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キャリアに関する研究者からの提言 【キャリア・ナウ】
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2009年11月10日配信
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「能力の評価・開発とキャリア」(3)
【1】
専修大学 経営学部 教授  廣石 忠司 《プロフィール》
1.管理能力 ―キャリアマネジメントのために―
 前回、突然コンセプチュアル・スキルという言葉が出てきたので唐突に感じた読者もおられるだろう。まず簡単にこの概念を説明しよう。管理職に求める能力としていろいろな分類をしている理論があるが、ここではカッツ(Katz)の理論に基づいている。管理職に求める能力は、テクニカル・スキル(TS)ヒューマン・スキル(HS)、そしてコンセプチュアル・スキル(CS)に三分されると彼は言う。TSは文字通り専門的な能力である。経理、生産管理などの職域ごとの力である。HSは対人関係能力。人とのコミュニケーションと考えてもよい。CSは日本語にしにくい。経営能力とでも言おうか、広い視野、決断力、洞察力といったものである。
 下級管理職はTSが重視されるが、CSはさほどでもない。逆に上級管理職や経営者はCSが最重要視され、TSは不要ともいえる。HSは組織内で仕事をしている以上、上級・下級を問わず不可欠である。
 問題は、このCSをどのようにして身につけるかである。当然部下の評価能力もこの中に含まれる。素質がない者にいくら教育しても意味がないという考え方もありうる。それよりは素質を有した者を発掘すべきだという趣旨である。筆者としては上級管理職(リーダー)としてふさわしい者の要件として、人格、人間的魅力といったものも含まれると考えているが、こうした素質を有した者はかなり早期に発見できるという実践的研究もある。昨今日本企業でも早期選抜として、20歳代後半から30歳代前半に優秀な人材を発掘し、特別な経営者教育を施すことが行われ始めており、この流れは妥当なものと考えている。
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