第1回と第2回でワーク・ライフ・バランスの議論の背景、それが働く人だけでなく企業にとっても重要であることを述べてきた。今回は、「ワーク・ライフ・バランス社会」の実現のためには何が必要か、について、働く人と企業組織の両面から考えてみたい。
繰り返しになるが、ワーク・ライフ・バランスの「バランス」は一つの均衡点があるのではなく、個人の価値観やライフスタイルによって最適なバランスは異なる。したがって、ワーク・ライフ・バランス社会においては、個人一人ひとりが自分自身の生活をどう設計するのかということを主体的に考えることから始まり、さらにそこに時間軸を取り込んでどのような人生を送るか、というキャリアデザインをすることが前提となる。自分の生活、そして人生の優先順位を決め、そこで働き方を選択する。個人のライフキャリアをデザインすることがワーク・ライフ・バランスの出発点であることを、働く人はもう一度認識する必要がある。
ところが、株式会社スミスが実施した「仕事と家庭の調和に関する世界意識調査」(2006)によれば、日本ではワーク・ライフ・バランスがとれていないし全く満足していないにもかかわらず、その実現のために改善を試みることもしていない現状にあるという。つまり不満を感じつつも、現状に我慢してしまっている人が多いのである。現状の働き方に満足していないものの、こんなものかとあきらめてアクションに移さない、というのではワーク・ライフ・バランス社会の実現は難しい。
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