キャリア形成推進マガジン
キャリアに関する研究者からの提言 【キャリア・ナウ】

2009年7月10日配信
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「企業内キャリアの実態とその意味」
第2回 なぜ企業内でキャリアが形成されるか ― 技術者のキャリア形成事例から
【2】
神戸学院大学 経済学部 国際経済学科 教授 中村 恵
 の企業の新卒技術系社員は現在ではすべて大学院卒であるという。うかつなことではあるが、最初に驚くべきは、技術系新入社員は修士であるが、この企業が取り扱う製品の材料や製品の評価方法などについて、まったく大学院では教えられていないのだという。すでに述べたが、この企業の製品はきわめて特殊なものというわけでは必ずしもない。日々家庭で使用されている家電製品内部の部品なのだ。したがって、技術系新入社員は、大学院修士号を持っていながらも、企業に入ってからOff-JTで製造に関わる理論、材料、評価方法などについて一通り勉強する。
 意すべきは、大学院修士で学ぶ知識は汎用的・一般的なものであるのに対して、企業の製品の開発・設計そして製造を行うために必要となる知識は、その企業個別的なものであるということである。したがって、Off-JTで用いられる教科書ですら、以前は汎用的な教科書を用いていたが、現在では自前の教科書を技術部で制作しているのだという。
 品開発で使用される材料やその製法についてすら、大学院で習っていないのであるから、その後の開発業務それ自体も職場内でのOJTによって学んでいくほかない。しかも、開発とは新製品を作り出すということであるから、求められるスペックを満たす製品を作り出すためにおこなわれる実験の方法だけではなく、実験で使用する材料は何がよいか、その材料の混合の度合いはどの程度がよいかなどについても、まさに試行しながら見つけ出すほかはない。
 方、この企業の技術者もひとつの仕事にとどまり続けるわけではもちろんない。いくつかの仕事を経験し、その意味でキャリアを形成する。このキャリアをいかに形成したらよき技術者が育つかについて、当該開発部門のマネジャーははっきりとした構想を持っている。職場内での仕事配分を変えることだけにとどまらず、同じ製品を扱うが違うグループの経験や、違う製品ではあるが扱う材料が似ている他のグループの経験など、基礎を同一とした上での幅広い開発経験が、むしろ特定製品の新製品開発力を育成しやすいのだという。
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