JAVADA情報マガジン12月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2019年12月号

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情報技術を備えた技能者のキャリア開発に向けて(1)

特定非営利活動法人インターネットスキル認定普及協会 理事
   平田 克二 氏 《プロフィール

はじめに

平成28年の経済産業省による「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、いわゆる「IT人材」の不足は、2020年に約37万人、2030年には約79万人と予測されていた。2019年令和元年の今、この危機的なIT人材不足の状況はほとんど解消されていない。ますます進展し競争が激化する高度情報化する環境において、この人材不足は我が国の持続的な発展において、また国際競争力の確保の観点からも大きな障害になる可能性が危惧されている。

現在では、いわゆる情報サービス業に関わる業種、企業のみでなく第一次産業、第二次産業にかかわらず様々な分野において、専門的な職業スキルの他にITスキルを有する人材の必要性はさらに増している。すなわち職業能力においてITスキルは欠かす事が出来ない基礎力となっている側面がある事は否めない。しかし、世界的にみると我が国の人材において低いITスキルが指摘されている。特に今後の世界規模の産業構造の変革においてAI(人工知能)やクラウド、IoT(Internet Of Things)、モバイル、ロボット、情報セキュリティ、ビックデータといった、ものづくりや生活基盤にも大きく影響する技術分野やビックデータの活用、革新などは、様々な局面でITおよびITスキルがますます必要となっていく事は疑う事ない事実である。

 

我が国のITスキル教育の現状

現在、先進国における労働市場においても日本における労働者ITスキルについては、言語スキルと並び低い評価水準となっている。なぜ日本では労働者のITスキルが他国に比較して低い評価水準なのだろうか?PCやインターネット、アプリケーションなどを使いこなすだけが、「ITスキル」として一般的にとらえられている日本の義務教育において、そのITスキルを高めるための取り組みがこれまで熱心でなかった点が指摘されている。特に初等教育においてはITを取り巻く環境について他国と比較して大きく立ち遅れていることが問題ともされている。教育委員会、教育機関においてもIT、プログラミング教育等を担当できる人材、情報、デバイスなどのすべてにおいて不足している現状がある。

 

スタートする日本の変革

そうした現状から一方で2020年度から始まるプログラミング教育必修化はこの我が国のIT教育のレベルを改善することが出来るのだろうか?つい先日、政府は、全国の小中学校でパソコンかタブレット型端末を児童・生徒が1台ずつ使えるよう、無償で配置する方針を固めたことにより、今後の日本におけるIT教育、ITスキルの向上に向けた大きな分岐点になるのではないかと期待される。

今後3回にわたって本連載では、「情報技術を備えた技能者キャリア開発に向けて」では、我が国の情報産業業界の同行、関わる施策、他国の状況など、情報技術、ITスキルを備えた技能者育成について取り組まれる読者の方への有益な情報として提供する。

 

人材育成と確保にむけて

2020に向けた産業界での大規模なIT関連投資、昨今の情報セキュリティ等に対するニーズ増大により、度々世間を騒がした各種情報サービスの停止や情報セキュリティのインシデント等においてIT人材の不足が改めて表面化しました。また、ビッグデータ、IoT等の技術やサービスの登場は、IT利活用の高度化・多様化が進展することが予想され、中長期的にもITに対する需要は引き続き増加する可能性が高いと見込まれている。

しかし、我が国の人口減少に伴い、労働人口、特に若年人口が減少は、今後、IT人材の獲得は現在以上に難しくなると考えられる。このように、IT需要の拡大にもかかわらず、国内の人材供給力が低下することから、IT人材不足は今後より一層深刻になることは避けられない現状である。

ITは今後も我が国産業の成長にとって重要な役割を担うことが強く期待されている。さらに言えば、今後も十分なIT人材を確保することは、我が国にとってきわめて重要な課題である。本連載のおいては、こうした問題意識のもとで、IT人材の中長期的な需給動向を展望するとともに、今後のIT人材の確保・育成に向けて検討したい。

 

進展するIT分野

特に注目されるようになった、AI(人工知能)、クラウド、IoT、ビッグデータのほか、ロボット、キャッシュレス決済、そして情報セキュリティなど、先端分野は数多く挙げられる。このような先端的なIT技術のうち、今後特にその重要性が増すもの、需要の高いものについて把握したい。こうした先端的なIT技術は、IT分野やIT産業のみならず大きく我々の生活に変革をもたらすことになる。

これまでIT業界においては、「クラウドコンピューティング」、「情報セキュリティ」、「モバイル」の市場が大きく拡大進展し、人材についても不足してきた。こうした側面については経済産業省により「今後のIT人材等に関するWEBアンケート調査(2016年に実施)」において明確に示されたように、「ビッグデータ」、「IoT」、「AI(人工知能)」分野についてこれまでよりさらに大きく需要が高まっていることが明らかになっている。

以上の分野については、きわめて深刻な人材不足がおこり、各企業においても当該分野の人材確保の為、業界としても異例な形で報酬増額などが行われたことが大きな話題ともなった。こうした点からも今後も大きく労働人材市場が拡大していく事が予測されている。

 

立ち遅れる人材育成の現場

将来的なIT関連市場の拡大を実現するうえで、「AI(人工知能)」「ビッグデータ」、「IoT」等の先端IT技術は、今後、産業界を大きく変革する可能性があると指摘されており、今後の活用に向けた期待は非常に大きいといえる。こうした先端IT技術のサービス化や活用を担う人材の育成についての課題は非常に多い。現在は、求められる人材の量・質ともに特に大幅に不足すると見込まれる人材は、「AI(人工知能)」、「ビッグデータ」、「IoT」のほか、「ロボット」分野である。これら分野における人材不足は、専門教育機関や研修施設、研修機会の不足に起因し、いまだ解消されたとは言い難い状況である。さらに、「クラウドコンピューティング」、「情報セキュリティ」、「デジタルビジネス」等を担う人材も不足感が強いという。こうした分野においては専門のITベンダーだけでなく、各企業や各部門などがそれらのスキルについて備えた複合的な人材を求めている傾向が求人情報からも分析することができる。

 

まとめ

今回は、連載初回という事で情報技術を備えた技能者キャリア開発に向けて大きな枠組みと現在我が国が抱える構造的な問題点について概説した。次回からの連載では、人材育成の観点から踏み込んで具体的な事例や施策について報告したい。

 

 


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