この原稿を作成している時点で、政府が「障がい者」の定義を抜本的に見直す方針であると発表された。「障がい」を心身の機能障壁にかかる個人的問題ととらえるだけでなく、社会参加を制約する問題にも着目し、「社会参加に支援やサービスが必要な人」が「障がい者」であるとの認識に基づき、今後「障がい者制度改革推進会議」で検討されていくとのことである。「社会参加」には、就学・就労は大きなウエートを占めるものであり、そのための「支援・サービス」を、各個人の必要実態に応じて適切に実施していく道筋をつけることが大いに期待される。
近年、大学・短期大学において、「何らかの発達障がいがあるのではないか」と思われる学生の学生生活適応支援、就職活動支援に腐心する教職員にとって、医療機関や発達支援機関ではない高等教育機関における在学期間だけの支援の限界を認識しながらも、学生にとっていかに望ましい進路を提示できるかは、現実的に非常に厳しい課題である。
「発達障がい」であることが考えられる学生の多くは、大学・短期大学以前の教育課程において、「発達障がい」の正式な診断を受けてはおらず、学校生活・社会生活で何らかの不適応を抱えながらも、大学・短期大学まで進学してきている。これには、本人の非常な適応努力と理解のある教員等の支援者に恵まれたため、何とかこれまでやってこられた、というケースが多い。またその中には、幼稚園~高校までの間に、壮絶な「いじめ」体験を持つ学生も珍しくはない。
「何となく周囲の人間とは違っているようだ」との意識は持っていることが多く、他の人間には理解できる「その場の空気」が自分には理解できず、それが何故なのか分からないまま、何とか周囲に合わせるため、尋常ではない「反復学習」(今回の出来事は、今まで体験した中のどの出来事と類似しているか、その時どのように対処すればどんな反応が起こったか、その対処法を今回にも応用できるか)の努力を重ねている。
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