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2009年12月10日配信
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就職危機の現状
【1】
社団法人 大阪府経営合理化協会 人財開発部マネージャー 土肥 眞琴 《プロフィール》
 夏の金融危機以降、新規学卒者の就職環境も急激な悪化の一途をたどっている。厚生労働省が11月4日発表した平成21年度高校・中学新卒者就職内定状況(平成21年9月末現在)によれば、高校・中学共、求人数は前年同時期に比べ約45%以上減少しており、高校生の就職内定率は37.6%と、就職希望者のうちほぼ3人に2人は、まだ就職先が決まらない状態におかれている。大学・短大等の就職内定状況についても、今後の発表を待つところであるが、非常に厳しい状況にあることは間違いない。新卒採用情報サイトを運営する株式会社ディスコが、同社モニター登録大学生の就職活動状況調査結果を発表した資料によれば、10月1日現在(通常この日は各企業の「内定式」が実施される日であり、この時点で「未内定」の場合、就職先未決定のまま卒業する可能性が高まる)の内定率77.0%となっている。新卒採用情報サイトにモニター登録する学生は、就職意欲が高く、早期から自発的・積極的に就職活動を行う学生が中心であるため、一般的な学生に比べて、内定率は高めであると推測される。一般的な学生の内定率は、学生の専門領域、志望職種・業種、在籍校の就職活動支援体制にも左右されるが、関西圏では技術系で70%台、法・経済・経営系文科系で60%台、文・社会系文科系で50%前後ではないかと推測される。
 「内定率」は、あくまで「就職希望者」に対する「内定者」の割合を示すものであるから、大学院・大学・専門学校等への「進学」を選択した学生は、このデータには含まれない。今年は例年以上に院進学希望者が増えたという大学事例もあり、「就職留年」よりは「進学」を選択した学生も多いと思われる。
 校生においては、「就職するより進学する方が簡単」という場合があることが従来から指摘されているが、大学・短大生においても、同様に「社会への移行&進路決断の先送り」現象増加が懸念される。「就職活動に正解はない」という言葉はよく見聞するが、「正解はない」=「今までの自分の価値判断基準が通用しない」ことに戸惑う学生は少なくない。
 育機関においては、「結果」はもちろん重要だが、「結果」に至る「プロセス」をより重要視する傾向がある。「できなくても、努力すればよい」、「努力すれば必ず結果は出る」。
 の価値観を持つ学生は、真面目に授業に出席し、課題をこなし、サークル・アルバイト・ボランティア等、様々な活動に取り組む。就職活動が始まると、筆記試験・面接試験対策の「勉強」に取り組み、「企業が求める人材要件」にマッチした「自己PR」作成に懸命になる。正に、採用試験における「傾向と対策」に基づき、努力を重ねるのだが、予想したような結果が得られないことに対して、企業からの具体的なフィードバックがないため、「自分の軸で判断する」思い切りに落ち着くまでに、葛藤に苦しむ学生は多いし、思い切れないままの学生も少なくない。
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