株式会社タイヨー
創業 1966年(昭和41年4月)
設立 1972年(昭和47年4月)
資本金 3,400万円
自己資本 123億円
使用総資本 215億円
代表者 代表取締役社長 森田剛
従業員数 1026名(2016年3月現在)
売上高 879億(2015年9月決算)
所在地 本社 〒314-0144 茨城県神栖市大野原4丁目7番1号 鹿島セントラルビル6F
ホームページ http://www.taiyonet.com/
事業内容 生鮮・一般食品を中心とするスーパーマーケットおよびリカーショップのチェーンストア経営
都内某大学の教室に3人はいた。
膝をつき合わせ、それぞれの役割分担を話し合い、クライアント企業やその従業員の特性を考察し、どのように説明すればよいかを思案していた。
目的は、9月に実施するCSCワークショップ。
3人は、インストラクター養成研修の第1回と第2回の修了者であり、受講後に立ち上がった「キャリア・シフトチェンジ研究会」のメンバーである。
「キャリア・シフトチェンジ研究会」とは、CSCインストラクターとしてのスキルの研鑽などを目的とした受講修了者有志による自主的な勉強会だ。
「今度、自分の会社でCSCワークショップをやるので、皆さんに講師をお願いしたい」
数回目の研究会の時、同じメンバーである原さんが言った。
原さん自身もCSCインストラクターであるが、このテーマは自社の人間がやるより、外部講師が客観的に話した方が従業員は受け入れやすいだろうと考えた。
依頼されたのは、原さんとインストラクター養成研修が同期の松野さん、吉野さん、それに吉野さんの部下であった大野さんの3人である。
今年度全部で3回行われるCSCワークショップを各回2人体制で受け持つことになった。
50歳を超えた頃から、年を取ることに漠然とした不安を覚えるようになっていた。
だからCSCワークショップの受講者募集が社内で出た時は、ちょうど良いタイミングだと思った。
受講者の一人、高木さんは受講前の気持ちを正直にそう打ち明けた。
一緒に参加した自分より若いメンバーの中には、定年後の働き方や生活といっても
あまり心配している様子が見られない人もいて、年齢によるギャップも感じた。
「実は、研修でやった自己診断ってよく覚えていなんです」
設問には真面目に回答したし、結果は確かに自分の一面を表していたように記憶しているのだが、全体がはっきりしない。
研修を受けている最中も自分の深層意識にシニアになることへの恐怖が留まっていて、それが曇らせているのかもしれない。
研修中は講師の説明を受け入れながらも、シニアになった時、どのようなライフスタイルになるのかという問いが頭から離れなかった。
「皆さんにとって、理想の上司や理想の部下ってどんな人でしょうか」
どんな研修でも受講者は構えてしまうもの。
先ずは緊張を解くため、本題に入る前に優しく問いかけることから始めた。
更に、3人はそれぞれの持ち味を活かした講義を展開した。
「私もキャリアチェンジした一人ですが、それは大変でした」
松野さんは自分の転職体験を語った。
「自分はいきなりで気持ちの切り替えがきつかったですが、皆さんはこれからなので準備期間がありますよ」と前向きな取り組みを促した。
「ちょっとお隣同士で話し合ってみてください」
3人のうち最も長い講師経験を持つ吉野さんは、いきなり受講者に質問を向けたりはしない。
周りの注目を浴びながらでは、どう答えていいのか不安になる。
先ずは受講者同士でヒントを出し合い余裕を持ってもらうことを心がけた。
「ご意見を言っていただいてありがとうございます」
講師の中で一番若い大野さんは、恐縮しながら発言する受講者に対して常に感謝を述べた。
決して上から目線にならず、どんな発言でもいいですよと受講者を受容する姿勢を見せた。
三者三様ながら、2人で講義を分担することで余裕も生まれ、よい相乗効果につながった。
何とかしよう!受講を終えた高木さんは思った。
今後の行動計画を作成した時は、いつまでも現役でいたいと願ったが、それは叶わないこと。
それならば後輩達の役に立つ形でこの職場を終わりたい。
あきらめに近い気持ちだったが、決してそれだけではない何かが浮かんだ。
幸い原さんという頼りなる先輩が近くいて、何かあれば相談ができる。
高木さんは、手始めに一緒に受講した年齢の近い仲間に呼びかけて、自分達のこれからの働き方や会社の制度について考える勉強会を行うことにした。
30数年間一緒にやってきた仲間と共に将来を考えることは、会社のためにも、自分を守ることにもなると思った。
そして自ら、高木さんは、CSCインストラクターになった。
「まだ事例がほとんどありません。シニアの従業員が増えることで会社や従業員がどうなって行くのか全てはこれからですね」
CSCワークショップの実施を推進した原さんは、今回の研修で起こった小さな化学変化を見守りつつ、じっと会社の将来ビジョンを描いていた。