「私はどのような仕事に向いているのでしょうか、適性を知りたい。」と私の研究室を訪れる学生は、就職活動が始まる時期には多い。
自分に適している仕事に就くことができれば、充実した職業生活を送ることができる。天職に巡り合うために、転職を試みる場合もある。天職という言葉には、その人の才能にあった職業との意味だけでなく、神が命じた神聖な仕事という意味もある。自分の人生にとって、いかに深く仕事の意義を位置づけ、そして統合することができるか。私たち一人ひとりが、生きることにおける仕事の意味を考え、適切な職業の選択とともに、仕事の経験を糧として成長することができれば幸いであろう。
1.適性の概念
適性(aptitude)とは「課題や仕事を適切かつ効果的に成し遂げられる潜在面、顕現面での能力や特性」と定義されている。ある仕事が必要とする要件を、その仕事を担当する人が、きちんと遂行できるか、ということになる。仕事と人との適合である。
わかりやすい例で整理してみよう。たとえば、自動車の営業という仕事を考えてみる。この仕事を遂行するためには、だれが携わろうとも、自動車の構造についての知識、競合会社の新製品の知識、顧客の好みの動向など市場の知識、が必要である。さらに、顧客との信頼を形作る対人関係のスキル、契約をすすめる交渉のスキル、などが期待される。また、販売目標を達成しようとする意欲、計画を大切にして取り組む態度、なども重要となる。人と会う営業という仕事が好きであることも必要であろう。この場合のように、職業の適性とは、自動車の営業という仕事を遂行するために必要な、知識、スキル、意欲・態度・興味などを、担当する個人がどの程度保有しているのか、ということになる。人には得手、不得手がある。仕事に必要な要件を、だれもが同じ様には発揮できないわけである。 |