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2005年5月10日配信
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縁の下の力持ちが評価される組織づくりを
【1】  
目白大学 経営学部・大学院経営学研究科 教授   森田 一寿   《プロフィール》
成果主義賃金制度はどのように定着するか
 前回述べたように、厳しいリストラ以降、コストダウンと当面の問題処理を中心に、個に焦点をあてた人事諸施策が展開されてきた。その結果、いろいろな問題が出てきている。中でも気になるのは成果主義論争である。
 日本的マネジメントを気前よく否定し、今日の人事施策の代表選手であると思われているのが成果主義賃金制度である。
 成果主義はほとんどの企業で何らかの形で導入されている。しかし、半数以上の企業ではうまく機能していないと言っている。うまく機能しない原因に挙げられているのが評価制度である。
 納得できる評価が得られて、その後に受けた報酬に満足すると、さらなるやる気が出てくる。この好循環が従業員の心の中に植えつけられれば、モチベーションの高い行動が生まれてくる。
 自分が当事者にならない時は、確かに、成果主義による評価は、やっただけのことが評価され報酬に結びつくと感じ、一見、公平で納得できると感じられるかもしれない。しかし、これは一見にすぎないのであって、そう簡単に自己が評価して欲しいと思っている内容が同じように評価されることは少ない。成果には、複雑な要因が絡まっていて、それらをすべて捉えて評価することは不可能である。
 成果主義のノルマ管理に対して多くの従業員が不満を持っているのは、評価者と被評価者との間に視点の違いが生じるからである。
 若い人の中には、「自分の職場で成果主義を採用してほしい」と希望する人がいまだに多い。その心は、成果主義になれば自分の力が公平に評価され、それなりの報酬が得られ、評価に関する不満が解消されるに違いないと思っているからだ。
 しかし、どこまで納得のできる評価に近づくことができるかが問題なのである。しからば、公平で納得できる評価とは、どんな評価だろうか。私は、一人ひとりの納得できる基準が違う以上、完全に公平で納得できる評価制度などありえないと思っている。その理由をいくつか挙げてみる。
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