| ある情報機器の開発会社から「社員のモチベーションを上げるように、部門長との懇談会や挨拶運動などを始めたが、今一元気が無いように思われる。何か良いアドバイスをいただきたい」と相談を受けました。早速"システムカウンセリング"を提案して、管理職直前に位置付られる係長クラスの全員(約70人)を対象としたキャリアカウンセリングを行うこととなりました。
この企業では次のような管理職への登用システムが導入されています。まず管理職候補になると、約1年間かけて管理職として必要となる業務や経理関係、そしてリーダシップなどを学習する『ノミネート研修』、さらに英語力を養うためにTOEIC試験が実施されます。最後には役員に対して、この1年間で学習した考え方を業務にいかに反映させていくかといった決意表明する『成果プレゼン』を行います。そしてこれらの総合的な評価を経て管理職になることができます。
最初に対象者に理解してもらうために、システムカウンセリングの趣旨や流れを説明して、さらに『係長クラス全員が対象』であることを明記した通達を部門長名で出していただきました。その後人事部門が対象者のシステムカウンセリング日程を調整して、早速、応接室でのカウンセリングが始まりました。
そんなある日、カウンセリングの対象者の一人であるTさんが応接室に入ってくるなり話し始めました。「昨日の『ノミネート研修』は、講師から"管理職はこうしなさい"と一方的な話であり、参加者同士のグループワークがあったものの、多くの参加者は"管理職になりたくない"と言っていました。自分も管理職にはなりたくない」。私は、まず「昨日の研修は一方的な講師の話でうんざりしたんですね」と応答して、その上で「現在の仕事の内容を詳しく教えてください」と促しました。するとTさんは日常の仕事の様子や、担当製品にかける熱い想いを語りだしました。特に苦労して開発した製品がヒット商品になった話や、納期を守るために仲間と努力した経験、そして、「自分は一技術者として、商品開発に打ち込んだ方が会社に貢献できると思う」と話しが進み、つまるところ「管理職業務は面倒なのでやりたくない」というのが正直な気持ちのようでした。
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