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2005年4月10日配信
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変化する企業の経営戦略と人材育成
【1】  
目白大学 経営学部・大学院経営学研究科 教授   森田 一寿   《プロフィール》
 バブルの崩壊以降企業経営は大きな変化をしてきている。先行き不透明で、いつまで続くか知れない不況の中、リストラ施策を展開し、今日に至っている。しかし、まだまだ多くの大きな問題を抱えているのが現状である。
 リストラによる人員削減は、多くの労働者に労働負荷を増やし、職務の拡大化を要求し、サービス残業が当たり前になり、多くのストレスを招いている。
 企業も社会的責任を果たさず、データの改ざん、仕事のミス隠しなど、コンプライアンス宣言や組織が作られても多くの問題が表面化し、社会倫理と経営理念の見直しが求められ、経営者の姿勢や従業員の意識が問われている。
 当面の具体的な問題を見ると、若年労働者の失業、フリーター・ニートの増加、中高年労働者の再雇用、正社員の減少と非正社員の増加、労働力のミスマッチ、結果重視と成果主義評価の問題、競争原理に振り回される社会、二重構造変化などがある。
 また長期的に見ると、社会経済システムの方向、少子高齢化社会における労働力の在り方、夢のあるワークモチベーション、伝統的な技術伝承と技術開発力の喪失、基礎学力低下の労働力、生き方モデルの不在、エイジレス化などがあり、長期的な問題と短期的な問題が見られる。
 まず、幾つかの現状を示し検討してみよう。

(1)当面処理の企業経営
 バブル崩壊後の諸施策には、なりふり構わずコストダウン志向が模索され、みんなで渡れば怖くないとばかりに、雇用調整がなされた。ややもするとそれは短期的視点が強く打ち出され、不透明な社会を言い訳に長期的視点は示さない傾向がある。もっとも、従来から日本の長期計画は5~7年計画がせいぜいで、3~5年程度でも長期計画としていた点を考えると短期指向の強い経営だったと言えるかもしれない。
  しかし、今日の社会経済システムの変化は、そのインパクトも内容変化も大きく、現状経営との落差が大きいため、当面処理がうまいだけでは乗り切れない状況がある。
 それに対応できるのは、人の力であり、人的資源が有効に働くことによってのみできるといっても過言ではない。リストラによって、優秀な人的資源を失った組織は、その損失は人件費削減以上のものがあるといえる。組織はゴーイングコンサーンである。組織のコア・コンピタンスの確立が必要である。
 "備えあれば憂いなし"ではないが、長期的視点で状況を理解し・洞察力をもって社会・経済システムの分析の上に立った短期的戦略・戦術の展開が求められる。
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