を強く感じてならない。課題を目前にしている学生に対して、解決の仕方や手順を教え自ら解決させていくこと、依存から自立へと学生の意識や態度、行動を変容させていくことが大切なのであり、キャリア支援の重要な役割である。本稿では、学生が就職後の自分の姿をイメージして具体的な準備ができる教材を紹介したい。
(2)キャリアシミュレーションプログラムの紹介これは労働政策研究・研修機構が職業情報・就職支援ツールとして大学生・短大生や若年者向けに開発され、就職後の職業生活のイメージを伝えるためのグループワーク型の教材であり、就職後の初期キャリアの長期的な流れを体感し、考えを深めることを目的としている。
実施の方法は、最初に、職業生活の長期的な流れをすごろくで疑似体験するシミュレーションを行い、次に体験した内容を振り返って自分の考えをまとめ、グループでディスカッションを行うもので、プログラムシートは無料でダウンロードできる。実施に際しては、記載されている標準的な使用方法の場合、大学等の授業1コマ分(90分)での実施が可能だが、部分的に分けて実施するなど、様々なアレンジも可能である。 (資料出所:労働政策研究・研修機構HP( http://www.jil.go.jp/institute/seika/csp/index.htm ))
(3)職業を分析的に理解するためのグループワーク教材学生は職業について、うわべだけを見て判断しているところが多く見受けられる。職業適性を理解する検査や自分を分析するためのツールはたくさんあるが、職業を分析し、どのような仕事が集合したものかを理解する若年者向けのツールはあまり見当たらない。ここで紹介する教材は、授業や講座で実施することができるグループワーク教材である。 職業の中には様々な仕事(課業)が含まれ、それらが総合されて一つの職業が成立していることについて職業分析を通して理解し、職業についてより現実的、多面的に理解できるようにする。 「職業の中の仕事を探してみよう」
学生の職業生活への望ましい適応を目指して、さまざまな内容が大学等や公共機関でも取り組まれているが、自己分析とともに職業分析も効果のあるキャリア教育の学習内容であり、職業理解を深める学習が職業体験やインターンシップ以外にも更に開発されることを期待する。
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大学生2~3年生を対象にして、集団で実施することを想定して開発されたプログラムで、職業生活のイメージだけでなく、社会生活で直面しやすい困難場面への対処策についてグループワークを通して考えを深めることができる学習教材である。