このように見てくると、この企業の化学分野開発技術者の新製品開発力という技能の形成は、大学院修士という相対的に高度な知識をベースとしながらも、それだけではまったく不十分であり、(1)基本的に企業内のOff-JTと日々の仕事経験というOJTによって形成されていくということ、(2)個別のひとつの仕事においてだけではなく、まさに上で見たようなキャリアを作ることそれ自体によって形成されているということが改めて理解されよう。技能形成はすぐれてキャリア形成の問題なのだ。
ただし、ここで注意しなければならないのは、こうした仕事で使用される科学知識それ自体は、あくまでもその企業特殊なものではないということである。そうした科学知識のいわば合成と、それに基づいた新たな知識や知見の創造という経験が、この企業個別の性格を帯びる。そしてそうした企業個別の仕事経験の蓄積という意味において、企業内でキャリアが形成される。これが企業内キャリアが成立する根拠であり、その意味するところなのだと考えられる。
このように、企業内キャリアを仕事配分と技能形成過程という視点からとらえなおしてみると、実は現代のさまざまな労働問題に関するもうひとつの視点を提供することが可能となる。次回ではその点について述べよう。トピックスは「非正規社員のキャリア形成」である。 |