| 多様な働き方に対応して、評価・処遇をどう設計するかという点は第二の課題である。個々人の事情に応じて働き方を選択した場合に、賃金その他の処遇をどのような考え方で設定するか、という問題は、働く側が納得できる水準を見極めながら考慮する必要がある。仕事と賃金がリンクし同一労働同一賃金の原則を貫くことができればあまり問題とはならないが、日本の組織は必ずしも仕事に値段がついているわけではないので、多様な働き方に応じた処遇のあり方は、第一の課題と同様に、労使の対話が強く求められる点である。
第三の課題として、こうした取組を進めるためには、制度を導入するだけでなく、制度が機能する環境を整備することが不可欠であることがあげられる。制度を導入できたとしても、その運用にあたっては、様々な障害がある。たとえばノー残業デーを導入しても、業務の見直しや効率化を進めなければ、他の日の残業期間が増えるだけでトータルの労働時間は変わらない。ワーク・ライフ・バランスを進めるためには、時間についての強い意識を持ちながら業務効率化を進め、無駄な仕事を見直すといった職場全体での取り組みが必要である。制度運用にあたって最も重要なキーパーソンは現場管理者であるが、総論には賛成しても自分の部下の制度利用には後ろ向きな管理者は少なくない。企業でこうしたことを進める際に、管理職研修を組み込むケースが多いのは、この層の認識が低いからである。24時間スタンバイの部下を管理するのは非常に簡単であるが、限られた時間で生産性をあげようとする部下を管理するには管理者の力量が重要である。ワーク・ライフ・バランスを進める上では、管理者のマネジメント力が問われるのである。
ワーク・ライフ・バランスは人事制度の見直しにとどまらない働き方の改革である。組織にとっては、多様な人材に効果的に働いてもらうための仕組み作りであり、個人にとっては、自己のキャリアを職業と生活の両面からデザインすることにつながるものであることを最後に強調したい。
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