前号 キャリア形成推進マガジン
キャリアに関する研究者からの提言 【キャリア・ナウ】
次号

2010年1月10日配信
キャリア ナウ 一覧へ戻る
学力多様化とキャリア教育
【1】
社団法人 大阪府経営合理化協会 人財開発部マネージャー 土肥 眞琴 《プロフィール》
 の原稿が配信される1月10日頃は、2011年卒業予定学生にとって、エントリーシートの提出期限・セミナーへの参加と学年末試験準備とが重なり、非常に多忙な時期である。
 生の中には、本来の学業よりも、就職活動に役立つ実践的スキル・知識を習得することへの期待・要求を明示する者もおり、「学校での勉強は社会で役に立たない」という風潮と相まって、大学教育の形骸化が急速に進展することが懸念される。文部科学省「学校基本調査」によれば、高校の生徒数が昭和40年より減少しているが、大学・短期大学等への進学率はその反対に増加を続け、平成19年度以降50%を超えている。
 部の大学・短期大学では既に「競争入試」が成立せず、「全入可能」になっていることから、「学力の多様化」「学力格差」に対応した「初年次教育」「リメディアル教育」が注目されているが、高等学校までの学習能力・社会適応能力の開発・習得支援の不備・不足が順繰りに先送りされてきた結果を、大学・短期大学が引き受けざるを得ない現状にあることは、本来高等教育機関が果たすべき教育責任の見地からは、極めて憂慮すべき状況である。
 でに大学版PISA試行試験への参加、「学士力」保証など、高等教育機関はなお一層の教育改革促進を迫られているが、本来ならば幼児期から青年期までの学習過程で培うべき基礎能力の基盤のないところに、いきなり高度な知識・技能を短期間に習得することを要求することは、教育を受ける側(大学・短期大学生なら、本来は「教育を受ける」のではなく、「自ら学ぶ」のであるが、ここでは敢えて「受ける」立場とする)にとっても、教育する側にとっても、自己効力感を低下させる結果に繋がる。個々の学習到達度・社会的成熟度に応じて、大学・短期大学在学期間を弾力的に設定する必要を感じる。
  1/3 続きを読む >>
▲このページのTOPに戻る