キャリア形成推進マガジン
キャリアに関する研究者からの提言 【キャリア・ナウ】

2009年2月10日配信
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ワーク・ライフ・バランス
   第3回 「ワーク・ライフ・バランス社会の実現のために」
【2】
法政大学 キャリアデザイン学部 教授  武石 恵美子
 人が自分の仕事と生活のバランスを意識して、希望する「バランス」に近づくためには、仕事のオン・オフのメリハリをつけ、仕事をするときは仕事に集中し、仕事でないときにはリフレッシュする、ということが重要である。つまり、ワーク・ライフ・バランスのためには、仕事を効率的にこなそうとする個人の意識が不可欠で、それによって時間当たりの生産性が向上し、結果として企業はワーク・ライフ・バランスを推進することのメリットを享受することになる。

 とえば、フレックスタイム制を導入する企業は多いが、結局「遅く出社してもいい制度」となり、本来の「個人のワークスタイルの合わせて、能率が上がるときに集中して仕事をする」制度とは程遠い運用になってしまった例は多い。欧米ではフレックスタイム制度を導入すると、早く出社して早く帰る社員がいるのに、日本では、周囲の人が仕事をしていると帰りにくい雰囲気になってしまう。結局就業時間が後ろにずれていき、ダラダラと残業をしてしまうことになる。これでは、時間当たりの生産性は向上するはずもない。自分の生活の優先順位を決めることは、仕事の優先順位を決めることにもつながる。限られた時間の中で責任を果たすという意識を個人が持てば、無駄な仕事を見直し、必要な業務に集中して仕事をする効率的な職場になるはずである。

 時に、個人のワーク・ライフ・バランスを実現するためには、企業組織の対応が不可欠である。

 一に、ワーク・ライフ・バランスを実現するには多種多様な施策があり、どのような枠組みで制度設計をするのが効果的なのかという問題がある。従業員の中には、ある事情のために短時間で働くことを希望する人もいれば、フルタイムで働けることができても柔軟な時間設定を望む場合もある。時間よりも自宅で仕事をするという勤務場所にこだわる人もいる。こうした多様なニーズに組織が一つ一つ応えていくことには限界がある。効果的なワーク・ライフ・バランス施策は、組織の規模や従業員構成などの職場の属性、立地条件などの外部環境などによって異なる。したがって、個々の組織の労使が自主的に優先順位をつけながら制度設計を行う必要がある。そのためには労使の対話が欠かせない。

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