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JAVADA情報マガジン9月号 フロントライン-キャリア開発の最前線-

2020年9月号

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コロナ禍で変化するキャリア
 ~企業研修のオンライン実施における実例紹介~
  第2回 「企業研修」の変化

株式会社abilight 代表取締役、明治大学先端数理科学インスティテュート(MIMS)
 客員研究員、キャリアコンサルタント
   安部 博枝 氏 《プロフィール

第2回は企業研修の変化について取り上げてみようと思います。三密が発生しやすいこれまでの集合研修については、単にクラスの人数を減らし会場を広くする、というような対面での実施の工夫にとどまらず、オンライン化の必要も出てきました。その際、実施方法についてはもちろん、それまでの対面形式での集合研修と比較した場合の研修効果についても未知数であり、ご担当者様としては悩まれるところです。今回の記事執筆にあたり「オンライン研修実施の具体的なノウハウについては様々な情報があるが、実際の実施事例を知りたい」という、読者の方からのリクエストをいただきました。今後の研修についてお考えの人事担当者の皆さまへのヒントになればと思い、この3か月間様々な方法で実施してきたキャリア研修のオンライン化事例をご紹介したいと思います。

 

オンライン研修実施の準備

まず、実施にあたっては、企業のインフラ整備の状況に依存する点もあるのですが、実施した際に研修効果をどこまで担保できるのか、という点がオンライン化移行への判断材料の大きなポイントになると思います。比較的オンライン化がしやすいものとしては、大学の授業のように講義を中心としたものが挙げられますが、企業での研修の場合、その内容を実務に生かすことで初めて効果が発揮されるものとなるため、多くは実習を中心としたプログラムになっています。そのため、オンラインでもその効果を担保するための研修設計が必要になります。現在は対面実施の場合でもソーシャルディスタンスを保てない実習やグループ形式での配席がNGとなっているケースが多く、またツールを共有する実習などは感染防止の観点からも別の方法に置き換えて効果を担保していく必要があるため、実施の検討にあたっては早い段階から入念な打ち合わせと準備が成功の鍵になると思います。

 

キャリア系研修のオンライン化の実施事例

キャリア系の研修は、自己理解を深めキャリア観を確立していくことが研修の柱となっており、他者との交流や分かち合いが必要不可欠となります。そのため、オンライン化した際には画面越しでの自己開示やグループ・ダイナミクス(グループ内の個人間に発生する相互影響)がどの程度行われるのかが問題となります。ファシリテーターは、全体を俯瞰してその空気感を受け取ることが難しいため、受講者へのより一層の配慮と働きかけが求められます。オンライン適応が難しいと感じられる領域ではあると思いますが、社会環境が大きく変わる最中にこそ、従業員においてはキャリア・アダプタビリティ(環境変化への適応力)が求められ、組織内での自律したキャリア形成力が必要とされていることを実感しています。コロナ禍による制限の下、オンラインでのキャリア系研修を実施された企業のうち、ここでは2社の事例を取り上げてご紹介いたします。

 

<A社:「セカンドキャリア研修」6h>

受講者 :本社勤務(12名)+地方勤務のシニア層(12名)

実施方法:対面形式(都内本社会議室)とオンライン形式(全国の拠点会議室)の
     ハイブリッド型で実施

当日運営:企業側3名+ファシリテーター

  • 講義部は拠点間を結ぶオンライン会議システムで本社会議室のカメラから配信し、各拠点では会議室のモニター越しに受講。オンライン受講者の様子は、会場内の大型モニターの画面分割を通してファシリテーター、受講者どちらからもみることができ、必要な時はコミュニケーションが取れる。
  • グループワークは、4人グループのうち2人が遠隔より参加しMicrosoft Teamsを使用したWEB上に会議室を設定し、意見交換を行った。WEB会議室での様子をファシリテーターが窺い知ることができないため、グループウエアにログインして会議室内を巡回し、グループの様子に合わせて意見交換が深まるよう進行を調整していった。
  • ファシリテーターは、対面の受講者に対して講義していくため臨場感をもって違和感なく進行を行うことができることがメリットとなる反面、意識しないとカメラ越しの受講者に気配りが足りなくなることがデメリットとなった。
  • ファシリテーターから受講者への投げかけに対しては、画面越しに発言もあり、オンライン参加の受講者も物理的な距離を感じずに参加したようだった。想定していた以上にオンライン上での自己開示が進み、休憩中には画面越しに談笑する場面も見受けられた。

