キャリア ナウ  

2005年5月10日配信
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縁の下の力持ちが評価される組織づくりを
【3】  
目白大学 経営学部・大学院経営学研究科 教授   森田 一寿
目標管理は成果主義の救世主か
 そこで登場するのが目標管理である。目標による管理と抱き合わせて導入すると、成果主義や成果主義年俸制が上手くいくという話をよく聞くし、実施されている。しかし、これもそう簡単ではなく、なかなか難しい点がある。
 目標による管理の核心はマネジメントに対する考え方であり、経営哲学である。具体的な制度作りは各組織の事情によって異なるものでよいのに、核心にある考え方を忘れて表面的・形式的な管理運営をすると目標による管理にはならない。また、具体的内容についてみると、目標による管理は、担当業務全体の管理を反映しているわけではなく、重点目標について明確にし、意欲を持ち自主管理をしていこうというものである。それも、上下の信頼関係のうえに立って行われるものである。
 目標による管理が、ノルマ管理になってしまうと、目標による管理の精神が失われ、最も問題のある進め方になってしまう。それにもかかわらず、目標による管理を展開することで成果が評価され、給料が変わるのであれば、表に出ない仕事についてのやる気、モチベーシヨンが起こらなくなってくる。
 例えば、デリバリーの日常業務でどうしても必要な仕事の手を抜いて、目標設定した重点目標だけが対象として浮き彫りになる。もちろん、重点目標だから、組織にとってもその人にとっても非常に重要な目標を設定しているはずであり、それを管理の対象にすれば、組織全体としては大きな損害は無いのだと考えれば、考えられないことはない。だが、組織の運営を支えている多くの部分は、目立つ派手なものではなく、日の目を見ない縁の下の力持ちのような日頃の仕事が非常に重要な役割を果たしているという点を忘れているのではないかと思う。派手な業務を格好良く達成した振りをして、これからの組織の土台になるような基礎的な仕事を軽視する人が高い評価を受けることになったり、安易な目標設定によって達成評価を高めようとする人が増えたりしたら組織にとっては大きな損失である。
 トップの取巻きにそのような人がいたら、トップの意思決定にも影響し、マイナス面は組織全体にかかわる結果になる。
 個を管理し、個の成果を鮮明にし、評価しようとすれば他にも問題が出てくる。

自分の成果に手一杯で部下や後輩を育てようとしなくなる
 独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によると、成果主義を採用した職場で起こる変化として、「部下や後輩を育てようとしなくなる」「仲間と協力して仕事をしなくなる」「一人ひとりが自由に意見を言わなくなる」という分析結果がある。
 日本の組織には、前述したように職務を明確に細分化せずに、曖昧さの中で人々の気配りに期待する特色がある。これが、情報を共有し、誰かが困っているときは助けるといった良さにつながり、「1+1=2以上」の力を発揮する強みが出てくるのだが、形式的成果主義による評価は、この良さをしぼませてしまうのだと、私は受け止めている。
 部下を教育しなくなり、成果につながらないからとノウハウを共有しなくなることは、組織の成長を著しく妨げることになる。従来の組織で言えば、問題行動である。
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