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キャリアに関する研究者からの提言 【キャリア・ナウ】
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2010年3月10日配信
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学生の成長≒社会の成長
【1】
社団法人 大阪府経営合理化協会 人財開発部マネージャー 土肥 眞琴 《プロフィール》
 職活動で思うような結果が得られなかったため、やむなく「留年」を選択する学生が増えている。経済的事情などで「就職留年」ができず、「就職浪人」となる学生も今年は相当数増加することは避けられず、卒業後の継続的な支援が必須である。大学・大学院等への進学を選択した学生にとっても、就職活動再開は目前に迫っている。新規学卒者の「就職難」は、もはや当事者だけの関心事ですまされる問題ではなく、改善に向け挙国一致で取り組むべき重要問題となっているのは周知の事実である。
 就職協定廃止以降、企業等の採用活動の早期化・長期化が大学・短大生の学業に及ぼす影響については、多々議論されてきた。日本の採用慣行である「新卒一括採用」を根本から見直す必要についても、多くの人が「内心薄々感じていた」段階から、「ここで何らかの行動を起こさねば、日本の将来が危うい」との危機感を募らせる段階に進んできている。

 生のキャリア開発支援を発達支援の観点から考えれば、学生の多様化に応じて支援方法も多様化する必要がある。「一斉開始」「一斉終了」の就職活動だけでなく、個々の企業・学生双方のニーズに対応した「求人-求職」制度が求められている。しかし、「大学3年生6月1日・就職情報サイト・プレ・オープン」から始まる「就活」スケジュールに従って就職活動を進めなければ、就職できる企業・職種が限定的になってしまうという現状では、自己理解・仕事理解が不十分であることを自覚しながらも、「乗り遅れない」ために急場しのぎの「就活」を続けざるを得ない学生は少なくない。
 「とにかく何でもいいから内定を確保したい、一社内定がもらえれば、そこから落ち着いて考えられるから」という切羽詰った学生を批判することはできない。自己分析や業界・企業研究を再度やり直すという選択は、簡単なように思えても、本人達にとっては思い切る力を要求される厳しい選択である。「出遅れたらそこで人生の終わり」という強迫観念のような思い込みを持っている学生に対して、「少しぐらいの遅れは心配ない、自分に合った仕事、会社は必ず見つかる」という言葉は、実際に応募でき採用してくれる企業を示すことができなければ、「ただのキレイゴト」でしかない。

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