| 学生は、仕事・職業理解が不足していることが多いが、「現実」にとらわれていない分、発想や着眼点が豊かである。例えば、VPI職業興味検査では「長距離バス運転手」は、「機械や物を扱う現実的な仕事」になるが、「この仕事をやりたいか、やりたくないか」の理由を問うと、学生の解釈は実に多様である。「バスは路線が決まっているし、運行時刻も停留所も決まっているので、ルーティンな仕事だからやりたくない」「バスはお年よりや子供の利用しやすい乗り物だから、やりたい」「バスはダサイ、車ならスポーツタイプがいい」「長距離は夜間運転があるから嫌、健康に悪い」「エコを考えると、自家用車よりは環境にいいからやってもいい」等、その仕事にどんな意味合いを持たせるかによって、各自の価値観をうかがうことができる。今までの「仕事・職業理解」の通念とは違った視点で、これからの「仕事・職業」を学生と一緒に考えていくことが重要だと考える。Webデザイナー、フードコーディネーター、フィギュア・アーティストなど、20年程前には想像できなかった「職業」が一般化しており、今後も更に新たな「職業」が生まれてくる。学生にとって、まだまだ「職業の選択肢」は増えていき、「働き方」の選択肢も増えていく。従来の社会環境の枠組みに学生を無理やりはめ込むことは、社会全体の成長・発展の可能性を狭めてしまうことになる。
「働き方」の多様化に伴ない、「ワーク・ライフ・バランス」「メンタルヘルス」もますます重要になる。アルバイトでの過重労働、友人・家族のメンタルヘルス不全などがきっかけで、企業社会に対する不信感が芽生え、「働くこと」に大きなマイナスイメージを持ってしまう学生も多い。企業側は、労働法規の遵守など、「守るべき社会規範を徹底して守る」必要がある。採用活動においては、短期間の選考だけでなく、長期的なインターンシップで選考するなど選考方法に多様性を持たせる、あるいは、選考基準を明確化・公開化する、選考結果のフィードバックを行うなど、学生の成長に寄与するという視点での採用活動を、より一層充実させる必要がある。既に実践している企業が増加してきているのは、喜ばしい事実である。
また、現実的・即効的支援策も必要である。例えば、学業や就職活動に係る経済的負担を軽減するための方策について、貸与ではなく給付型の奨学金を増やす、就職活動に必要な応募書類を電子申請式に切り替え発行手数料負担の軽減を図るなど、取り組まなければならない、あるいは取り組めることは山積している。その取り組みを通じて、新たな雇用機会が生まれることにもなる。
取り組むべき課題が多すぎて、砂漠に穴あきスプーンで水を撒いているような思いになることもある。そんな時は、ある学生のコメントを思い返す。「努力したからといって、必ず報われるわけではない。でも努力することをやめてしまったら、報われることは決してないのだ。」「将来に希望を持ててこそ、自分のキャリア開発を真剣に考えることができる。」とコメントした学生もいる。「努力すること」「希望を持つこと」の大切さが、いつまでも認められ続ける社会を維持するため、今、そしてこれから各自が果たせることが粛々と実行されることを願う。
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