 

<B社:「キャリア面談技法研修」8h>

受講者 :管理職(12名/クラス)

実施方法:オンライン形式

当日運営:企業側4名+ファシリテーター、配信アシスタント2名

  • 東京から企業所在地の大阪に向けてZoomを使用し全てのプログラムをオンライン上で実施。対面で予定していたクラスの人数を減らし、個々への目配りが行き届くようファシリテーターと1対12の関係で進められるよう設計した。ポイントの具体的な理解を促進できるよう面談レクチャーは事前に動画を作成して使用した。
  • 模擬面談は、ブレイクアウトルーム(WEB会議室)機能を使用し、観察者を含めた3人グループで実習を行った。各ブレイクアウトルームに企業側人事担当者を1人配置し面談のスキルを確認するとともにトラブルに備えた。ファシリテーターはブレイクアウトルームを巡回し、個々に対してコメントし全体で振り返りを行った。
  • ファシリテーターは、大型モニターを使用することで画面分割しても受講者の表情を捉えることができた。安定した回線、高性能のカメラやマイクなどの機材のみならず、ファシリテーターのサポート、及び人事担当者との連絡のための人員が必要になった。
  • 受講者からは対面研修よりも集中ができた、またファシリテーターとの距離を近くに感じたとの感想もあった。現状では対面研修でのマスクは必須であるが、オンラインではマスクを外して研修に参加できるため、このような面談実習では双方の表情が的確に捉えられる点はオンライン化のメリットとなった。

 

このようにオンライン研修の場合、ホストの画面コントロール及び役割分担を記載した詳細な進行表や事前の通信テストも含めた準備、さらに当日の運営にも対面以上のマンパワーを必要とします。ここで紹介させていただいた2社の人事担当者の皆さまと新たなチャレンジに向かう上で感じたのは、従業員のキャリア支援に対する強い思いでした。AI時代の組織運営においてますます「人」が大切になっていく今、企業研修もこれまでの延長線上にはなく、様々な選択肢をもち環境変化に対応することが求められているのではないでしょうか。

JAVADA様とは、例年実施しております「CADS&CADIを使った従業員のためのキャリアセミナー」の今年度実施全4回のうち、2回をオンライン実施することになりました。現在、実施に向けた打ち合わせを事務局の皆さまと重ねているところです。このセミナーは、東京、大阪を会場として実施してきましたが(今年度は東京、福岡で開催)、これまで沖縄や北海道など全国から時間をかけて参加くださる受講者の方も少なくありませんでした。このようなオープン参加型セミナーの場合は、受講される方に移動の負担なくご参加いただける点で、オンライン実施は有効な手段になると思います。
 また、シニア向けキャリア研修であるCSC(キャリア・シフト・チェンジ)のオンライン実施の可能性についても、CSCインストラクターの皆さまのご意見も伺いながら、CSCスーパーバイザーを中心にJAVADA様とともに検討とトライアルを進めているところです。

前回取り上げたテレワーク、今回取り上げた研修のオンライン化は、これまでも実施できる環境は整っていたものの最初の一歩を踏み出せずにいた企業が多かったのではないでしょうか。図らずもそこへ踏み出すきっかけとなったのがコロナ禍による三密回避をはじめとする様々な制限であったように思います。余談になりますが、私自身はこれまでオンラインでのキャリアカウンセリングはラ・ポールの形成に不安もあり、踏み切れない経緯がありました。自粛期間中、初対面(初回)のクライエント様とのセッションを思っていたよりも違和感なく終えられたことで、カウンセリングは対面であるべき、という自分自身の思い込みを払拭することができました。変化を受け入れ、全ての出来事を機会(チャンス)と捉える前向きも今は必要かも知れません。

 

 


 

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