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2010年10月10日配信
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職業能力評価基準の活用について(1)
【1】
中央職業能力開発協会 能力開発支援部評価制度開発課
1 成果主義的人事制度の導入と問題点

 前号では職業能力評価基準の概要を厚生労働省のご担当者にご説明いただきましたが、今回は評価基準の活用方法についてご紹介させていただきます。
 評価基準は、前号でもご紹介しましたように、業種毎に職種を選定し、職種をさらに職務に細分し、職務を構成する課業単位で「能力ユニット」として職業能力評価基準を示しています。職業能力評価基準の特徴としては、能力ユニット別に職務遂行のために必要とされる知識、技能・技術に加え評価の指標として成果に結びつく典型的な行動例(図1)を列挙しています。
 本職業能力評価基準では、評価の手法として職務遂行上あるべき姿、行動を具体的に示し、顕在化された発揮能力、行動を職業能力として評価しようとするものです。
 バブル経済崩壊後、景気が長期間低迷し、またグローバルな企業間競争が激化する中で、企業では競争力の強化や企業体質のスリム化のため、事業の見直しや総人件費の抑制、人員のリストラ、企業合併などが行われ、我が国ではこれまで経験がない早さで企業をとりまく経営環境は大きく激変しました。このような状況の中、人事制度もこれまでの年功序列的な運用から、業績評価による成果主義的人事制度が多くの企業で導入されるようになりました。
 しかしながら、性急な成果主義的人事制度の導入は、チームワークの軽視や評価基準が曖昧などいろいろな課題に直面しその運用を見直さざるを得ないことになりました。
 特に最近の企業においては、成果主義的人事制度を維持しつつ、短期的な個人の業績を求めがちになる成果主義の教訓から、業績に加えて仕事への取組や進め方(プロセス)を評価する企業が増えています。

2 求める能力要件の具体的な提示と評価

 このプロセス評価のモデルとなるものが業務を遂行するうえで期待される行動基準を具体的に示した職業能力評価基準です。この職業能力評価基準を参考に従業員に期待する能力要件を具体的に示し、上司と部下による面接でそのプロセスを評価し、双方で納得のうえ評価を行えば、評価に対する納得性はより高まります。また評価といえば査定をすることととらえがちですが、職業能力評価基準は従業員の職業能力開発の指針としても活用できるものであり、客観的な評価のもとに従業員の職業能力開発上の課題を把握し、労働者個人の主体的な職業能力開発の取り組みを促すこともできます。

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