キャリア形成推進マガジン
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2010年10月10日配信
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キャリア教育の開発的取組み
=== 問われる大学のキャリア教育 ===
【1】
 ソニー学園 湘北短期大学 キャリアサポート部 部長 近藤 章雄 《プロフィール》

◆大学におけるキャリア教育

 今まで多くの教育では、成功することに大きなウェイトを置き、挑戦することの大切さや、失敗が無駄ではないことを軽んじてはいないだろうか。この学生には「できない」「無理だ」と頭から決め込んで、学生の夢や希望を奪ってはいないだろうか。その一方で学生たちは、「答えは先生が教えてくれるから、暗記すればいい」、「マニュアルを見ればいい」、「人と同じにしていればそれでいい」と軽く考えてはいないだろうか。そのくせ一度問題が生じたら、「自分は悪くない」と非難を他人に向けたり、「教えてくれない相手が悪い」と一方的に決め込んではいないだろうか。「自分さえよければいい」といった考えが先に立って、自分の行動態度を考えてみることや、他人を思いやる気持ちが失われつつあるように思われる。
 自分の考えがないままに、一般化された言葉を借りて、それをあたかも自分の意見と勘違いしている学生たちも目につく。学生が自己を表現したり、自分の考えや気持ちを他者に伝える能力や、他者の考えや気持ちを理解する能力、このような学生たちのコミュニケーションに関する能力が、近年低下していように感じられる。「粘り強い性格です」と答える学生に、「どのようなことからそう思うのか」と尋ねてみても、「粘り強い性格だから・・・」と返答するばかりで、そもそも質問者の意図を理解していないことも珍しくはない。
図1:大学におけるキャリア教育の概念図
図1:大学におけるキャリア教育の概念図
 大学教育は、知識とともに学生一人ひとりの個性や感性をいかに伸ばせるかが重要である。そのためその教育は、学校側の都合だけでなく、学生の視点や状況に応じて行われてこそ大きな価値がある。キャリア教育は、人間力(人間として生きる力)・人財力(社会から必要とされる人)を育てる教育であり、「人生」や「生き方」、また、「職業を中心とした人生設計」などを探求しながら、自己の多様な能力を向上させることを目指している。そのため、自己理解から、ソーシャルスキル、職業理解にわたるキャリア教育は、図1が示すように、今日、大学における教育体系の中で、大学の専門教育と対をなす、欠くことのできない大きな役割を担うものである。
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