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2006年7月10日配信
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働く人々の成長と職場風土
【1】
日本大学 商学部 教授   外島 裕   《プロフィール》
 自分の能力を活き活きと発揮できる職場で働くことができれば、充実した仕事生活を送ることができる。自律的に仕事へ取り組むことをキャリアの大切な側面と考えるならば、働く人々を尊重する職場の風土がキャリアの発展には必要である。

1.管理者の人間観
 職場運営の雰囲気には、管理者の働く人への人間観が強く反映する。マックレガーは、自己実現の欲求を重視する立場から、管理者の人間観を大別して論じた。有名なX・Y理論である。
 X理論とは、働く人の動機づけを阻むような考え方であり、古くから暗黙のうちに続いている人間観である。(1)人間は生来怠け者であり、できる事なら仕事はしたくないと思っている。(2)したがって、従業員を働かせるためには、命令や強制、処罰をもってあたらせるべきである。(3)多くの人は、責任を回避して、改革などは好まない。
 このような考え方は、働く人の主体性や成長を認めていない姿勢といえよう。
 一方、Y理論として提唱した人間観は、次のようである。(1)人間は、自らに課した目標を達成しようと、自ら主体的に働くものである。(2)問題解決にも自ら創意工夫をし、自らの能力を惜しみなく発揮する。(3)自己の能力の向上とその発揮の場を求め、さらにその正当な評価を受け入れるものである。
 これらは、働く人の自ら成長しようとする姿勢を信じ、期待する考え方といえよう。管理者が、従業員の自ら成長しようとする姿勢を尊重することによって、従業員一人ひとりは仕事に主体的に取り組むことが可能となり、自分にとっての仕事の意義を深めることができる。このように、自らの仕事に主体的に取り組むことを通して、問題解決力が育成される。自分のやりたい仕事を目指して、自ら行動することによって、自分にとって望ましい結果を得ることができる、という実感が育まれるのである。私たちのキャリア発達の基本となる自己効力感が形作られるのである。
 マックレガーは、このY理論を具体的に組織において実践するために、目標による管理を推奨した。現代でも、組織の運営にとって大切な課題となっている。

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